3 / 14
第1章
冒険の始まり
しおりを挟む
「そうか。なら、今日からお前はアリスだ。」
「うん!お兄ちゃん、これからもずっと一緒にいてね!どこにも行かないでね!」
「わかってる。どこにも行かないよ。」
なんと素敵な夢だったことか!お兄ちゃんに再会して、永遠に離れない事を約束した!
しかし、せっかくの幸せに水を差すように、嫌な予感で頭がもやもやし始めた。
そろそろ学校に行かされる頃だろう。あれから、既に1週間も経っていることだから。
「ローラ、そろそろ学校にも戻らないとね。今日は行けそう?」
噂をすれば、その通りの事を言われた。
私がしばらく黙っていると、
「まあ、まだ無理しなくても良いよ。行く気になった時で良いから。」
と、お父さんが介入してきた。
私は、お父さんのその言葉に甘えさせて貰い、今日も1日家で過ごす事にした。
「あーあ、アリスはこんな事しないよね…」
2人分の勉強机が置いてある部屋にこもり、独り言を溢した。
「アリスは、どんな事にも物怖じしないんだもん。明日は、頑張って学校行く!アリスって強いんだろうな……アリスって…何だろう…」
「アリス、考え事?」
ふと、誰かに声をかけられた。
顔を上げると、私のではない方の机に、当たり前のように座っている男の子がいた。お兄ちゃんだ!
「お兄ちゃん、不思議の国のアリスって何だろうね。アリスは強いの?」
「きっと強いよ。」
「私も、そんなアリスになれる?」
「お前はもうアリスになったんだから、心配ないって。」
そうだ、私はもうアリスなんだ。そこまで好奇心旺盛ではないけど、アリスと名乗る以上、毎日楽しく冒険しなきゃ!
「アリスは冒険するんだよね!お兄ちゃんも、私の冒険について来てくれるよね!?」
「もちろん。いくらアリスでも、1人じゃ危なすぎるだろ?それに、もう離れないって、今朝約束したばっかりだし。」
お兄ちゃんもついて来てくれるようだ。
私はお兄ちゃんと手を繋ぐと、裏口から家を飛び出し、白いウサギを探しに走った。
ここから私の…アリスの冒険が始まる!大好きなお兄ちゃんも一緒に!
そう考えると、ワクワクが止まらなくなり、走る足も更に速くなっていった。
「白ウサギさーん!私をワンダーランドに連れてってー!」
「アリス、白ウサギはいないよ。」
「えっ…でも、それじゃ、ワンダーランドに行けない…!」
「俺達は、もう不思議の国の中だよ。」
辺りを見回すと、絵本で読んだ世界とは違っていたものの、いかにもという雰囲気が漂っていた。
「本当に来たんだ!私、不思議の国のアリスになったんだ!!」
「お前がこの世界の主役だよ。だから、この世界はお前が創るんだ。ルールも、登場人物も、自分の王国を創っても良いんだよ。だってここは、何でも許される夢なんだから。」
「夢…夢じゃないもん。夢じゃ嫌!!お兄ちゃんだって、夢なんかじゃないもん!!」
ああ、やっぱり夢だった。お兄ちゃんがいるのは、夢の中だけだから…
でも、している事はぶっ飛んでいるのに、明らかに現実味を帯びすぎている。触った感触も、匂いも、音も、気持ちや心も…全てが、現実と同じような感覚だった。むしろ、現実よりも現実味を帯びていたようにも感じられる。
「じゃあ、やっぱり夢じゃなかったのかな…もしかしたら、今が夢なのかも…!」
その方が断然楽しいに決まっている!
あんな不思議の国の中で冒険する事が現実なら、毎日が今より何千倍も楽しく感じられるに違いない!
