少年調教師・笠井邦彦

あいだ啓壱(渡辺河童)

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~淫らなゲームは終わらない・03~*

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 調教師は、紹介の紹介などで仕事は絶えずやってくる。

普通の女性では満足できなくなった金と地位を持った男が、少年や青年を買っては笠井に調教を頼むという流れだ。それだけ、歪んでしまった愛がこの世界に多くなったのかもしれない。

しかし、交渉時の愛撫も途中で制され、どんな愛撫テクニックでも落とせないハズの笠井が、野島に乳首や肉茎を嬲らせていると聞けば、いつかは誰かに同じようにされてしまうかもしれない。

しかし、野島はグループ会社のオーナーであるから、自身がやっている行為が他言できないことなど百も承知だろう。笠井は野島の身分も考えたうえで「大人のルール」の中で、野島にだけ特別に「後処理」を任せるようになっていた。



調教は1週間足らずだが、この間、笠井は少年たちが性的に感じる様をずっと見ることになる。しかも、硬くなった少年のまだ幼さが残る陰茎を揉みしだいたり、摩ったり、乳首や体中を愛撫してやったりしなければならない。すぐに出せないよう射精管理さえする行為だ。もちろん笠井とて、調教とはいえ・・イきたいのにイけない様の少年たちを見るとき、興奮しない訳ではなかった。

一度調教が始まれば、笠井は自身の肉茎がどんなに滾っても我慢することにしている。そうしないと、笠井が果ててしまったら少年を調教する気が失せてしまう時間がどうしても生まれてしまうからだ。

調教師としては敬意を払いたいほどの自制心を持ち、少年を命じられたレベルに感度などを引上げる様は、他の調教師には真似できないほどの手腕である。

調教される少年たちは、とても若く、すぐに男性を受け入れることはとても難しい。もちろん、今まで自分でも触れなかった場所に、触れられたり、入れられたりする事でいきなり感じる様にはなっていない。

そこで、笠井が発注された少年たちに調教を施し、女性のように性的に感じたり、挿入されても痛みがないようにするのがお約束だ。

もちろんそれには程度があって、段階としてレベル5まで存在する。

1、乳首と後孔調教。
乳首を感じる性器に変え、後孔も性器として変化させる。

2、乳首と後孔、陰茎調教。
1に加え、挿入されても陰茎は萎えず逆にそそり立つ程度にする。

3、乳首と後孔、陰茎調教だが、2に加えて自ら誘うレベルにする。

4、3に尿道調教が含まれ、乳首だけでもイケるようにする。ようするに、かなりのマニア向けだが笠井の客の需要はとても高い。

5、全てを可能にし、客が取れるレベルまでマナーも仕込む。

今回の調教レベルは2~3だと野島は言った。報酬はレベル1で500万円。レベル2からは1,000万円が基本価格だ。レベル5は少年の育ってきた環境に寄りけりだが3,000万円からとなっている。そして、笠井にとってレベル2~3程度は、ほんの一週間足らずで完了できる。

ここに更に今、1,000万円を足させるかどうかが、笠井の身体を使ったこの淫靡な疑似恋愛ゲームであり、野島だけは「後処理」を頼むまでのポテンシャルを保つ為の大事な儀式でもあった。




野島は、笠井の上気した頬を見定めると、素早くジャケットのボタンを外し、シャツ越しの両乳首をテンポよく優しく摘んではコリコリと愛撫し続け、笠井も少し甘い吐息を漏らす。

「は……ぁ……、その調子で……今回の子……も、……ご自分で調教なされ、ば宜しいの、に……」

野島は言ってしまえば男色であり好色家である。

獲物をどこかで捕らえてきては笠井に調教を託すが、その前に必ず「調教に出さなければいけないレベルであるかどうか」を見定める為に何度も何度も繰り返し、毎日のように獲物の身体に愛撫を続ける。もちろんそこで開花してしまう少年もいるが、野島はそれではつまらない。野島に開花させられた少年の行く末は聞いても答えない。

