俺がキーなわけがない!?

クルクル

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01 何気ない平凡な朝

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 朝―――
 何の代わり映えもしない部屋の中、アラームがけたたましく鳴り響く。
 せっかくの安眠を邪魔された左城宮恢さしろみやひろは不機嫌さ全開で目覚まし時計を叩いて―――

「・・・・・・・・・はぁ~」

 ―――深い溜息を吐いた。恢の目線の先にはカレンダー、今日の日付を見れば月曜日。
 一週間の初め。それが意味する事はただ一つ。

「学校、休みてーなぁ」

 週六の学校生活の始まり、である。
 ある程度の人――主に学生やサラリーマン――は、共感出来るのではなかろうか。
 週明けに感じるこの憂鬱さを。
 恢だって出来ることなら休みたい。しかし払った授業料が勿体ないので休めない。
 恢の場合、自分で授業料を払っているから尚更だ。
 そもそも恢が高校ヘ進学した理由は『高卒』という学歴が欲しかったからであって、授業や卒業後の進路にはほとんど興味がないが。
 そういうわけで部活だとか、進学だとか、そんなものはどうでも良かったのである。
 つまるところ、意欲があるわけではないが休むのは論外なので行くしかない。それが恢の実情だった。

「・・・・・・何でわざわざ高い学費払っちゃったかな~。別にここじゃなくても良かったのに」

 通信制にしとけば良かった、と愚痴を吐きつつ、それでもてきぱきと支度をする。

「ありゃ、今日は弁当無しか。まぁ良いや」

 身支度を終え、朝食を摂ろうとリビングに来たが、テーブルの上にはサンドイッチの皿しか見当たらない。
 いつもは一緒に弁当も置いてあるのだが、今日は作る時間が無かったようだ。
 
 ―――そういえば最近あいつ見てないな。

 いつも朝食を含めた家事全般をこなしてくれている同居人の姿を、ここ数日全く見かけていないことに気がついたが、よくあることなのでサラッと流す。
 同居しているにも関わらず、互いの時間が合わないことにはちょっとした事情があるのだが、大したものではないので割愛。
 恢は脳裏に思い浮かべもしなかった。

「いただきます。んでもってごちそうさま」

 サンドイッチを一度咥え、恢は片手間で食器を洗って片付ける。その手並みは淀みなく、普段からこなれているのは一目瞭然。
 朝食を片付けた恢は、一息吐いて手を翳した。

「っし、【開けゴマ】」

 一言恢が呟いた瞬間、光が迸り
 【異能フラワー】―――極一部の人間が顕現させることができ、それでいて既存の技術のみでは再現不可能な、何かしらの特殊なチカラのことだ。
 再現不可能の特殊能力といっても、能力の強度や系統は個人によって異なり、危険指定の規格外から子ども騙し程度のショボいものまで、それこそピンからキリまである。
 ただ似たようなチカラはあれども全く同じチカラは一つたりとも存在せず、能力が発現するメカニズムもほとんど解明されていない。
 解明しようと様々な研究機関が躍起やっきになっているが、被検者サンプルの同意が得られず研究が進まないのが現状だ。
 下手したらどころか、署名したが最後一生モルモットとして扱われるような所に、誰が進んで行きたがるのか。いくら金を積まれても頷く人などいるわけがない。

「・・・【覚醒者フラワリンガー】か」

 そして、恢もその『一部の人間』、【覚醒者フラワリンガー】と呼ばれる者の一人であり、恢は【カギで自在に開閉する権能】を持っている。
 余談だが、【異能フラワー】には名前がつけられる。が、ダサかったり痛々しいものだったりで、その名前を好き好んで口に出す奴はまずいない。いたらそいつは可愛そうなものを見る目を向けられること請け合いだ。
 もっとも、個人を判断する上で重要な情報として扱われるため、どこにでもついて回る以上は馴れるしかないのだが。

 ―――・・・いやぁいらねーだろ、名前。

 当然恢は名前全否定派だ。当たり前だ。誰がつけているのかは知らないが、センスが欠片もないのだから。例えば火炎系統のチカラで、【発火パイロキネシス】ならまだマシな方だ。酷いモノには【無限炎獄インフィニティプロミネンス】なんてものまである。
 これで威力が同じだったら名前負けも良いところ。【無限炎獄インフィニティプロミネンス(笑)】である。
 もはや目も当てられない。
 せめて自分でつけさせろ、とはこの惨状を知った恢の談。自分で名付けてコレなら、センスが絶望的、というだけの話なのだから。

 閑話休題。
 とにかく、こんな【異能フラワー】のおかげで、恢は移動に時間がかからない。流石に皆勤とはいかないまでも遅刻早退はゼロ。出席率だけはかなり高い。
 ・・・・・・成績は中の下、平均よりも少し低い。決してやる気がないわけではないのだ。ただ滅多に起きないというだけで。

「いってきま~す」

 うだうだ言っていたが、それでもなんやかんやでちゃんと学校へ通じる『扉』をくぐる恢。
 やはり気乗りしないだけで、やると決めたらやる真面目な恢なのであった。
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