テンプレを無視する異世界生活

神編

1000話 複眼

「やはり貴様は生かしてはおけないな。時期に私に牙すら届くかもしれないからな。若い芽は摘んでおこう。」

「やっぱり、使わなきゃいけないか。」

「なんか言ったか。」

「さすがに二皇が相手だからな。武器を使ってやると言ったんだよ。」

「ほぉ、私を見てまだそんなことを言えるとはな。勇敢と愚かを履き違えると寿命は長くはないぞ。」

「余裕と慢心を履き違えると寝首をかかれることも忘れるな。」

「言うじゃないか。」


 互いにただ口で牽制し合っているように見えるが、互いにここぞという隙をうかがっているのだ。


「(隙の少ないいい構えだ。相手が私でなければ、懐にすら入られないだろう。)」

「(相手がどんな虫を出すかはまだわからない。全ての虫に対応出来るようにしておかないとな。)」


 場は膠着状態だ。


 先に動いたのはアイントだった。

 いや、ほぼ同時に動いたのだった。



ブゥーン

バンッ


 互いの足元で何かが起こった。


 互いに後ろへ避けた。


「考えは同じというわけか。いや、癪には触るが考えを読まれていたと言った方が正しいな。」

「そういうお前も足元に"爆発蝉ばくはつぜみ"を仕掛けるなんて大胆だな。」


 爆発蝉･･･危険度SS。七年間もの時間を土の中で過ごし、蝉として地上へ出ると同時に爆発し死んでしまう虫。何故、地上に出た瞬間に爆発するかはまだ未解明であり、この爆発によって年間で100人ほどの死者が出ている。


 翔は読んでいた。アイントが足元へ何かを向かわせていたことを。


 それに気づいた翔は接地している足から魔法で電流を送り、地中にいる爆発蝉の羽化のタイミングを図っていたのだ。



「なるほど、聡明で強いな。認めようではないか。」

「その強さに敬意を評して、少しばかり本気を見せてやろう。」

「これを使うのは200年ぶりくらいか。」


"蟲眼"


 アイントの目が蜻蛉 トンボのような複眼になった。


「私には全てが見える。貴様の動きも、貴様の背中も全てだ。」