つまり、そんな野島のテクニックは逆に素晴らしいものがあるのだ。以前、半分だけ野島に開花された少年を預かった際にそれが笠井にも分かり、大きく評価していた。



「あ……っ、……ん…………」

繰り返される野島からの容赦ない乳首への愛撫に、笠井は甘く切なげな声を洩らす。指先から伝わる刺激が肉茎にダイレクトに伝わっていく。先端からは蜜が溢れだし、塞き止められていない精液がどんどん睾丸内で量産され、肉茎に触れられるのを待ってしまっている。

笠井は再度大きく深呼吸をした。この瞬間……忘れてはいけない「交渉ゲーム」の中なのだ。野島が相手だと流されてしまいすぎる自身に気付きながらも、今はいくら相手が野島でも交渉しなければならない・・と思い返す。

しかし……、調教後の「後処理」を野島にしてもらうようになってから、笠井は野島の愛撫を受けると自身の中心がすぐにヒクヒクと物欲しそうに透明な蜜を零すようになってしまっている。調教前に受けるこの愛撫は、笠井にとって性欲を昂ぶらせる行為でもある。

調教師は性欲が大きいほどいいが、それを制する自制心も大きくなくてはならないのだ。それがグラつくなど、笠井にとっては問題外の状態である。しかし、中心から零れる蜜は止まらず、笠井の腰は少し揺れている。

笠井はこの「後処理」に関して少し後悔していた。自制心が思い通りにいかなくなった事で野島にだけ交渉時さえきちんと言葉を発せなくなっている今の状況を悔いているのだ。ずっと続けている事前交渉術の中で、流されてしまう自分を許せなかった。しかし、この交渉術が仕事に入る前に性欲を昂ぶらせる入口であり、発注者の愛撫を記憶する場である以上、やめられはしなかった。



一方野島は、自分が笠井にとって特別な立場にいる事は充分分かっており、後処理を楽しむための始まりであることも充分理解しながら愛撫を続けた。そう理解しているからこそ、優しく、時には強く、笠井の乳首を愛撫する。野島はたったそれだけで大きく反り返る笠井の中心に、あえて手を触れないようにしている。笠井は調教後とても昂ぶり自分の元に来る。それをじっくり待てばいいのだ。

野島にとっては、今の行為は前戯の前のフレンチキス程度だ。笠井が昂ぶって戻ってきて、1度出させてやってからの時間が最高の楽しみなのだ。1度出してやると笠井の自制心はブレーキがきかない。そこから時間をかけて乳首と肉茎を愛撫し、ベルトで締めた根元から精液が行き場を失って睾丸に溜まっていく様子が好きだ。肉茎の先端から溢れ出す蜜の多さも気に入っている。イク事ができないままトロトロになった顔や潤んで濡れた瞳や睫の先を見る事が、野島にとって最高の喜びだ。

笠井は気づいていないようだが、調教後の笠井は色香が増しており瞳も潤んでいる。他の客がどうして気付かないのか不思議な位であるが、普段愛撫を制される者にとっては、少年の調教が終わった段階で少年の方に目が行ってしまうのであろう。

以前野島は、笠井が調教後に色香が増すことに気付き、調教中に少年にどんな事をしているのかが気になって出張調教にこっそりカメラをいくつも仕掛けた。仰向きでベッドに固定され動けない少年の手足は大きく開かれ、手足には柔らかいファーで覆われた拘束具が取り付けられ、鎖が繋がっていた。もちろんその部屋は野島が用意した物なのだが、カメラ越しに見る風景はそれを忘れさせた。

少年の反り立つ陰茎を笠井が愛撫している。少年の陰茎は根元をベルトで締め上げられ、射精ができないようになっているらしい。リアルタイムで見る調教は初めてだっただけに野島は興奮でわなわなと手足が震えるほどだった。いくつか仕掛けたカメラで少年の陰茎をアップにして見ると、笠井の唾液で光る少年のソコはとても淫靡なものに見えた。

