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6話 模擬戦
しおりを挟む「キューブさん、もしかしてこの国の人って好戦的な人が多いんですか?」
「いえ、そういう訳では無いんですが、いやそうかもしれませんね。」
司に模擬戦を申し込んできたのは坊主姿のムキムキの騎士団の副団長だった。
キューブは賢い団長で副団長のリキという男はいわゆる脳筋と言われる男だった。
「まあ、私の力を実際見てない方もいらっしゃるので少し見せましょうか。」
「いいんですか?」
「はい。師匠からの教えで"向かってくるものは叩きのめせ"と言われておりますので。」
「それはなんと、元気なお師匠様ですな。」
「はは。」
こうして昨日に引き続き、司は戦うことになった。
「本当に素手でいいんですか?」
「はい!素手でお願いします。」
騎士というのは剣を使い戦うものだが、リキは司に素手で勝負して欲しいと願い出た。
「では、そちらからいつでもどうぞ。」
「わかりました。」
司はなんの準備もなく、リキにかかってくるようにいった。
「なんで副団長は動かないんだ?」
見ていた騎士はそう言った。
リキは司と対峙して3分間、一切動くことが出来なかった。
「それはツカサ殿が格上だからだ。動いたらやられる、少しでも間合いを詰めたら倒されるとリキは本能的に察しているのだよ。」
「それほどまでですか、ツカサ殿は……。」
司の一言で硬直状態が終わった。
「来ないのですか?では、こちらから……。」
「参りました、私の負けです。」
なんと、リキは戦う前に司に降参をした。
「まあ、当然だろう。今のリキではどう足掻いても勝てまい。」
「あの方、本当に何者ですか団長……。」
「わからん。しかし、我々には考えが及ばないほどの鍛錬を積んだことだけはわかる。」
こうして武術指導は終わった。キューブの頼みで本来は週一で行う予定だったが、週三に増やしてくれと言われたので、司は二つ返事で了承した。
「いやはや、ツカサ殿。キューブから聞きましたぞ。初日でとてつもない成果をあげたそうで。」
「いえいえ、騎士の皆さんの飲み込みが早かっただけですから。」
「またまたご謙遜を。それで、実力を見込んでお話があるのですが……。」
アロマンド侯爵から頼まれたのは年に1度開催される貴族のお抱えの戦士を使った『武闘大会』の出場だった。
ここでは、自分たちが雇っている戦士を出場させ、自らの領地の戦力をアピールするというのが目的であり、弱い領地は吸収対象となってしまうのだそうだ。
「はぁ、別にいいですが、シドさんから聞いたかわかりませんが、私はこの世界の人間じゃないんですよ?」
「えぇ!そうなんですか!!」
司が別世界から来たと聞いてカロナは大きな声で驚いた。
「なるほど、そういう事でしたか。シド様からの紹介ということでしたから、そうではないかなと思っていたのでしたが。」
「はい、ですのであまり私が出るのは好ましくないかと。キューブさんの方が適任じゃなあですかね。」
「いえいえ、ツカサ殿にお願いしたいですね。お恥ずかしながら、私たちの領地は舐められがちでして、正直、侯爵家の面子というのは少し他よりも重いものでして……。」
アロマンド侯爵はかなり後ろめたそうな気持ちでこのことを司に話した。
「なるほど、わかりました。断る理由もないのでお受け致します。」
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