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第一巻 第一章 クラシックの世界からやって来た!
第六話 初めてを奪いますの・アリア
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柔らかい肉が二つ、俺の頭を挟み込むように圧迫している。
目を開けてもそこには風景はなく、機能するのは触覚と嗅覚のみであった。
鼻に飛び込んでくるのは甘くてどこか危険な香りで、ぽよぽよとした弾力のあるボールが何度も何度も鼻に当たっては潰れを繰り返す。
幸せ、これは天国の心地だ。
「あら、起きましたの? リュート様」
そう呟いて口元を隠す金髪の少女。
どうも顔を潰していたのは彼女の巨大なおっぱいのようで、首をパフパフしていたのは彼女の柔らかい太ももだったようだ。
初めての膝枕を体験したが、こんなに息苦しいものなのか?
「……起きましたの? じゃないぜ、アリア。いきなり俺ごと飛び降りたりするなよな、今でも落ちていく心地を肌で感じるんだが?」
「でも、なかなか新鮮な体験ではなくて? 一般人はビルから飛び降りたり壁をすり抜けたりすることはないでしょう?」
「その体験のせいで俺は気を失ったんだけど? お前たちみたいな魔法使いはみんな一般常識はないのか?」
「私は『魔法使い』では無いですわ。魔法を置き換えれば、この世界で言うスマートフォンですの。つまり、私がリュート様に対して『スマートフォン使い』って言ってる様なものですのよ」
「ほう……。俺たちが機械を扱うのと同じように魔法を扱うってことかぁ。その代わりに、異世界にはスマホが無いと。そいつは不憫だなぁ」
「ご冗談を。魔法の方が何倍も便利ですのよ」
アリアのおっぱいの先がツンっと膨らんでいる。
それを延々と眺めながらアリアの話を聞いていると、彼女はムッとしたのか頰が膨らんだのが下アングルから分かった。
「魔法使いって、異世界じゃ普通なのか?」
「だから、私は『魔法使い』ではないですのよ。私は演奏者(シンフォニカ)ですの」
「し、シンフォ? ってなんだ」
「こほん。そもそも、リュート様には、私たちの世界を説明せねばなりませんわね。こほん、私たちの世界では、誰でも魔法を自由に使えますの。その中に、魔法や呪いを使う『魔法使い(ウォーロック)』は存在しますが、大体は蛮族であると卑下されています。私たちの世界では、『魔法を使って芸術的な戦いを行うことが誉れである』とされているからです。私は、音楽を重きに置いた魔法を使う『演奏者(シンフォニカ)』ですの。他にも、『指揮者(マスター)』と呼ばれる者もいますわ」
「シンフォニカ、マスター?」
まるで、ラノベの設定の様なことを言い出すアリア。
「そう、私たちの魔法は『空気の調和』を扱ってますの。空気を集めれば水滴が集まって水が出来る、空気をぶつかり合わせれば火が出せる、空気を外へと追い出せば、気圧が下がって氷ができる。擦れば電気が、打ち付ければ爆発、捻れば風が、爆発の応用で光を生み出したり、光の反射を遮断して闇を作り出すこともできますわ。要するに、私たちが使っている魔法と言うのは『空気の調和のコントロール』ですの」
「ほ、ほう。つまり、空気を震わせて、まるで音楽を奏でる様な魔法だから『演奏者(シンフォニカ)』だと?」
「そう言うことですわ。あと補足を入れますわ。『指揮者(マスター)』は演奏者(シンフォニカ)の逆。自ら空気を震わせるのではなく、創造した楽器を使って魔法を飛ばすんですの。演奏者(シンフォニカ)の方が細かい芸が出来て便利ですけど、指揮者(マスター)の方が沢山の魔法を一度に扱うことができますのよ。私も最初は指揮者(マスター)を目指していたのですけれど、王家のしきたりで演奏者(シンフォニカ)になる事を強要されましたの」
そう言ってアリアは俺のことを見つめて口元を隠して微笑んだ……と思う。
「だから、私たちを『魔法使い』と呼ばないでいただきたいんですの。要は相手に『凶暴で時代遅れな人間』って言ってるようなものですのよ」
「なるほどな。なんかすまん」
「いいえ。私はあまり魔法使い(ウォーロック)は好きではありませんので、否定させていただきました」
アリアの表情を見る限り、怒りと不安が窺えた。
おそらく、過去に魔法使い(ウォーロック)に何かされたんだろう。
「そういえば、ここはどこだ?」
ふと辺りを見渡す。
気絶する前はまだ昼だったが、今は随分と時間が経ったようで、ここら辺はすでに真っ暗。
コンクリートの地面と赤い三角コーンや駐車された車が見える。
この情報から予想される場所と言えば、デパートの駐車場かパチンコ屋の駐車場くらいだろう。
とりあえず何かの駐車場の端っこに俺たちはいるようで、月の光だけが頼りだった。
対する吸血鬼であるアリアはこれくらいの暗闇の方がいいのだろうか?