少年が喘ぐ声とジュルジュルと響く唾液の音が野島の中心を刺激し、野島はカメラ越しに年甲斐もなく自慰をした。暫く余韻にふけりながら見ていると、意図せず少年が眠ってしまった後、笠井がシャワーを浴びる為に服を脱いでるところもカメラは映しだした。慌ててカメラ位置を切り替え、笠井の身体がよく見えるようにすると、そこに映っていたのは・・淡い白い肌が上気しピンと立ち上がるやや赤みを帯びた乳首、平均より大きく長い反り返った肉茎。しかも、その根元は少年と同じようにベルトできつく締められていた……。

野島はビックリしたが、その光景に再び中心が熱くなった。シャワーを浴びる前、笠井は自身の乳首の固さを確かめるように何度か指先で触り、少し震えているようだった。そして、大きくなった肉茎を何度かなだめるかのように撫でるとベルトを解き、大きく深呼吸をしてからシャワー室に消えて行った。野島の理性はそれを見てはじけ飛び、今さっき自慰をしたことも忘れたかのように反応し再度果てた。

その後、調教が終わって色香が増した笠井に「調教中に自慰はするのか」と野島は問い、笠井は自身がターゲットになった事にも気付かず「いいえ」と答えてしまった。調教中、笠井がずっと性欲を我慢している事に気付いてしまった野島は、何度も笠井に出張調教を頼んではそれをカメラに納め、録画して楽しんでいたのだ。

そう、……逆調教は、野島が計画的に行った事だった。

もちろん、野島は笠井の支配欲や征服感が彼の性癖であることも分かっていた。だからこそ後孔には触れず、奉仕するような愛撫で笠井を侵食していった。それが、今の結果だ。笠井は自身ではまだまだ平静を装っていると思っているだろうが、明らかに前よりもほんの少しだけの愛撫だけで反応するようになっている。

笠井は野島に翻弄されまいと、大きく深呼吸をしながら言う。

「野島さん……、私に調……教が必要なのか、見定めてい……るのですか……?」

野島は不敵な笑みを浮かべ、乳首を指でコリコリと責め立てる。少し弾いたり、ギュッと少し痛いくらいに摘んだり・・かと思えば、指先が少し触れるだけの状態で優しく先端だけをくるくると円を描くように優しく何度も撫でたりした。

「……あ、……ん…………」

胸の先端から流れ続ける刺激は、笠井の身体を駆け巡り肉茎をもっと熱くする。

野島が耳元で囁いた。

「笠井……、君の感度はとても素晴らしい。そして君自身が、たったこの程度の愛撫ですぐに前を大きくさせる事に私は感動し、興奮するのだよ。若者のココは素晴らしい。今も……君の前の膨らみはズボン越しでもその形さえハッキリしているのが僕に見えているよ……とても大きくなっているのが自分でも分かるかい?」

笠井は羞恥で顔をそむけたが、野島は両乳首を摘んでコリコリと捻りながら続ける。

「……私はね……調教の長い時間、少年がどれだけ前を大きくして先端からいやらしい蜜を零しているのか考えると……脳の奥が痺れる程なんだ……その蜜を全部舐めとって飲んであげたいくらいだ……」

この時の「少年」は野島にとっては笠井を指しているが、野島はわざと「少年」と言った。笠井はソレには気付かず、これから調教する少年の陰茎から蜜が零れているところを想像してしまい、自身の肉茎を更に昂ぶらせた。これが、笠井の性癖の神髄だ。調教師でありながら、自身がされたいと思う欲求を少年たちに与えるのだ。

ようするに、笠井は性的に不器用で、歪んでしまっている。普通の人間にとってみれば、自身に直接的な快感を与えられる方が好きだろう。しかし、笠井は発注者に自身の性欲を高めさせ、それを少年に反映することで快感を得る。発注者の視点になり愛撫を再現し、少年が笠井の手によって開花され歓びの声をあげることは、疑似体験とも言えるだろう。

しかも、笠井は何よりも「調教師」という立場だ。発注者より先に少年の開花を見られる立場におり、存分に少年を調教してじっくりと堪能できる。所詮、発注者は調教した笠井の2番手となることしかできない。それが何よりも笠井の支配欲を煽り、調教師としての存在を確立させている原因だ。

