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62話 右腕の自我

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 健、キング、クイーンは三人で話し合いをしていた。

「やつは高位の魔族よ。七星という魔族の中でも天才中の天才が所属している魔王直近の戦士よ。」

「なるほど。じゃあ、魔族の中でもトップクラスということか。逆に言えば、あれくらいを基準とするやつらを倒せたのなら魔族を抑えることは可能ということか。」

「ま、まあ、そういうことにはなるわね。」

「勝算はあるのか?」

「いや、ない。」

「やっぱり、ないんだ.....。」

「まだないだけでこれから見つけるさ。」


ダッダッダッダッ


「おはよー」

 相斗がみんなの前を通過して外へ出ようとした。


「おい、待て。」

「何?」

 みんなは視線を右腕にやった。


「あぁ、腕のこと?それならもう大丈夫だよ。完璧にくっついてるから。」

 そう言って相斗は手をグーパーグーパーした。

「?!?!?!?!」


 キングとクイーンは驚いていた。

 しかし、健は特に何も無いかのような反応だった。

「なんで治っているのかしら?!」

「超回復とアイトの自然治癒力がとてつもなかったのか.....。」


「ちょっとこい。」

「え、なに?」

「ちょっと出かけてくる。」


 健はそう言って相斗を連れ王都を出た。


「どういうことだ?」

「多分だけどが関係していると思う。」

「あのSSSランクのスキルか。」

「うん。夜に変な夢を見たんだ。」


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「おい、小僧。起きぬか、小僧!!



やっと目を覚ましおったかい。最近、身体を酷使しすぎぞ。わしがいなかったらこの腕もしばらくは使いものにはならんだろうに。感謝せよ小僧。そして、早く血肉をよこさぬか。わしは腹がすいている。」



┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



「って僕の脳内に話しかけてきたんだ。そして、目が覚めたら腕の痛みもくっつけた時の不自然な感じもなくなって、前以上に馴染んでたんだよ腕が。」

「血肉をよこせってことは鬼腕ということか。」

「うん、多分ね。」

「じゃあ、少しばかり血肉をくらってみるか。」

「へ?」



 二人は王都から少し離れ森のようなところへと入った。


「ここはどこなの?」

「王都の外れの森だ。この前、傭兵にここは魔素によって身体が蝕まれている動物の魔物がいるから近づかない方がいいと言っていた場所だ。」

「じゃあ、なんで僕たちは近づいてるのさ!!」

「魔物は元の動物に戻ることはなく、なりふり構わずに暴れるため自然界を壊したりして、この世界的には悪いことなんだそうだ。だから、いくらか駆除をしても大丈夫だそうだ。」

「めっちゃ無視するじゃん僕のこと。」

「そんなことより前方にいるぞ。」

「そういえば、僕たちってこの世界で命を頂いてこなかったね。」

「まあ、ダンジョンでは消滅してしまったし、無闇矢鱈に生命を断つものでは無いからな。だが、魔物に関しては別なんだそうだ。しっかりやれよ。」

「わ、分かったよ。やってみる。」


ドンッ

 相斗は地面を蹴った。

 目の前にいたのはかなり獰猛な猪だった。間違いなく普通ではない雰囲気を醸し出していた。


「(やっとか、小僧。さっさと食わせろ。)」

「また、あんたか!誰なんだ!」


 脳内に昨日の老人のような声が再生された。そして、右腕が自分の意思とは関係なく動き始めた。

 右手は変形し、爪は鋭利なナイフのように尖っていた。


ザクッ


 その手で猪の魔物を刺し殺した。



「(美味い、美味い。久々の血は美味しいのぉ。)」


 右手で触れていた血は即座に消滅した。自分の右手がまるで取り込んだように思えた。


 健がすぐに追いかけてきた。


「それが、あのスキルか。」

「どうやら、そうらしい。さっきも僕に話しかけてきたよ。そして、勝手に僕の体を動かした。」

「自我があるスキルなのかそいつは。」

「まだよく分からない。だけど、右腕に触れた血や肉はどんどんと消えていった。そして、心無しか身体が回復していっている気がするんだ。」

「そうか。」
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