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第2章
干渉の鑑賞
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「行って来まーす。」
ついこの間高校に入学したばかりの私は、まだ半分寝ているまま家を出た。これも、最近よく開かれているお菓子なティーパーティーのせいだろう。
ここのところ、1週間に1度のペースで開かれている。あれ以来、王様の狂歌地獄はまだ訪れていないが、さすがにそろそろ飽きが来ている。
さて、バスに揺られて約1時間、中学生の頃から何も変わっていない。そして、とにかく新鮮味がない。
やはり、夢はつまらないままのだ。少なくとも、あと3年間は…
友達はいる。鬱陶しい程くっついてくる奴は多いが…
「おはよう、ローラ!」
噂をすれば、1番鬱陶しいプリシラが登場してきた。
「元気ないじゃーん。また遅くまで起きてたの?」
「いや、そうじゃなくて、そのー……」
「はいはい、また夢にでも溺れてたんでしょー?」
「夢じゃないって!!…あっ、あの…あぁーー、もう、何て説明したら良いかわかんない…!」
夢の中では、誰もが私の世界を「夢」だと言う。でも、私の創った世界の中では、今いるこっちの世界こそが「夢」だと、お兄ちゃんが言う─お兄ちゃんとしか、その話をした事はないのだが─。
最近、どちらが本当の「夢」で、どちらが本当の「現実」なのか、わからなくなってきている。
「はぁ…どっちなの…?」
「何か言った?」
「えっ?あっ、何でもない!最近考え事多くてね…ただの独り言。」
「ふ~ん。まっ、私も考え事してたら、独り言に出ちゃってる時とか多いからねー。」
鬱陶しい割には、いつも何かしらナイスフォローを入れてくれる。
「考え込むのも程々にねー。……って、それが出来たら考え込まないよね。ちゃんと夢見てる?将来の方も、寝た時に見る方も。じゃ、私こっちだから、また昼休みにねー!」
─ちゃんと夢見てる?…か。
夢は見ている。毎日毎日、同じような夢ならば。
しかし、将来の方はどうだろう?この人生で、1度でも将来の夢を考えた事があっただろうか?いや、ない。
─私の将来…私の夢…
「私の……どうしたら良いの…?」
そもそも、夢現の境界線がわからなくなっているこの状況で、私は一体、どちらの世界で生きていけば良いのだろうか。
ここは夢…そう、ここは絶対に夢だ…ならば、変な事が起こるのは日常茶飯事…
友達は、私の事を変だと思っているだろう。だって、友達が夢の話をしている時、私はいつも首を傾げているから。夢の中で夢の話をされても、私は今いるこの状況を説明するしかない。しかし、それでは明らかに変だ。ならば、どう返せば良いのやら…
チャイムが聞こえてきた。……チャイムが鳴った!?
そんな事を考え込んでいたら、あっという間に集合時間10分前になっていた。これでは、早目に家を出る習慣が台無しだ。だが、そのお陰で遅刻せずに済んだのだ。本礼でなかった事に感謝するとしよう!
さて、そんなこんなでようやく4時間目になった。これを乗り切れば昼休みだ。
退屈極まりないこの授業の間、教室を見渡すと面白い事になっているという状況を、どれだけの人が知っているだろうか。もちろん、私はよく知っている。
辺り一面、机の上に乗っているのは頭だらけだ。それも、半分以上の割合で。1番前の席に座っている私でも、ついつい後ろを振り返っては苦笑いしてしまう。
しかし、集団心理とは恐ろしいものだ。なぜ私まで睡魔の餌食に!?
仕方ない、少しだけ目を閉じて…
「どうしたんだ?険しい顔して…」
ふと、誰かの声がした。
「えっ!?……って、お兄ちゃん!?ちょっと、今授業中だよ!?」
「ああ、授業中だろ?だから、さっさと戻れ。授業中に寝るなんて、お前にしちゃずいぶんと珍しい事するなー。」
「め、珍しい事するって…なんでそんな、私の夢の事知ってるの!?」
それは驚いた。お兄ちゃんはなぜ、私の夢の事まで知っているのだろう。
そもそも、夢は寝ている時に見るものなのに、どうして私は夢の中で寝ているのだろう。そして、なぜワンダーランドに…
「……ずっと見てた…それだけだよ。」
「ずっと…見てた…!?」
「ああ。それより、早く起きろ。大事な授業中にワンダーランドへ来てどうする!」
「起き……えっ…?お兄…ちゃん……ここって…私のワンダーランドは…!」
お兄ちゃんは、何も言わずにゆっくりと頷いた。と言うよりも、俯いたと言う方が正しいのだろう。お兄ちゃんは、下を向いたまま、しばらく固まって動かなかった。
その時のお兄ちゃんの目には、何か大きな事を決心したような、強い意志が込もっていた。若干の後ろめたさも秘めながら…
「まさか…本当なの…?いや、違う違う、絶対違う!!ここは現実、授業中の方が夢…!夢なんて、変な事ばかり起こる…そうだ、きっとこの世界は、夢の中での夢なんだ!なら、早くこんな夢は覚めて!お兄ちゃんが、こんな事言うはずないもん。夢なら覚めて、早く覚めて…こんな悪夢、さっさと消えて!!お願い…!」
