悪役令嬢になった3時間後に断罪イベントってありですか

ss

文字の大きさ
上 下
3 / 5

処刑の回避作戦

しおりを挟む


 檻の中に入れられ、2週間ほどが経った。私は何不自由のない生活をしていた。
 変わったことといえば、私の父が私を出すように抗議していることと、ギルサンダーに私が地球から来たことと、この状態がゲームの世界であるということを打ち明けたことだ。



「はぁ、それなら納得です。シーナ嬢は地球っていう世界の日本っていう国の人で、その日本で流行っていた娯楽の中の物語が俺たちがいる世界ってことですか……。でも、なんかそれじゃあまるでシーナ嬢は神の1人みたいな感じですね。」

 ギルサンダーは笑いながら言ったが、あながち間違ってはいない解釈だろう。

「確かにそうかもね。でも、もう私が知っている物語では無いわ。こうして、あなたと会えたのだもの。」

 美月はギルサンダーに笑顔でそう言った。

「そ、それで、その悪禁?でしたっけ?その物語ではシーナ嬢はまたリサ嬢に嫌がらせをして、首を飛ばされるわけですけど、今のシーナ嬢はそんな気はないんで、もう安全なんじゃないですか?」

 

 
 ギルサンダーの言う通り、私がヒロインに嫌がらせをするシーナ=イライザではなくなり、処刑イベントには行かないことは確定したが……あの性悪王子のジークのことだから……。


 

「確かにその場合の処刑はないと思うわ。けれど、ジーク=ジルベールという男をギルサンダーは知らないのよ。あの男は一度決めたことは必ず実行する男よ。その結果、身分の高い私ですら、こうやって投獄しているじゃない。」

「確かに、伯爵家が公爵家の令嬢を牢に入れるなんてどうかしてますよね。」

 ギルサンダーは他人事のように笑いながら言った。



「そこで、ギルに手伝って欲しいことがあるのだけれど、手伝ってくれるわよね?」

「はいはい、公爵令嬢様。ここまで秘密を知ったんですから、手伝わなきゃ殺されそうですもんね。」


 私がギルサンダーに手伝いをお願いしたのは彼の性格に惹かれたからである。彼は本当に自由を求め、自分の面白いと思ったものには本気で取り組む姿勢をもっている。ここ2週間でそれがわかったから、私が転生したことも打ち明け、頼っているのだと思う。


「とりあえず、私はあと少しだけ牢の中にいることにするわ。私が出たら恐らく、状況確認などのため、ジルベール家とイライザ家で話し合いが行われるわ。そこで、私は勝負を仕掛ける。」

「そのための作戦を一緒に考えろってことですね。」

「そうよ。それと、あなたの権限で見張りを変わってくれないかしら?」

「なるほど、私以外の騎士も手中におさめようって腹ですね。」

「まあね。」

「それは面白そうです。」



 こうして、私は「ジークからの処刑回避大作戦」を練り上げた。




┈┈┈┈┈2週間後┈┈┈┈┈



「シーナ嬢、これ以上は無理ですよ。あなたのお父様のケルベルト殿が早く娘を出せといって、もうカンカンですよ。」

「確かに私の父は『かなりの過保護な親バカ』だからね。故にこの子も性格が曲がって育っちゃったんだろうね。」

「とりあえず、あと2、3日しかありません。」

「いや、もう大丈夫よ。あなたの部下も何人かはこちら側になってくれそうだし、そろそろこちらから仕掛けますか!!」



 こうして、私はその日牢をでた。




「おお!!シーナよ!何かこいつらに変なことはされなかったか?拷問なんかされなかったか?私の大切なシーナに指一本でも触れようとする馬鹿者がいたのなら、必ず言うのだぞ!そいつらを全員処刑してやる。」

