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クモの糸3
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この街の空気が好きで、エミさんやこの街の人の温かい思いに包まれてここ数か月過ごしてきても心の奥底にある、最愛の人に裏切られたという傷は中々ふさがらない。
商店街から少し離れた公園のベンチに、ふたりは並んで座っていた。
マサキさんは、泣きじゃくる私の背中をずっと優しくとんとん叩いてなだめてくれていた。
「そっか。つらいこと話させてしまったね…………ごめん、でも、もうひとつだけ聞かせて」
マサキさんは、真剣な目で私を見ながら問いかける。
「正直よくある話だと思ったし、一般論としてだけど、略奪愛って奴は一時の感情で酔っぱらって周りが見えなくなってる状態だよね?」
そこで言葉を切って、私の理解が付いてきているか確認してるみたい。頷く。
たしかに、冷静に見ればよくある話って世間でははいて捨てるほどある話だと思う。
自分の身に降りかかってパニックになってしまったけど。
「いいか?そんな一時の感情なんてすぐに覚める。目が覚めてやっぱりユキちゃんとやり直したいって言ってくるんだよ、愛してるのはお前だけ、とかつまんねぇ言い訳を引っ提げて復縁迫る事はよくある」
うん、ロミオメールっていうのはよく聞く。すごくしつこいっていう事もあるらしい。
「もしその男から、やっぱ戻りたいって言ってきたら戻りたい気持ち、ある?」
「ない」
そこは即答した。はっきり言ってもう壊れたものは戻らない。戻ったとしても疑ってしまう。表面上許したとしても何かの折にすぐにその話が頭によぎるだろう…………そんなのお互いに辛すぎる。
「戻る気、ないんだね?」
「相手に子供が出来た云々より、元カレが話し合いではなく懇願に来たからもう無理だなって思った」
「わかった。じゃぁ、そいつらが二度とユキちゃんに近づけないように策を練るよ。この話、タカシに話してもいいかな? あいつ、なかなか伝手が豊富で頼りになる奴なんだよ」
「ごめんなさい。巻き込んで」
そうつぶやくと、マサキさん怒ってデコピンしてきた。
「バカ。俺が好きで巻き込ませて頂いてるの。気にすんな」
その言葉に、胸が熱くなった。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
電話で呼び出されたタカシさんは、正直面食らった顔をしていた。
なんかぶつぶつ独り言を言っていた。
「とりあえず、話を整理していい?」
タカシさんの議長モードが発動されたようだ。眼鏡がキラン!と光ったような気がする。
「マサキが聞いた電話は、ユキちゃんの元カレを寝取った女の母親からだった」
「タカシ、ちょっと露骨すぎ」
マサキさんが突っ込むがタカシさん、事実でしょ?と取り合わない。
「その内容は、結婚式をぶち壊し、元カレに粘着する女に対する抗議だった」
「まぁ、そうなるね」
「ユキちゃんは、そいつらの結婚式をぶち壊すようなこと、画策したの?」
そう、タカシさんは確認してくる。
「まさか!もう関わりたくなくてこの街に逃げてきたのにそれはない」
タカシさんもうなづく。マサキさんも、ユキちゃんはそんなことしないだろう、と太鼓判を押してくれる。
「まぁ、俺もそう思うよ。商店街に来た頃のユキちゃんは本当に見れられないくらい影があったけど、最近は吹っ切れて商店街に馴染んでるし。こないだの企画の功労者でもある」
茶化さなかったらカッコよかったよ、タカシさん。でも、そんなに私どんよりしてたんだ。自分ではわかんないもんね。
「では、最近、元の職場や友達から何か変わった知らせとかあった?」
そういえば、最近やたら連絡が来ていた。それは、あのふたりの結婚式の招待状が届いたことに端を発したものだったよね、たしか。そのことを率直に伝えると、タカシさんは少し悩んでひらめいたようだ。
「略奪女にしてみたらこの結婚式は、ユキちゃんから奪い取ったっていう勝利宣言の意味がある」
結婚式が勝利宣言?! そんな発想思いつかなかった!
