テンプレを無視する異世界生活

神編

996話 スパン

ヒュン


「おい、今なにかが横切らなかったか？」

「どうした？そんな驚いた顔して？」

「あ、あわ.....く、く.....」

ボトッ


「お、お前、首が.....首が落ちてるぞ。」

「確かに視線が地面と同じくらいだな。」

「なんでお前平然と喋れているんだよ！」

「なんでだ.....ろ.....う.....n.....」



「俺が速すぎて首が切られたことにも気づかなかったんだろうよ。」

「ひぃ！お前は誰d.....」


スパッ


ボトッ


「遅せぇよ。お前はそいつより前から死んでたぜ。」

「おい、スパン。遊ぶな。」

「すみません、ジルコさん。」

「こっからは二手に別れるぞ。俺は南西、お前は北東だ。」

「わかりました。」

「無理はするなよ。俺らの仕事はより多くを殲滅することであり、命をかけることではない。」

「わかってますよ。」


 このスパンという男は今回の"光"が傭兵になっての初めての戦闘だった。

 入団して間もない彼だが、戦闘センスと速さは班員の中でも特に優れていた。

 ジルコもその才能を感じ取り、一緒の最前線で闘わせている。

 スパンは闇属性魔法を得意とし、特に"造形"といって、闇から武具などの形を作って、それを用いるという戦闘方法だ。

 それなら、武具を身につけていけばいいと思うだろうが、こと今回の作戦に関しては一秒でも早く移動したいため、道具を持たないスパンにはとても向いているものなのだ。



ヒュン


スパッ


「やっぱり、こいつの切れ味は抜群だな。」


 スパンが持っているのは風斬という飛び道具だ。

 刃は五つあり、返しがついており、一度刺さると抜けることはそうそうない。

 刃には毒が塗られており、刺さると普通の人間ならば数秒で死に至るものだ。

 スパンの凄いところはその毒までも再現しきれることである。普通ならば、毒が塗られていない状態でしか、造形することが出来ないが、スパンは全てを再現する。

 もちろん、"創造"には遠く及ばないが、下位互換といっても差し支えないほどの力ではある。