 あぁ、物語通りの親バカだわ、私の父さんは。

「いや、みんな優しくしてくれたわ。それより、私がした事の重大さを反省して、これからは心を入れ替えて頑張ろうと思うの!」

「おぉ、なんて優しい子だ。私の娘は伯爵の三男程度のために反省もできるのか!!私の娘は最高だ。」 

 これは、想像以上ね。

「それより、これからジルベール家と話し合いをするのでしょう?」

「あぁ、そうだ。3日後に奴らとこの事の始末をどうつけるか話し合う。シーナ、悪いがお前もそこに出席してもらうことななってる。」

「大丈夫よ、任せて!!」

「さすがだ、我が娘!!!!!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

禁断

wawabubu
恋愛
妹ののり子が悪いのだ。ああ、ぼくはなんてことを。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

乙女ゲームの愛されヒロインに転生したら、ノーマルエンド後はゲームになかった隣国の英雄と過ごす溺愛新婚生活

シェルビビ
恋愛
 ――そんな、私がヒロインのはずでしょう!こんな事ってありえない。  攻略キャラクターが悪役令嬢とハッピーエンドになった世界に転生してしまったラウラ。断罪回避のため、聖女の力も神獣も根こそぎ奪われてしまった。記憶を思い出すのが遅すぎて、もう何も出来ることがない。  前世は貧乏だったこら今世は侯爵令嬢として静かに暮らそうと諦めたが、ゲームでは有り得なかった魔族の侵略が始まってしまう。隣国と同盟を結ぶために、英雄アージェスの花嫁として嫁ぐことが強制決定してしまった。  英雄アージェスは平民上がりの伯爵で、性格は気性が荒く冷血だともっぱらの噂だった。  冷遇される日々を過ごすのかと思っていたら、待遇が思った以上によく肩透かしを食らう。持ち前の明るい前向きな性格とポジティブ思考で楽しく毎日を過ごすラウラ。  アージェスはラウラに惚れていて、大型わんこのように懐いている。  一方その頃、ヒロインに成り替わった悪役令嬢は……。  乙女ゲームが悪役令嬢に攻略後のヒロインは一体どうなってしまうのか。  ヒロインの立場を奪われたけれど幸せなラウラと少し執着が強いアージェスの物語

悪役令嬢は追いかけられて囚われる。

入海月子
恋愛
侯爵令嬢のセフィリアは、濡衣で王太子から婚約破棄を命じられる。失意のうちに座り込んでいると、近衛騎士のラギリスが追いかけてきた。今までなんの接点もなかったのに、熱い瞳で見つめられて……。

結婚前夜の妹を寝取る王子

岡暁舟
恋愛
タイトル通りです。

悪役令嬢はオッサンフェチ。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
 侯爵令嬢であるクラリッサは、よく読んでいた小説で悪役令嬢であった前世を突然思い出す。  何故自分がクラリッサになったかどうかは今はどうでも良い。  ただ婚約者であるキース王子は、いわゆる細身の優男系美男子であり、万人受けするかも知れないが正直自分の好みではない。  ヒロイン的立場である伯爵令嬢アンナリリーが王子と結ばれるため、私がいじめて婚約破棄されるのは全く問題もないのだが、意地悪するのも気分が悪いし、家から追い出されるのは困るのだ。  だって私が好きなのは執事のヒューバートなのだから。  それならさっさと婚約破棄して貰おう、どうせ二人が結ばれるなら、揉め事もなく王子がバカを晒すこともなく、早い方が良いものね。私はヒューバートを落とすことに全力を尽くせるし。  ……というところから始まるラブコメです。  悪役令嬢といいつつも小説の設定だけで、計算高いですが悪さもしませんしざまあもありません。単にオッサン好きな令嬢が、防御力高めなマッチョ系執事を落とすためにあれこれ頑張るというシンプルなお話です。

悪役令嬢(濡れ衣)は怒ったお兄ちゃんが一番怖い

下菊みこと
恋愛
お兄ちゃん大暴走。 小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...