「そ、それでリュート様。何故私があなたを追っているかカノンから聞きました?」
アリアは突然俺から隠れるために顔を手で覆い、まるで恥じらう乙女のような態勢を取り始める。
「あれだろ、その。子作りしに来たんだろ?」
「結構ストレートに聞くんですのね」
「まあ、今日で二回目だから」
「おほほはほ。逞しいんですわ。さすが、勇者の親とされる方ですわ」
――アリアは俺から離れ、仰向けになる俺の上に跨る。
彼女の金髪が月明かりで照らされてキラキラと輝く。
肌の艶はまた美しく、『絶世の美女』と呼ぶに相応しい姿だ。
「アリアはヴァンパイアだってな。俺の血を吸うのか?」
「おほほほほ。それもいいですが、私の目的のほうが大事ですわ。血の気が引いたリュート様を可愛がってもいいですけど」
「あはは、面白い冗談だな」
アリアの口からはみ出る八重歯。
獣の牙のようで、彼女が笑うとガッツリとギザギザな歯が見える。
「ビビらないんですのね。この世界では、吸血鬼は禍々しい魔物として扱われていると聞いたのですが?」
「アリアみたいな美女から血を吸われるなら、逆にご褒美だろ」
「お、おほほ。それこそ面白い冗談ですわ。さすがはリュート様。覚悟を決めて居られるのですね?」
「まぁな。俺は勇者の親になる男だ。こんなんじゃ動じたりしないさ」
アリアは目を細めて俺の首筋を舐めるように見てくる。
俺は自分のうなじ部分を手で覆って血を吸わせるように態勢を整える。
「それじゃ、一口だけなら」
いや待て待て待て待て!
アリア、ガチになってるやん!
なんか、漫画のワンシーンみたいにカッコつけて『血を吸えよ』とか言っちゃったけど、普通は戸惑うだろ!
『逆に、そんなこと言われたらやめときますわ』ってなれって!
「力を入れずに。私に体を任せてください」
無理無理無理無理!
やめて、いやっ、いやっ、いやぁぁぁぁ!
「ぷすっ」
彼女は急に吹き出して笑いだしたのだ。
「……へ?」
「吸血鬼が全員生き血を啜ると思ってますの?! それは傑作ですわ! あはははは!」
「な、何がおかしいんだよ! 吸血鬼、その名の通り血を吸う鬼なんだろお前ら!」
「それはそうですけど、私のようなヴァンパイアガールは生き血なんて飲みませんわよ! 生き血を啜るのはヴァンパイアの中でも特に魔力の強い『ヴァンパイアロード』だけですわ! 彼らは自分の城を築き上げるために大量の血が必要ですの。その時に血を吸うから私たちの種族は吸血鬼だなんて言われてますの。それは実際伝説で、そんなにやたらめったら殺戮なんてしませんわよ! あはははは! あぁ、お腹痛い」
彼女は俺の発言と行動にツボったのか、金髪を全身で揺らしながら笑ってみせたのだ。
畜生、揶揄われたってことか!
「私の目的はただ一つ。リュート様との子作り。それが終われば、私は元の世界に帰ります。カノンのように、これ以上付き纏ったりしませんわ」
そう言うと、彼女は俺の服の中に手を入れる。
俺は初めての経験すぎて、びくりと体を震わせてしまった。
「私、一度だけ経験がありまして、どんな風に動けばいいかは熟知してますのよ?」
アリアは急に首に巻きつけていたリボンを緩めて右ポケットにしまった。
そして胸元にたくさんあるボタンを取り、豊満な胸の谷間を俺に見えるようにちらつかせる。
「アリア。マジでするのか? ここで?」
「はい。ここは結界内なので、人は誰も来ません。存分に私を堪能してくださいませ」
俺はその一言でぎゅいいいいいんっとなった。
どこがとは言わないが。
「ふふっ、やっぱりリュート様は感度がよろしいようで。私の胸、好きなんでしょう?」
アリアは俺の服を徐々にめくって行き、俺の腹筋が顕になる。
「大丈夫ですわ。緊張されずに、全てお姉さんに任せてくださいまし」
アリアは服を脱ぎ、俺の隣に置く。
冷静そうに振るまってはいるが、俺の下半身はもう大興奮状態だ!
童貞王である俺からすれば、もう人生の最高潮の瞬間なのだ!
「やる気マンマンですのね」
「う、うるさいっ!」
彼女はそう言って最後の布であるブラジャーを取る。
チラリと見えたピンク色に膨らんだ大きな胸を視界に入れた瞬間に俺は目を閉じた!
何が起こってるんだ一体!!
「ごめん! あの、俺さ、まだこう言う経験なくて」
「ご安心ください。リュート様の初めては優しくしてあげますので」
俺はアリアを視界に入れないように前に手を出す!
このモーションは童貞すぎる俺の性だ!
女の子の裸を直視できない!
「リュート様。私を見てください。こんな吸血鬼の女の子でも、一夜だけでも愛していただけますか?」
アリアの一言で、俺は少しずつ目を開ける。
彼女の顔は、チークが乗っているように赤くなっている。
彼女も少なからず恥ずかしいのだろう。
「ほら、手をお貸しになって」
アリアが取った俺の右手に触れるのは、先端がぷっくりと膨れた彼女の柔らかい何かだ。
そしてアリアの手が俺の分身を擦り始めると、彼女は耳に舌を入れながらこう囁いたのだ。
「下、脱がしますわね」
その一言が脳天を撃ち、思考を全てバラバラにぶち壊した。
大学生、春。
入学して初日、童貞を捨てる。
――カノン。
俺は、このまま続けていいのか?
つづく。
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