野島は更に言葉を紡ぎ続ける。

「とてもいやらしくそそられる君の声も、私はとても気に入っている。どんなに調教を頼んだ子でも、ここまでの感度で私に応じる肉体は少ないからね」

野島はそう言っている間も手を休めない。一層いやらしい手つきで乳首を摘み、少し強く指の腹で押し潰すように乳首をこねる。笠井の乳首は布で擦られ、シャツ越しでも乳首がツンと固くなっているのが見て取れる。顔は上気し、淡い白い肌はピンク色に染まり、耳まで赤くなっている。

スーツのズボン越しでも分かる硬く反り立っている笠井の肉茎は、疼き、透明な蜜を先端から溢れ出させ、小さなシミをズボンに滲ませる。

「あ……っ……」

乳首をグリグリと急に強く愛撫され、笠井は思わず声をあげた。

もちろん野島はその反応を見てとると、シャツのボタンを器用に右手だけではずし始めた。その間も空いた野島の左手が休むことはなく、乳首への愛撫は続く。

「あ…………、ぁ……んっ……」

部屋には笠井の甘い声が響く。

シャツのボタンは全て外された。シャツ越しに愛撫されていた小さな2つの突起は布越しにたくさん擦られたせいかいつもより赤みを帯び、一層固くなって自己主張し震えている。

野島はその突起の右の膨らみに唇を寄せ、軽くキスをした。

「あ……っ、……だめ…………っ」

笠井の声がもっと甘美な声に変わったのを聞き遂げると、野島は素早く右乳首を口に含み、舌で優しく愛撫し始めた。布越しだった刺激がぬめった熱い舌に変わり、吸われた乳首の先をチロチロと舐められるだけで全身に刺激が電気のように広がっていく。肉茎の先端はその刺激によって蜜をもっと溢れさせた。その間も、左乳首は直接肌に触れた指先で摘まれ、揉みほぐすような愛撫が続いていた。

「……んっ……、あぁ…………っ……」

野島は笠井のズボンに滲み出るシミが少し大きくなったのを確認しながら、今度は左の突起を舌で愛撫し始めた。野島の舌は熱を帯び、ぬめった生き物のようだった。何度も何度も執拗に両乳首を吸われ、熱い舌で先端を嬲られた。笠井は蕩けそうなその舌先で肉茎を嬲ってほしいという感情が湧いては消え、その度に自制心を揮わせる。その度に、これでもかというように野島の唇がチュパチュパと音を立てて乳首を吸い、感度の良い先端に優しく舌をくねらせた。

「あ……っ、……野島さ……ん……っ、いやっ……」

笠井はフルフルと力なげに頭を振っていた。

部屋には唾液から生み出されるいやらしい音が響き、その音が笠井の肉茎をもっと熱くした。これから調教に向かうのに、まるで仕事が終わったあとの処理をされているような錯覚に陥りそうなほど、ひどく興奮してしまっている。他の客でも同じように笠井はじっくりと愛撫を受けるが、肉茎はここまで熱くならない。笠井は飛びそうになる自制心と戦うしかなかった。

野島は、その様子をとても楽しそうに見ていた。絶対にこの段階では落ちない笠井の自制心を弄び、ただただ快感を与え続ける。しかし、絶対に笠井の中心には触らない。笠井はまだ乳首だけでイケるような身体ではない。だが、野島は一度狙った獲物は逃さないタイプだ。笠井を徹底的に調教し、手中に収めるつもりでいる。

そんなことはつゆ知らず、笠井は心で抗いながら愛撫をされ、溶かされそうになる自制心と戦った。この、自分でさえこれだけ興奮する愛撫をどう少年に教え込むのか・・心の隅で精いっぱい考えようとしているが、今日は何故か自身の肉茎の中心が疼き、意思を持ったように触って欲しいという気持ちで自制心が負けてしまいそうになる。

「……はぁ……っ、んっ……だめっ…………」

野島は甘く零れ落ちる笠井の声を聞きつつ、調教が進んでいることを確信していた。

「前はもっと理性的だったじゃないか、今は淫乱に見えるぞ」

わざと意地悪く野島が言う。

「ふふ……っ、そんなこと……な……い……です……」

笠井は必死に言葉を紡いだが、最早、野島の思った通りの答えしかできなくなっていた。



何分経ったのだろうか・・・普段の客ならせいぜい長くても10~20分程度だが、笠井はチラリと時計を見た。既に部屋に入ってから裕に1時間半以上も経過していた。明らかに1時間以上、乳首を愛撫されていた計算だ。はっと我に返り、すぐに言う。

