魔法適性ないんですけど1億年も修行したんで異世界でなんとかなりませんかね?

ss

文字の大きさ
上 下
1 / 7

1話 魔法適正なし

しおりを挟む



「ん?異世界で魔法を使いたいじゃと?無理じゃよ、魔法。」


 俺の名前は須藤すどう 龍騎りゅうき、ファンタジー大好きの高校生だ。

 異世界生活を夢にみる痛い学生だったが、それが現実となった。死ぬほど喜んだ、死ぬほど喜んだんだが、俺は異世界で魔法は使えないらしい…………。




「まあ、なんじゃ、そもそも地球で使えないものが異世界にいったら使える通りがあるわけないとは思わないか?」


 俺に現実を突きつけてくるこのジジイは神様だ。


「確かにそうなんですけど、なんか、他の異世界ものの主人公は使えるじゃないですか!」

「あれはフィクションじゃよ?何をマジにしているんじゃ?」

「そうですけど……。ってことはスキルとかもないんですか?」

「スキルはあるぞ。主が行く世界は第7世代の神が作った世界じゃ、「スキル」というシステムは組み込まれておる。」

「スキルって神様が作ったシステムなんですか?」

「あぁ、そうじゃよ。神も技術進化するからのぉ。ちなみわしは第2世代じゃ。今は世界を創るのはやめて、こうして異世界の案内をしておる。」


 
 どうやら、神にも色々な事情があるらしい。



「それで、異世界にいくにあたっての特典などないんじゃが、努力次第では最強になれるぞい。」

「特典もないんですか……。それで、努力次第ってのはどういうことですか?」

「修練所を用意するから、そこで研鑽を積めばよいのじゃ。環境はよいぞ、重量を変えて強度をいつでも変えられ、食事・睡眠も少なめでよくて、超回復で筋肉痛も10分で治るぞ!!」

「わかりました、そこでなんとかやってみます。」



 龍騎は既に疲れていたため二つ返事で修行の件を承諾した。




シュンッ


「そこが、主の修行場所じゃ。頭に思い浮かべると、環境や地形を変えることができる。充分に活用してくれ。」



 龍騎は真っ白い世界へと飛ばされた。



「なるほどね、じゃあ、まずは道場!!」



バッ


「うおっ、すげぇ!!」


 真っ白い世界から急に龍騎の思い描いた空手道場へも変化した。


「懐かしいなぁこの感じ。俺も中学までは空手やってたから、久々でやるきでるわぁ。」


龍騎は修行を続けた。


 そして、早くも5年の月日が流れた。



「99999……100000!!ふぅ、終わった。」


 龍騎は1日10万回の正拳突きと3時間の瞑想、5時間のストレッチをして、それが終わると食事を取り、寝るという生活を5年繰り返していた。



「おっ、「正拳突き」のスキルレベルがMAXになった!!」



 この世界では技を習得すると「スキル」として登録され、スキルを使用すると「習熟度」が上がり習熟度が上がると「スキルレベル」が上がる。

 スキルレベルが上がることによって、そのスキルの効力が高くなる。「正拳突き」だと威力や速度が上がる。



「とりあえずは正拳突きはやめて、次は蹴りかな。なんか、こういうコツコツやるの楽しいな。」


 
 龍騎は元々オタク気質なため、ステータスを上げることや地道な作業というのは嫌いではなかった。

 こうして、龍騎は空手の基礎知識を全てマスターした。

 そして、全てマスターするのに60年かかった。



「よし、スキル「空手マスター」のレベルがMAXになった。80年かかったのか。老けないし、身体も悪くならないから、そんなにかかったとは思えないな。」

「いやはや、龍騎よ。お主の努力は見張るものがあったぞ。だいたい、この修練所を解放しても5年経たずして異世界へ行くものばかりじゃ。」


 神様が80年振りに話しかけてきたのであった。


「あ、神様。話せたんですね、俺ら。」

「なんじゃ、お主以前と見違えて落ち着いておるの?」

「多分ですけど、スキル「瞑想」のレベルがMAXだからだと思います。あとは力がついたので心にも余裕が出来たのかと。」

「それに80年も生きておれば何か悟りもするはずじゃしな。」


 龍騎は80年間武に身を削っていたので心身共に強くなっていたのである。




「それで、主はどうするのじゃ?異世界へ行くのかのぉ?」

「いや、まだやってみます。次は人を傷つけないように「合気道」をやってみたいのですが、やり方がどうも分からないので独学でやってみようかと。」

「それなら、これをやるぞ。」


 そう言って神様がくれたのは「神様が教える武術図鑑」というものだった。

 地球に存在しないありとあらゆる武術なども記載されている全8万ページの超大作であった。


「これはまた、面白そうですね。」


 驚くどころか龍騎は好奇心を見せていた。




「では、やってみますね。」



 龍騎は早速取り掛かった。



 そして、100年の月日がたった。




「とりあえず、合気道はこんなもんかな。スキル「合気マスター」もレベルMAXになったし。」





 そして、また100年がたった。



「うん、「柔術マスター」レベルMAX!!次!!」













 こうして、1万年の月日がたった。




「ふぅ、とりあえずは地球に存在する武術はマスターしたぞ。それでもまだこの図鑑の20%くらいか。でも、身体操作は他の武術にも応用できたから、効率は良くなってる。このまま、読破するぞ!」







 更に10万年の月日がたった。





「終わった。全て終わった。あぁ、悲しいな。達成感とともに生きがいを失ってしまった気がする。」



 全てを読破し、全ての武術をマスターした龍騎は燃え尽き症候群になっていた。


 そんな時、神様が声をかけてきた。



「主、ここまでやるとは驚きじゃぞ。とんだじゃな。それで、やり切ってしまいモチベーションが下がってる頃じゃと思ってな。武術はいつでもが大事じゃぞ。お主の体と心の強さと知識と経験を使い、自らの技を作るのじゃ。」

「なるほど!!確かに、今の俺ならできるかもしれません。ありがとうございます、師匠!!」

「いや、わしはただの神じゃ。」




こうして、龍騎は納得するまで自らに鞭をうち、自分の武術を作り上げた。



 そこまでに約1億年がかかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話7話。

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした

高鉢 健太
ファンタジー
 ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。  ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。  もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。  とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜
ファンタジー
13人の神がいる異世界《アタラクシア》にこの世界を治癒する為の魔術、異界人召喚によって呼ばれた主人公 じゃ、この世界を治せばいいの?そうじゃない、この魔法そのものが治療なので後は好きに生きていって下さい …この世界でも生きていける術は用意している 責任はとります、《アタラクシア》に来てくれてありがとう という訳で異世界暮らし始めちゃいます? ※誤字 脱字 矛盾 作者承知の上です 寛容な心で読んで頂けると幸いです ※表紙イラストはAIイラスト自動作成で作っています

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...