「私はアリスになったんだもん。そりゃあ、今は夢のはずだよね。」
現実を夢、夢を現実だと思い込もうとした。実際、あまり努力もせずに思い込んでしまったのかもしれない。
しかし、なぜか1つだけ、信じる事が出来ない事柄があった。それは、夢現が逆転するなんて事が、あり得るのだろうか…?という事だった。
きっとあり得る、出来ない事なんてない。そんな根拠もない事を信じようと、強い願望を持ち続けた。
どうやら、願望が強すぎた。
私はいつしか、そう思い込もうとしたという事実でさえ、忘れ去ってしまっていた。
そう。私はアリスとして、出来事の根本から、全てを覆してしまっていたのだった…
「うん!お兄ちゃん、これからもずっと一緒にいてね!どこにも行かないでね!」
「わかってる。どこにも行かないよ。」
なんと素敵な夢だったことか!お兄ちゃんに再会して、永遠に離れない事を約束した!
しかし、せっかくの幸せに水を差すように、嫌な予感で頭がもやもやし始めた。
そろそろ学校に行かされる頃だろう。あれから、既に1週間も経っていることだから。
「ローラ、そろそろ学校にも戻らないとね。今日は行けそう?」
噂をすれば、その通りの事を言われた。
私がしばらく黙っていると、
「まあ、まだ無理しなくても良いよ。行く気になった時で良いから。」
と、お父さんが介入してきた。
私は、お父さんのその言葉に甘えさせて貰い、今日も1日家で過ごす事にした。
「あーあ、アリスはこんな事しないよね…」
2人分の勉強机が置いてある部屋にこもり、独り言を溢した。
「アリスは、どんな事にも物怖じしないんだもん。明日は、頑張って学校行く!アリスって強いんだろうな……アリスって…何だろう…」
「アリス、考え事?」
ふと、誰かに声をかけられた。
顔を上げると、私のではない方の机に、当たり前のように座っている男の子がいた。お兄ちゃんだ!
「お兄ちゃん、不思議の国のアリスって何だろうね。アリスは強いの?」
「きっと強いよ。」
「私も、そんなアリスになれる?」
「お前はもうアリスになったんだから、心配ないって。」
そうだ、私はもうアリスなんだ。そこまで好奇心旺盛ではないけど、アリスと名乗る以上、毎日楽しく冒険しなきゃ!
「アリスは冒険するんだよね!お兄ちゃんも、私の冒険について来てくれるよね!?」
「もちろん。いくらアリスでも、1人じゃ危なすぎるだろ?それに、もう離れないって、今朝約束したばっかりだし。」
お兄ちゃんもついて来てくれるようだ。
私はお兄ちゃんと手を繋ぐと、裏口から家を飛び出し、白いウサギを探しに走った。
ここから私の…アリスの冒険が始まる!大好きなお兄ちゃんも一緒に!
そう考えると、ワクワクが止まらなくなり、走る足も更に速くなっていった。
「白ウサギさーん!私をワンダーランドに連れてってー!」
「アリス、白ウサギはいないよ。」
「えっ…でも、それじゃ、ワンダーランドに行けない…!」
「俺達は、もう不思議の国の中だよ。」
辺りを見回すと、絵本で読んだ世界とは違っていたものの、いかにもという雰囲気が漂っていた。
「本当に来たんだ!私、不思議の国のアリスになったんだ!!」
「お前がこの世界の主役だよ。だから、この世界はお前が創るんだ。ルールも、登場人物も、自分の王国を創っても良いんだよ。だってここは、何でも許される夢なんだから。」
「夢…夢じゃないもん。夢じゃ嫌!!お兄ちゃんだって、夢なんかじゃないもん!!」
ああ、やっぱり夢だった。お兄ちゃんがいるのは、夢の中だけだから…
でも、している事はぶっ飛んでいるのに、明らかに現実味を帯びすぎている。触った感触も、匂いも、音も、気持ちや心も…全てが、現実と同じような感覚だった。むしろ、現実よりも現実味を帯びていたようにも感じられる。
「じゃあ、やっぱり夢じゃなかったのかな…もしかしたら、今が夢なのかも…!」
その方が断然楽しいに決まっている!
あんな不思議の国の中で冒険する事が現実なら、毎日が今より何千倍も楽しく感じられるに違いない!
