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第七章 ノベルvsイレイザー
56.罠技
しおりを挟む『親父。段ボールの中にあるフリントロック式銃、貰っていいか? 破損品で捨てるんだろ?』
『別にいいが、何に使うんだ? タクヤは魔法で銃を量産できるだろ?』
『残念ながら、最終兵器はいつだって奇想天外じゃなきゃならなくてね。弾をくり抜いて、中に液体を流し込めれば完璧なんだけど』
『お前の発想は逐一よくわからんな。まぁガラクタだし持っていけ』
『サンキュー親父! それとさ、親父に作ってもらいたい薬品があるんだけど、良いか?』
『また突然。今すぐ作れるか分からんが、言ってみろ。私の科学力で作れないものはないからな』
『ありがとう! そんじゃ――』
◆
最終兵器はいつだって『最終兵器』っぽい見た目でなければならない。
なぜならば、それを見せつけるだけで敵は混乱し、絶対に最終兵器の攻撃に当たらない様にするからだ。
俺の召喚した銃の乱射によって何発も銃弾が当たって消耗し続けている中、イレイザーはただこの最終兵器に当たらない様に俺を仕留めにくるに決まってる。
遠距離の魔法は使えない。
遠距離攻撃をする術もない。
この条件下、俺は最終兵器を真っ直ぐイレイザーの居る方向に向ける。
ただでさえ乱射される銃弾を避け続ける中、俺がこんな大層なものを向けたならば彼はきっとこう思うはずだ。
『最終兵器を僕の方に向けてきた! このままじゃまずい! 広範囲に広がる散弾だったらどうしよう! そうだ、コイツは今ここで逃げ回っている僕の方に最終兵器を向けてるんだ! しめしめ、コイツは美味しいぞ! こんなに隙だらけなら、いっちょカッコよく決めてやろうじゃん!』
俺の前方の全てが俺の攻撃範囲。
後ろは闘技場の外だから実質俺は背水の陣。
逃げ場所なんてどこにもない最悪な立ち位置。
ここで裏をつけば、間違いなく仕留め切れる。
だがしかし、俺はハイライター公認の罠技使い!
想像の裏を行く、ラノベ展開を考える小説家には欠かせない戦闘技術・罠技!
――残念だが、あまりにも俺と相性が悪かったぜイレイザー。
単調すぎる動きしかしない悪役は、ぶっちゃけラノベ内では幾万と倒してきたんだ。
さて、どこからイレイザーは攻撃してくるのか?
まぁ、これだけ条件が揃ってんだ。
答えはもはや一択だろう。
「これで決着っスねノベル!」
『必中会心』!!
「例えば、後ろとかな?」
前方に掲げていた最終兵器を後ろに向け、何も見ずに躊躇なく発砲した!
破損品ってだけあり、威力はしょうもない。
人生初の本物の銃なのに、壊れているからか全く反動はない。
カッスカスの音を立てて銃弾は放たれ、案の定イレイザーの体のどこかに命中した音がした。
あー、これ魔法じゃ無いから、爆音で耳がキーンってするぜ全くよ!
「……なんなんスか、この弾」
イレイザーはその場に倒れ、痙攣しながら俺を見る。
彼の額に当たった弾は頭を貫通せず、半分くらい減り込んだ状態だった。
「どうだ、お味は? 今までの鉛弾とは全く違うだろう?」
俺はちゃんと見えたぞ?
お前が俺の後ろに回ろうとしたその瞬間を。
首を狙ってたなぁ。
拳法において、首を狙うのは一撃必殺のお約束だ。
前方から攻めると条件付き罠技が発動して吹き飛ばされることは分かっていた。
だったら、回り込んで後ろに攻めに来るしかないよな?
「悪い、始まりから終わりまで全てが罠技だったんですわ」
「……お見事……ス」
あんだけ銃弾を受けても走り回っていたイレイザーだったが、この最終兵器を受けただけであっさりと倒れてしまった。
これで、俺は亜人族を殺さずに倒す方法を見つけちまったわけだ。
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