夢現アリス

Marnie

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第1章

冒険の始まり

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「そうか。なら、今日からお前はアリスだ。」
「うん!お兄ちゃん、これからもずっと一緒にいてね!どこにも行かないでね!」
「わかってる。どこにも行かないよ。」

 なんと素敵な夢だったことか!お兄ちゃんに再会して、永遠に離れない事を約束した!
 しかし、せっかくの幸せに水を差すように、嫌な予感で頭がもやもやし始めた。
 そろそろ学校に行かされる頃だろう。あれから、既に1週間も経っていることだから。
「ローラ、そろそろ学校にも戻らないとね。今日は行けそう?」
 噂をすれば、その通りの事を言われた。
 私がしばらく黙っていると、
「まあ、まだ無理しなくても良いよ。行く気になった時で良いから。」
 と、お父さんが介入してきた。
 私は、お父さんのその言葉に甘えさせて貰い、今日も1日家で過ごす事にした。

「あーあ、アリスはこんな事しないよね…」
 2人分の勉強机が置いてある部屋にこもり、独り言を溢した。
「アリスは、どんな事にも物怖じしないんだもん。明日は、頑張って学校行く!アリスって強いんだろうな……アリスって…何だろう…」

「アリス、考え事?」
 ふと、誰かに声をかけられた。
 顔を上げると、私のではない方の机に、当たり前のように座っている男の子がいた。お兄ちゃんだ!
「お兄ちゃん、不思議の国のアリスって何だろうね。アリスは強いの?」
「きっと強いよ。」
「私も、そんなアリスになれる?」
「お前はもうアリスになったんだから、心配ないって。」
 そうだ、私はもうアリスなんだ。そこまで好奇心旺盛ではないけど、アリスと名乗る以上、毎日楽しく冒険しなきゃ!
「アリスは冒険するんだよね!お兄ちゃんも、私の冒険について来てくれるよね!?」
「もちろん。いくらアリスでも、1人じゃ危なすぎるだろ?それに、もう離れないって、今朝約束したばっかりだし。」
 お兄ちゃんもついて来てくれるようだ。
 私はお兄ちゃんと手を繋ぐと、裏口から家を飛び出し、白いウサギを探しに走った。
 ここから私の…アリスの冒険が始まる!大好きなお兄ちゃんも一緒に!
 そう考えると、ワクワクが止まらなくなり、走る足も更に速くなっていった。
「白ウサギさーん!私をワンダーランドに連れてってー!」
「アリス、白ウサギはいないよ。」
「えっ…でも、それじゃ、ワンダーランドに行けない…!」
「俺達は、もう不思議の国の中だよ。」
 辺りを見回すと、絵本で読んだ世界とは違っていたものの、という雰囲気が漂っていた。
「本当に来たんだ!私、不思議の国のアリスになったんだ!!」
「お前がこの世界の主役だよ。だから、この世界はお前が創るんだ。ルールも、登場人物も、自分の王国を創っても良いんだよ。だってここは、何でも許されるなんだから。」
「夢…夢じゃないもん。夢じゃ嫌!!お兄ちゃんだって、夢なんかじゃないもん!!」

 ああ、やっぱり夢だった。お兄ちゃんがいるのは、夢の中だけだから…
 でも、している事はぶっ飛んでいるのに、明らかに現実味を帯びすぎている。触った感触も、匂いも、音も、気持ちや心も…全てが、現実と同じような感覚だった。むしろ、現実よりも現実味を帯びていたようにも感じられる。
「じゃあ、やっぱり夢じゃなかったのかな…もしかしたら、今が夢なのかも…!」
 その方が断然楽しいに決まっている!
 あんな不思議の国の中で冒険する事が現実なら、毎日が今より何千倍も楽しく感じられるに違いない!
「私はアリスにんだもん。そりゃあ、今は夢のはずだよね。」
 現実を夢、夢を現実だと思い込もうとした。実際、あまり努力もせずに思い込んでしまったのかもしれない。
 しかし、なぜか1つだけ、信じる事が出来ない事柄があった。それは、夢現が逆転するなんて事が、あり得るのだろうか…?という事だった。
 きっとあり得る、出来ない事なんてない。そんな根拠もない事を信じようと、強い願望を持ち続けた。

 どうやら、願望が強すぎた。
 私はいつしか、そう思い込もうとしたという事実でさえ、忘れ去ってしまっていた。
 そう。私はアリスとして、出来事の根本から、全てを覆してしまっていたのだった…
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