テンプレを無視する異世界生活

ss

文字の大きさ
上 下
1,099 / 1,116
サンデウロ大陸編

1066話 サコン

しおりを挟む


「だから、身元は俺が証明するといってるだろう。」

「ですから、身分を証明できる物品がなければお通しすることは禁じられているんです。」

「いや、いいんです。こうなることはわかってました。私は外で待ってます。」

「それはダメだ。」


「これは、ガロンド初代国王様。どうされました?」

「あんたは奴隷商人の。」

「いや、大したことではない。」

「察するにこの方が何らかの理由で身分を証明できず、ここへと出入りが叶わないんですね。」

「あぁ。」

「門番よ。私を誰か知っているか。」

「も、もちろんですとも。あなたは随一の名奴隷商人のサコン様ですよね。」

「その通りです。私は奴隷商人のサコンです。」

「その私の大切な方々に身分を確認し、そして、あろうことか追っ払おうとしたのは誰ですか?」


 門番の顔は完全に青ざめていた。

 この奴隷商人はかなりの権力を持っているとみた。


「いえ、これは、知らなかったんです。」

「知らなかった?この世の中は知らなかったで許されることがあるのですか?」

「人を殺しても、物を盗んでも、ましてや他国の初代国王様を門前払いすることも「知らなかった」と一言言えば許されると思っているのか!!!」

「あ、あぁ、あぁ..........」

 門番は腰を抜かして言葉を交わすことが出来ないほど怯えていた。


「さて、初代国王様。この男をどうしてくれましょう?」

「どうもしない。ここを通してさえしてくれれば、これ以上は望まない。」

「だそうだ、愚かな門番よ!」

「ガロンド初代国王様はいかに寛大か知ったか!本来であれば、貴様の家族の首が飛んでもおかしくないほどの不敬罪。それをお咎めなしで許してくれるとおっしゃっているんだ!」

「そんな仏のような国王様に貴様は何をした!恥をしれ!!」


 サコンのこの気迫に門番はなす術はなかった。


 門番は翔らに深々と土下座をした。

 彼らは二度と翔らに歯向かうことはないだろう。


「いや、奴隷商人よ。助かった。」

「いえいえ、とんでもございません。こんなことで良ければいくらでもさせていただきます。」

「私たちとしましては、今は国交問題に発展させられるほどの武力はないんです。」

「私はこの国が好きでこの街が好きで、この幸せが好きなのです。ですから、これを失わないように全力を尽くすのが当然です。」


 奴隷商人は案外悪い奴ではなさそうだ。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

流刑地公爵妻の魔法改革~ハズレ光属性だけど前世知識でお役立ち~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,817pt お気に入り:4,282

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:9,366pt お気に入り:2,405

異種族キャンプで全力スローライフを執行する……予定!

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:2,513pt お気に入り:4,742

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:6,085pt お気に入り:1,632

異世界で新生活〜スローライフ?は精霊と本当は優しいエルフと共に〜

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:1,363pt お気に入り:1,124

処理中です...