ついこの間高校に入学したばかりの私は、まだ半分寝ているまま家を出た。これも、最近よく開かれているお菓子なティーパーティーのせいだろう。
ここのところ、1週間に1度のペースで開かれている。あれ以来、王様の狂歌地獄はまだ訪れていないが、さすがにそろそろ飽きが来ている。
さて、バスに揺られて約1時間、中学生の頃から何も変わっていない。そして、とにかく新鮮味がない。
やはり、夢はつまらないままのだ。少なくとも、あと3年間は…
友達はいる。鬱陶しい程くっついてくる奴は多いが…
「おはよう、ローラ!」
噂をすれば、1番鬱陶しいプリシラが登場してきた。
「元気ないじゃーん。また遅くまで起きてたの?」
「いや、そうじゃなくて、そのー……」
「はいはい、また夢にでも溺れてたんでしょー?」
「夢じゃないって!!…あっ、あの…あぁーー、もう、何て説明したら良いかわかんない…!」
夢の中では、誰もが私の世界を「夢」だと言う。でも、私の創った世界の中では、今いるこっちの世界こそが「夢」だと、お兄ちゃんが言う─お兄ちゃんとしか、その話をした事はないのだが─。
最近、どちらが本当の「夢」で、どちらが本当の「現実」なのか、わからなくなってきている。
「はぁ…どっちなの…?」
「何か言った?」
「えっ?あっ、何でもない!最近考え事多くてね…ただの独り言。」
「ふ~ん。まっ、私も考え事してたら、独り言に出ちゃってる時とか多いからねー。」
鬱陶しい割には、いつも何かしらナイスフォローを入れてくれる。
「考え込むのも程々にねー。……って、それが出来たら考え込まないよね。ちゃんと夢見てる?将来の方も、寝た時に見る方も。じゃ、私こっちだから、また昼休みにねー!」
─ちゃんと夢見てる?…か。
夢は見ている。毎日毎日、同じような夢ならば。
しかし、将来の方はどうだろう?この人生で、1度でも将来の夢を考えた事があっただろうか?いや、ない。
─私の将来…私の夢…
「私の……どうしたら良いの…?」
そもそも、夢現の境界線がわからなくなっているこの状況で、私は一体、どちらの世界で生きていけば良いのだろうか。
ここは夢…そう、ここは絶対に夢だ…ならば、変な事が起こるのは日常茶飯事…
友達は、私の事を変だと思っているだろう。だって、友達が夢の話をしている時、私はいつも首を傾げているから。夢の中で夢の話をされても、私は今いるこの状況を説明するしかない。しかし、それでは明らかに変だ。ならば、どう返せば良いのやら…
チャイムが聞こえてきた。……チャイムが鳴った!?
そんな事を考え込んでいたら、あっという間に集合時間10分前になっていた。これでは、早目に家を出る習慣が台無しだ。だが、そのお陰で遅刻せずに済んだのだ。本礼でなかった事に感謝するとしよう!
さて、そんなこんなでようやく4時間目になった。これを乗り切れば昼休みだ。
退屈極まりないこの授業の間、教室を見渡すと面白い事になっているという状況を、どれだけの人が知っているだろうか。もちろん、私はよく知っている。
辺り一面、机の上に乗っているのは頭だらけだ。それも、半分以上の割合で。1番前の席に座っている私でも、ついつい後ろを振り返っては苦笑いしてしまう。
しかし、集団心理とは恐ろしいものだ。なぜ私まで睡魔の餌食に!?
仕方ない、少しだけ目を閉じて…
「どうしたんだ?険しい顔して…」
ふと、誰かの声がした。
「えっ!?……って、お兄ちゃん!?ちょっと、今授業中だよ!?」
「ああ、授業中だろ?だから、さっさと戻れ。授業中に寝るなんて、お前にしちゃずいぶんと珍しい事するなー。」
「め、珍しい事するって…なんでそんな、私の夢の事知ってるの!?」
それは驚いた。お兄ちゃんはなぜ、私の夢の事まで知っているのだろう。
そもそも、夢は寝ている時に見るものなのに、どうして私は夢の中で寝ているのだろう。そして、なぜワンダーランドに…
「……ずっと見てた…それだけだよ。」
「ずっと…見てた…!?」
「ああ。それより、早く起きろ。大事な授業中にワンダーランドへ来てどうする!」
「起き……えっ…?お兄…ちゃん……ここって…私のワンダーランドは…!」
お兄ちゃんは、何も言わずにゆっくりと頷いた。と言うよりも、俯いたと言う方が正しいのだろう。お兄ちゃんは、下を向いたまま、しばらく固まって動かなかった。
その時のお兄ちゃんの目には、何か大きな事を決心したような、強い意志が込もっていた。若干の後ろめたさも秘めながら…
「まさか…本当なの…?いや、違う違う、絶対違う!!ここは現実、授業中の方が夢…!夢なんて、変な事ばかり起こる…そうだ、きっとこの世界は、夢の中での夢なんだ!なら、早くこんな夢は覚めて!お兄ちゃんが、こんな事言うはずないもん。夢なら覚めて、早く覚めて…こんな悪夢、さっさと消えて!!お願い…!」
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