虫けら転生録

或哉

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61話 霧の中

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それからは、暫く悠々自適な生活が続いた。
ただ、特に変化がない=進展がないっていうことで、いい加減そろそろ生きてる人と出会えても良い気がする。
出会う人間は死体ばかりだからなー。
生きてる人と出会っていい感じに友好関係築けたら連れてってもらえないかなー。

…人語話せないとキツイよなー…………

そもそも日本語通じなさそうだし。あのエルフっ子とも衛兵さんとも会話できてないから……

言葉の壁って大事なんだね。スキルで自動翻訳とかしてくんねぇかな。若しくは念話とか。考えてることが大体伝わるタイプのヤツ。
こんな森じゃ人間の言葉を聞きつつ大体のニュアンスを聞き取りながら…なんてことも出来ない。そもそも凡人にはんな事出来ない。
聞こえてくるのは化け物の雄叫びばかり……

「ングググゥ……」
「チュン」
「ギエェェエ!!!」
「コロス…ッ…ノ……」

……ん?
待てい!!今なんか居たぞ!?
慌てて耳を澄ます。
「…セカイ………テニ……」
間違いない。何かを呟いている声が聞こえた。
聞こえた方に駆ける。久しぶりに伝わる“言葉”が聞こえて来た。
もしかすると…同郷か!?同郷なのか!?
木々を薙ぎ倒し、進んでいくと、霧が段々と濃くなっていく。
だが、そんな事は気にしては居られない。ようやく同郷の人間と会えるかもしれないのだ。
そして、もう霧で周りがよく見えないくらいになって、ようやくその存在を目視する。

それは、ただ黒かった。
まるで、“セカイ”が拒絶している様に。
そして、近くに行くと、何を呟いているのかがわかる。
それは、怨嗟だ。

“コロス”“ノロウ”“ユルサナイ”…………

吐き気がするほどの怨嗟が脳に叩きつけられる様な気分がしてくる。
そして、今気づいた。この黒い者が発する怨嗟は日本語ではない。
所々欠けてはいるが意味も伝わるし、どこか懐かしい響きだ。
念話かとも思ったが、こちらが何を念じても向こうの反応は変わらないから違うと思われる。
もしくはこの世界の念話が一方通行なのかもしれないが。


ゆらり、影が動いたかと思うと、その姿が掻き消える。
「コロス」
直後、耳元で怨嗟に塗れた音が鼓膜を叩く。あるのかどうかはわからないが。
眼の前を、暗黒が埋め尽くした。
咄嗟に大きく仰け反る。

後ろの方で、大きな破壊音がした。振り返れば、木が真っ二つに斬れていた。
不意に、ぽろり、何かが顔から落ちた。それは、常日頃俺の顔面を守っていた外骨格だ。下手な衝撃では傷も付かない筈のものが、綺麗に斬り落とされている。
驚くべきなのは、その断面である。
まるで磨かれたかのように綺麗に斬られている。
血がどろっと垂れてきて、ようやく痛みを覚える。
…身体再生が発動しない?

…そうだよ、コレどっかで見たことあると思ったんだ。
ラノベでみたよ、こんな感じの攻撃。当時絶望的なまでだったそのキャラの強さがよく分かる名シーンだった。彼は結局無敗のまま病気で逝った記憶がある。
そうそう、そいつ再生阻害の能力とかあったっけ。

…もしかしてラノベのキャラが再現されている感じかな?
わぁ、夢みたいだぁ。なんて言ってる奴はさ、知ってる中でかなり強い部類のキャラが全力で殺しに掛かってくると考えよう。そうだなぁ、五○とかサ○タマ程ではないけど、縁○とかくらいかな。
……勘弁してくださいよ。
全てを吸い込むような漆黒がこちらを向き、刃のような部位をこちらに向ける。
丁度そのキャラがしていたように……


ダントウノシュルツ、マイラン断頭のシュルツ、参らん。


今までよりも比較的ハッキリとした発音で、そう言い放った。
…………マジっすか???
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