「実は知り合いから同じような話聞いてさ。その女、戦利品のきょうだいが反対してるのに結婚式を無理やり決行しようとしてすごい揉めてるんだって。泥沼だよ。奪った手段だって正直吐き気がするものだった。よくそんな腹黒女に手を出せるもんだって思ったよ。まぁ世の中ゲテモノ食いもいるけどさ、そいつは若い女にモテてるって浮かれてた世間知らずのバカなだけだろうけどね」
本当に不愉快そうだ。
「おまけに来月は6月。一般的に人気のある月なんだろ?6月の花嫁って」
あ、そういえばジューンブライドか。6月の花嫁は幸せになれるっていう。
「梅雨の時期に迷惑だよ、呼ばれる方にしたら。ブライダル業界に踊らされてさ。それはさておき」
タカシさんは続ける。順を追って考えていくとなんか、話の筋がわかりやすくなった気がする。
「結婚式は正直親族のみでも出来る。しかし華々しく幸せな花嫁アピールしたい馬鹿が集めたいのは観客だよな。招待客という 」
「そうだな。勝利宣言は華々しくしたいとなると招待客は大勢確保したいよな」
そこまで言われて、あいちゃんの母親がかけてきた電話の意味が見えてきた。
商店街から少し離れた公園のベンチに、ふたりは並んで座っていた。
マサキさんは、泣きじゃくる私の背中をずっと優しくとんとん叩いてなだめてくれていた。
「そっか。つらいこと話させてしまったね…………ごめん、でも、もうひとつだけ聞かせて」
マサキさんは、真剣な目で私を見ながら問いかける。
「正直よくある話だと思ったし、一般論としてだけど、略奪愛って奴は一時の感情で酔っぱらって周りが見えなくなってる状態だよね?」
そこで言葉を切って、私の理解が付いてきているか確認してるみたい。頷く。
たしかに、冷静に見ればよくある話って世間でははいて捨てるほどある話だと思う。
自分の身に降りかかってパニックになってしまったけど。
「いいか?そんな一時の感情なんてすぐに覚める。目が覚めてやっぱりユキちゃんとやり直したいって言ってくるんだよ、愛してるのはお前だけ、とかつまんねぇ言い訳を引っ提げて復縁迫る事はよくある」
うん、ロミオメールっていうのはよく聞く。すごくしつこいっていう事もあるらしい。
「もしその男から、やっぱ戻りたいって言ってきたら戻りたい気持ち、ある?」
「ない」
そこは即答した。はっきり言ってもう壊れたものは戻らない。戻ったとしても疑ってしまう。表面上許したとしても何かの折にすぐにその話が頭によぎるだろう…………そんなのお互いに辛すぎる。
「戻る気、ないんだね?」
「相手に子供が出来た云々より、元カレが話し合いではなく懇願に来たからもう無理だなって思った」
「わかった。じゃぁ、そいつらが二度とユキちゃんに近づけないように策を練るよ。この話、タカシに話してもいいかな? あいつ、なかなか伝手が豊富で頼りになる奴なんだよ」
「ごめんなさい。巻き込んで」
そうつぶやくと、マサキさん怒ってデコピンしてきた。
「バカ。俺が好きで巻き込ませて頂いてるの。気にすんな」
その言葉に、胸が熱くなった。
☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・゜☆.。.:*・
電話で呼び出されたタカシさんは、正直面食らった顔をしていた。
なんかぶつぶつ独り言を言っていた。
「とりあえず、話を整理していい?」
タカシさんの議長モードが発動されたようだ。眼鏡がキラン!と光ったような気がする。
「マサキが聞いた電話は、ユキちゃんの元カレを寝取った女の母親からだった」
「タカシ、ちょっと露骨すぎ」
マサキさんが突っ込むがタカシさん、事実でしょ?と取り合わない。
「その内容は、結婚式をぶち壊し、元カレに粘着する女に対する抗議だった」
「まぁ、そうなるね」
「ユキちゃんは、そいつらの結婚式をぶち壊すようなこと、画策したの?」
そう、タカシさんは確認してくる。
「まさか!もう関わりたくなくてこの街に逃げてきたのにそれはない」
タカシさんもうなづく。マサキさんも、ユキちゃんはそんなことしないだろう、と太鼓判を押してくれる。
「まぁ、俺もそう思うよ。商店街に来た頃のユキちゃんは本当に見れられないくらい影があったけど、最近は吹っ切れて商店街に馴染んでるし。こないだの企画の功労者でもある」
茶化さなかったらカッコよかったよ、タカシさん。でも、そんなに私どんよりしてたんだ。自分ではわかんないもんね。
「では、最近、元の職場や友達から何か変わった知らせとかあった?」
そういえば、最近やたら連絡が来ていた。それは、あのふたりの結婚式の招待状が届いたことに端を発したものだったよね、たしか。そのことを率直に伝えると、タカシさんは少し悩んでひらめいたようだ。
「略奪女にしてみたらこの結婚式は、ユキちゃんから奪い取ったっていう勝利宣言の意味がある」
結婚式が勝利宣言?! そんな発想思いつかなかった!
「実は知り合いから同じような話聞いてさ。その女、戦利品のきょうだいが反対してるのに結婚式を無理やり決行しようとしてすごい揉めてるんだって。泥沼だよ。奪った手段だって正直吐き気がするものだった。よくそんな腹黒女に手を出せるもんだって思ったよ。まぁ世の中ゲテモノ食いもいるけどさ、そいつは若い女にモテてるって浮かれてた世間知らずのバカなだけだろうけどね」
本当に不愉快そうだ。
「おまけに来月は6月。一般的に人気のある月なんだろ?6月の花嫁って」
あ、そういえばジューンブライドか。6月の花嫁は幸せになれるっていう。
「梅雨の時期に迷惑だよ、呼ばれる方にしたら。ブライダル業界に踊らされてさ。それはさておき」
タカシさんは続ける。順を追って考えていくとなんか、話の筋がわかりやすくなった気がする。
「結婚式は正直親族のみでも出来る。しかし華々しく幸せな花嫁アピールしたい馬鹿が集めたいのは観客だよな。招待客という 」
「そうだな。勝利宣言は華々しくしたいとなると招待客は大勢確保したいよな」
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