62 / 74
61話 霧の中
しおりを挟む
それからは、暫く悠々自適な生活が続いた。
ただ、特に変化がない=進展がないっていうことで、いい加減そろそろ生きてる人と出会えても良い気がする。
出会う人間は死体ばかりだからなー。
生きてる人と出会っていい感じに友好関係築けたら連れてってもらえないかなー。
…人語話せないとキツイよなー…………
そもそも日本語通じなさそうだし。あのエルフっ子とも衛兵さんとも会話できてないから……
言葉の壁って大事なんだね。スキルで自動翻訳とかしてくんねぇかな。若しくは念話とか。考えてることが大体伝わるタイプのヤツ。
こんな森じゃ人間の言葉を聞きつつ大体のニュアンスを聞き取りながら…なんてことも出来ない。そもそも凡人にはんな事出来ない。
聞こえてくるのは化け物の雄叫びばかり……
「ングググゥ……」
「チュン」
「ギエェェエ!!!」
「コロス…ッ…ノ……」
……ん?
待てい!!今なんか居たぞ!?
慌てて耳を澄ます。
「…セカイ………テニ……」
間違いない。何かを呟いている声が聞こえた。
聞こえた方に駆ける。久しぶりに伝わる“言葉”が聞こえて来た。
もしかすると…同郷か!?同郷なのか!?
木々を薙ぎ倒し、進んでいくと、霧が段々と濃くなっていく。
だが、そんな事は気にしては居られない。ようやく同郷の人間と会えるかもしれないのだ。
そして、もう霧で周りがよく見えないくらいになって、ようやくその存在を目視する。
それは、ただ黒かった。
まるで、“セカイ”が拒絶している様に。
そして、近くに行くと、何を呟いているのかがわかる。
それは、怨嗟だ。
“コロス”“ノロウ”“ユルサナイ”…………
吐き気がするほどの怨嗟が脳に叩きつけられる様な気分がしてくる。
そして、今気づいた。この黒い者が発する怨嗟は日本語ではない。
所々欠けてはいるが意味も伝わるし、どこか懐かしい響きだ。
念話かとも思ったが、こちらが何を念じても向こうの反応は変わらないから違うと思われる。
もしくはこの世界の念話が一方通行なのかもしれないが。
ゆらり、影が動いたかと思うと、その姿が掻き消える。
「コロス」
直後、耳元で怨嗟に塗れた音が鼓膜を叩く。あるのかどうかはわからないが。
眼の前を、暗黒が埋め尽くした。
咄嗟に大きく仰け反る。
後ろの方で、大きな破壊音がした。振り返れば、木が真っ二つに斬れていた。
不意に、ぽろり、何かが顔から落ちた。それは、常日頃俺の顔面を守っていた外骨格だ。下手な衝撃では傷も付かない筈のものが、綺麗に斬り落とされている。
驚くべきなのは、その断面である。
まるで磨かれたかのように綺麗に斬られている。
血がどろっと垂れてきて、ようやく痛みを覚える。
…身体再生が発動しない?
…そうだよ、コレどっかで見たことあると思ったんだ。
ラノベでみたよ、こんな感じの攻撃。当時絶望的なまでだったそのキャラの強さがよく分かる名シーンだった。彼は結局無敗のまま病気で逝った記憶がある。
そうそう、そいつ再生阻害の能力とかあったっけ。
…もしかしてラノベのキャラが再現されている感じかな?
わぁ、夢みたいだぁ。なんて言ってる奴はさ、知ってる中でかなり強い部類のキャラが全力で殺しに掛かってくると考えよう。そうだなぁ、五○とかサ○タマ程ではないけど、縁○とかくらいかな。
……勘弁してくださいよ。
全てを吸い込むような漆黒がこちらを向き、刃のような部位をこちらに向ける。
丁度そのキャラがしていたように……
「ダントウノシュルツ、マイラン」
今までよりも比較的ハッキリとした発音で、そう言い放った。
…………マジっすか???
ただ、特に変化がない=進展がないっていうことで、いい加減そろそろ生きてる人と出会えても良い気がする。
出会う人間は死体ばかりだからなー。
生きてる人と出会っていい感じに友好関係築けたら連れてってもらえないかなー。
…人語話せないとキツイよなー…………