「私はアリスになったんだもん。そりゃあ、今は夢のはずだよね。」
現実を夢、夢を現実だと思い込もうとした。実際、あまり努力もせずに思い込んでしまったのかもしれない。
しかし、なぜか1つだけ、信じる事が出来ない事柄があった。それは、夢現が逆転するなんて事が、あり得るのだろうか…?という事だった。
きっとあり得る、出来ない事なんてない。そんな根拠もない事を信じようと、強い願望を持ち続けた。
どうやら、願望が強すぎた。
私はいつしか、そう思い込もうとしたという事実でさえ、忘れ去ってしまっていた。
そう。私はアリスとして、出来事の根本から、全てを覆してしまっていたのだった…
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
【R15】母と俺 介護未満
あおみなみ
現代文学
主人公の「俺」はフリーライターである。
大好きだった父親を中学生のときに失い、公務員として働き、女手一つで育ててくれた母に感謝する気持ちは、もちろんないわけではないが、良好な関係であると言い切るのは難しい、そんな間柄である。
3人兄弟の中間子。昔から母親やほかの兄弟にも軽んじられ、自己肯定感が低くなってしまった「俺」は、多少のことは右から左に受け流し、何とかやるべきことをやっていたが…。
【ショートショート】おやすみ
樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
恋愛
◆こちらは声劇用台本になりますが普通に読んで頂いても癒される作品になっています。
声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。
⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠
・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します)
・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。
その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。
女子高校生を疑視聴
すずりはさくらの本棚
現代文学
いまは愛媛があつい。女子高校生の制服が硬くならない内に見届けようと思いやってきた。最近は、セックスして動画を担保に女子高校生から金を巻き上げている。春から夏に移動して暑さ全盛期でも生きていけるのはセックスという儀式があるからだろう。川原や土手では多くのパンチラを世に送り出してきた。盗撮だ。盗撮だけでは性癖は留まらずに性交渉へと肉体を求めて彷徨う。頭の中はセックスのことばかりだ。そういう人間もいるという証拠になるだろう。女子高校生と擦れ違うたびにスカートの裾へと手が伸びる。疑視聴までは「タダ」だが、襲うとなると別だ。ただ刑務所へと戻ってもよいという安易な思考では強姦には至らない。不同意わいせつ罪とは女性が男子を襲ったときに年下の男子が被害を出せないからできた法案だと聞いた。長くても10年の刑だ。それと少々の罰金がついてくるらしい。わたしはこれまでに民事は一度も支払ったことがないし義務もないと思っている。支払う義務がなければ支払う必要はない。職場もないし起訴されても現在は無職であり住所が不定なので怖くもない。最近はまっているのは女子高校生のスカートの裾触れだ。注射器も用立てたので(絶対に足がつかない方法で盗んだ)睡眠導入剤を粉々にしておいたものを使用する。静脈注射は駄目と書かれてあるが駄目なのはなぜなのか知りたくなった。薬物ドラッグをなぜやったら駄目なのかを知りたいと思うのと同じだ。好奇心が旺盛なのと飽きるのは大体同じくらいに等しい。セックスとはそれについてくる「おまけ」のような存在だ。行動を起こした人には「ご褒美」が必要だとTVでもいってた。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
Last Recrudescence
睡眠者
現代文学
1998年、核兵器への対処法が発明された以来、その故に起こった第三次世界大戦は既に5年も渡った。庶民から大富豪まで、素人か玄人であっても誰もが皆苦しめている中、各国が戦争進行に。平和を自分の手で掴めて届けようとする理想家である村山誠志郎は、辿り着くためのチャンスを得たり失ったりその後、ある事件の仮面をつけた「奇跡」に訪れられた。同時に災厄も生まれ、その以来化け物達と怪獣達が人類を強襲し始めた。それに対して、誠志郎を含めて、「英雄」達が生れて人々を守っている。犠牲が急増しているその惨劇の戦いは人間に「災慝(さいとく)」と呼ばれている。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる