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第一巻 第一章 クラシックの世界からやって来た!

第七話 アリアちゃんとえちち?!

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 アリアの目を見ると、ウルウルと潤んでいた。
 ――寂しさ。
 俺は彼女の目の奥にそれを感じた。
 何かを憂いているのか、それとも初めてとの相手を思い出しているのか。

 とにかく、彼女は俺のことを見ていない。
 よくよく考えてみれば、彼女たち――王女は、俺と子供を作るためだけに俺に会いに来たのだ。
 恋愛感情など全く無い、ただの生殖だ。
 こんなことでいいのだろうか。
 俺は悩み、出した結論は――。

「リュート様。キスをしてもよろしいですか?」

 俺の回答は――。



「やっと見つけたわ!」

 バリバリと音を立て、駐車場の背景から黒髪の美少女が現れたのだ!
 片手に純銀サーベル、そしてもう片方の手にはヴァイオリンが握られていたのだ!

「カノンっ!」

「なっ!? カノン! なんで場所がわかったんですの!?」

 アリアはカノンの登場に驚き、黒髪の少女を睨みつける!



 昼間の格好とは違って、白いドレスのようなものを着ている。
 ヘソを出し、カノンの胸が強調される。
 王女の風格を感じるような美しい姿だ。

「ふんっ! リュートは私の彼氏よ! 場所がわかって当然よ!」

「それ、理由になってないですの! 何したんですの?!」

「知らないわよ! なんか、歩いてたらここかもって思っただけ! なんか文句あんの!?」

 カノンは純銀サーベルをアリアに向けて振り下げた!
 威嚇である。

「もー! ちょうど良いところでしたのに! 仕方ない方ですわね!」

 アリアの体が赤くなると、服と共に捻れる。
 捻れたかと思えば、お嬢様服を着た状態でその場に立つ。

「か、カノン! 俺を助けにきてくれたのか?」

「当たり前でしょう! あんたがアリアに取られたまんま、諦めて帰るとでも思ったわけ!?」

「か、カノン……!」

 なんか、カノンがすごくカッコよく見えた。

「てか、アリアに欲情してんじゃ無いわよ! こんなババァに!」

「は、ババァとはなんですの!? 私はピチピチの200歳ですわ!」

「へぇ! 随分とお年を召してること!」

「200歳はまだ若い方ですの! ババァ呼ばわりは流石に許せませんわ!」

 アリアって200歳なの!?
 まあ、ヴァンパイアっていうから、ありえないことでは無いのか。
 じゃあ、カノンって一体何歳なんだろうか。

「本当、しつこい女ですわね! そこまでして、リュート様が欲しいのなら、私を倒してからにしてくださいまし!」

「そのつもりよ! あんたは頑丈だから、本気出してもいいわよね!」

「上等ですわ! ここで白黒はっきり付けようじゃありませんの!」

 カノンはヴァイオリンを左手に持ち構え、純銀サーベルを弦の上に添えた。

「心弦解放! 来なさい、セバスチャン!」

 アリアの胸から血が迸り、それがみるみるうちにヴァイオリンになる。
 そして、右手からも血が噴き出て、形を変えて弓になる。

「セバスチャンっていうのね、そのヴァイオリン。私のはティレジアルって言うの。あんたのよりも綺麗でしょ」

「あらまぁセンスのない名前だこと。お里が知れますわ」

「なっ! うるさいわね! さっさと勝負よ!」

 アリアとカノンはヴァイオリンを構え、両者睨み合う。
 これが演奏者(シンフォニカ)の決闘ってやつか。

「さぁ、カノン。準備はよろしくて?」

「準備万端よ。アリアったらプルプル震えてんじゃない? おしっこちびりそうなんでしょ?」

「まぁ、なんて下品なのかしら! リュート様、その女はやっぱりやばいですわよ!」

「そ、そんなことないわよ! 私の方があんな血塗れ女よりも純潔なの! そう思うでしょ、リュート!」

「いいや! 私の方が純潔ですの! 私は下ネタとか言いませんもの! 本当、親からどう言う教育を受けたらこうなるのかしら!」

「お父様を悪く言わないでよ! 失礼なやつだわ!」

 ――これが演奏者(シンフォニカ)の決闘ってやつか。
 ただの罵り合いじゃねぇか!

「ブサイクな乳を垂れ下げて、はしたないですわ! そんな服ばっかり着てたら、10年後には垂れ乳ですわね!」

「あんた、下ネタ言ってんじゃない! あんたこそどう言う教育受けてきてんのよ!」

「胸は上ネタですのよ! おっほほほほ!」


「あのさ。もうどうでもいいから戦うなら戦えよ。どういう気分で待てばいいんだよ俺は」

 俺は耐えきれずに一口水を差した。
 見てられんのよ、早く魔法で戦うところを見せてほしいもんだ。

「そうね。さっさと終わらせて帰るわよリュート」

「私と一緒に帰るんですのよリュート様!」

 カノンとアリアは再び見合う!
 俺はそれを後ろから眺めてるだけだが、明らかに何か空気が変わった。
 静まって数秒、木の葉の音すらも雑音に聞こえる闇夜。
 弦が揺らす空気の音は切なく、耳に聞こえて消えていくのを感じた。

「奏曲、カノン」

「奏曲、G線上のアリア」

 二人は小さくそう呟き、右手をゆっくりと引いた。

 つづく。
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