「さぁ……! ……もういいでしょう……1,000プラス……これで解決しませんか……?」

笠井はうっすらと微笑みながら、言い放つように言った。野島にとってみれば、そのぐらいの勢いで言わなければ勝てないと言われているような気分にしかならず、更に苛めたい気持ちが湧いて出る。

野島は笠井の乳首への愛撫をやめず、転がすように舌先でチロチロとなぞりながら、片手で今まで絶対に触れなかった笠井の肉茎をズボンの上からそっと握りこう言った。

「……合計2千。いいだろう。だが、仕事が終わったらココの(後片付け)をしてあげよう」

笠井は一瞬ビクッと身体を震わせ、切り返す。
この瞬間、笠井は交渉ゲームに勝った気でいる。

「仕事の後だけ……お願いします、ね……」

もちろん発注者にとって千や2千万など、くだらない差であることは笠井も理解している。しかし、ただのおねだりをするだけでは笠井の支配欲が満足しない。そして、笠井は金に困っている訳ではなく逆に余っているほどだ。

この淫靡なゲームで性的興奮を得ながら愛撫を記憶し、上乗せ分を勝ち取ることが・・笠井にとって喜びを感じてしまう一瞬であり、この職業がやめられない原因のひとつなのだ。

野島は両乳首に優しくキスすると、そっと口を放す。
笠井の中心を握った手は、惜しむように肉茎の形を確かめながら何度か握りなおしてから手を放した。

笠井はいくつかの深呼吸してから野島から離れ、傍にあったワイングラスを手にするとくいっと口にした。
赤ワインが笠井の唇に光り、一層艶めかしい唇になる。

笠井の胸の小さな2つの突起は自己主張をやめておらず、呼吸に合わせて上下する。シャンデリアからの光がワインに透け、薔薇色の影を笠井の胸元に創り出し煌めいていた。

落ち着きを取り戻してきた笠井の口角が再度上がり、乱れたシャツを直しながらニヤリと笑い口を開く。

「今度呼ばれた時は3千にしましょう……」

まだ勝ったつもりでいる笠井を可愛く感じる野島がいた。
わざと肩をすくめ、参ったという表情をオーバーに作り、嘘の言葉を紡ぐ。

「君には敵わないな……降参だ。仕事が終わったらまた会おう」

野島は笑いながらそう言うとソファに腰を降ろした。

笠井は無言で身支度をしている。

その様子を野島はワインをくゆらせながら楽しんでいる。まだ落ち着いていない笠井の中心はズボンにくっきりと浮かび上がり、その在り処を主張する。笠井もそれが分かっているようで、すぐにジャケットを羽織り、大きくなったズボンの誇張は見えなくなった。


少しの間、無言の時間が広がったが、野島は笠井が落ち着くのを優しく待っていた。


「では2千、1週間。お引き受けしましょう。」

笠井はしっかりとした口調で言った。

野島は再度笠井に歩み寄り、艶やかな唇を指先でそっと撫でながら、再度ヤレヤレといった調子をオーバーに見せ、ワインを飲み干すと、まだ少し赤い耳元で囁くように言った。

「お手並み拝見といこうじゃないか……」

くつくつと笑いながら笠井も応じる。

「ありがとうございます……」

二人は見つめ合い、乾杯のグラスを鳴らした。


「これからの一週間に乾杯」



一瞬の間をおいて笠井は一礼をすると、残っていたグラスをくいっと一気に飲み干した。
野島はとても満足げにその様子を見つめながら口を開いた。

「すぐいつもの口座に振り込んでおくよ」

野島はそう言うとデスクの引き出しをあけ、笠井に電子ロックを開錠するための番号が書かれたカードを手渡した。

笠井は無言のままカードを受け取ると、部屋を出て行った。




つづく




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