そもそも日本語通じなさそうだし。あのエルフっ子とも衛兵さんとも会話できてないから……
言葉の壁って大事なんだね。スキルで自動翻訳とかしてくんねぇかな。若しくは念話とか。考えてることが大体伝わるタイプのヤツ。
こんな森じゃ人間の言葉を聞きつつ大体のニュアンスを聞き取りながら…なんてことも出来ない。そもそも凡人にはんな事出来ない。
聞こえてくるのは化け物の雄叫びばかり……
「ングググゥ……」
「チュン」
「ギエェェエ!!!」
「コロス…ッ…ノ……」
……ん?
待てい!!今なんか居たぞ!?
慌てて耳を澄ます。
「…セカイ………テニ……」
間違いない。何かを呟いている声が聞こえた。
聞こえた方に駆ける。久しぶりに伝わる“言葉”が聞こえて来た。
もしかすると…同郷か!?同郷なのか!?
木々を薙ぎ倒し、進んでいくと、霧が段々と濃くなっていく。
だが、そんな事は気にしては居られない。ようやく同郷の人間と会えるかもしれないのだ。
そして、もう霧で周りがよく見えないくらいになって、ようやくその存在を目視する。
それは、ただ黒かった。
まるで、“セカイ”が拒絶している様に。
そして、近くに行くと、何を呟いているのかがわかる。
それは、怨嗟だ。
“コロス”“ノロウ”“ユルサナイ”…………
吐き気がするほどの怨嗟が脳に叩きつけられる様な気分がしてくる。
そして、今気づいた。この黒い者が発する怨嗟は日本語ではない。
所々欠けてはいるが意味も伝わるし、どこか懐かしい響きだ。
念話かとも思ったが、こちらが何を念じても向こうの反応は変わらないから違うと思われる。
もしくはこの世界の念話が一方通行なのかもしれないが。
ゆらり、影が動いたかと思うと、その姿が掻き消える。
「コロス」
直後、耳元で怨嗟に塗れた音が鼓膜を叩く。あるのかどうかはわからないが。
眼の前を、暗黒が埋め尽くした。
咄嗟に大きく仰け反る。
後ろの方で、大きな破壊音がした。振り返れば、木が真っ二つに斬れていた。
不意に、ぽろり、何かが顔から落ちた。それは、常日頃俺の顔面を守っていた外骨格だ。下手な衝撃では傷も付かない筈のものが、綺麗に斬り落とされている。
驚くべきなのは、その断面である。
まるで磨かれたかのように綺麗に斬られている。
血がどろっと垂れてきて、ようやく痛みを覚える。
…身体再生が発動しない?
…そうだよ、コレどっかで見たことあると思ったんだ。
ラノベでみたよ、こんな感じの攻撃。当時絶望的なまでだったそのキャラの強さがよく分かる名シーンだった。彼は結局無敗のまま病気で逝った記憶がある。
そうそう、そいつ再生阻害の能力とかあったっけ。
…もしかしてラノベのキャラが再現されている感じかな?
わぁ、夢みたいだぁ。なんて言ってる奴はさ、知ってる中でかなり強い部類のキャラが全力で殺しに掛かってくると考えよう。そうだなぁ、五○とかサ○タマ程ではないけど、縁○とかくらいかな。
……勘弁してくださいよ。
全てを吸い込むような漆黒がこちらを向き、刃のような部位をこちらに向ける。
丁度そのキャラがしていたように……
「ダントウノシュルツ、マイラン」
今までよりも比較的ハッキリとした発音で、そう言い放った。
…………マジっすか???
11
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説

凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。


なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。
ご都合主義のハッピーエンドのSSです。
でも周りは全くハッピーじゃないです。
小説家になろう様でも投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編


ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる