虫けら転生録

或哉

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47話 んで、その裏ってのがこちらになります

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目の前には、灼熱のマグマと、頼りない広さの地面が点々と配置されている。
俺の立っている所はまだ広いものの、壁面ギリギリに立っていても時折立つ火柱から飛び散るマグマの飛沫が飛んでくる。炎熱耐性か環境耐性どっちのお陰かは知らないがダメージはほぼ無いとはいえ、火柱が直撃したりマグマにポチャしたりしたらひとたまりもないだろう。
そんなマグマの中を、悠々と泳ぐ見知らぬ魔物達。Bランク以上のもちらほらと見えるし、あの遠くの方の今跳ねたのはAとかあるかも知れない。


...説明を...させて頂きたい。


人間とは、調子に乗る生き物だ。

いや今俺は虫なのか人なのかよくわからない状態だが、とにかく元より人間の知性を持っているが故に、調子に乗る生き物である。ここ最近、人化を除いてかなり順調だ。ある程度生きていける強さを持って、簡単には死ななくなった。
そのついでに言い訳すると、俺は元人間。
しかも、割と最近まではイモムシか繭だったから、俺に羽があることや、空中機動のスキルの存在を忘れていた。
そして、突然予想だにしていない事が起きれば、人は思考能力が弱まる。

まぁ要するに、落ちたわけだ。落とし穴。
多分自然の物なのだろうが、草に隠されてて見えなかったんだよ、全く巧妙な。
それで、落ちた先が、ここ。
どゆことですかね。
落とし穴を抜けたらそこは地獄でした。雪国がよかった。

仕方ないから飛んで登ろうと思い上を見れば、なんかプテラノドンみたいなのが群れて飛んでる。登るにはアレと戦わなアカンとですか。慣れない空中戦で、冗談キツイぜ全く。
前方のマグマ上方のプテラノ。
どっちかって言うと上の方がマシな気がする。マグマは飛んで進めるけど、この先に何が在るかわからんし。行き止まりの可能性もあるしね。

冷静な部分では、そう言っている。
冷静な部分では。
ただ、上を向けば危険察知の反応がほんの少し強くなる。
上の方が危険だぞと、暗に伝えてきている。

自分の経験則からの論理を信じるか、それともスキルを信じるか、悩ましいところではある。

...進もう。ずっとここにいても何も変わらんどころか事態悪化するだろうし、ここは杜撰な俺の考えよりスキルを信じよう。実際俺の勘も良くないし頭も良い方じゃない。
それに、こっちなら蒼炎を活かせるスキル持ちの魔物と遭遇とか出来て自己強化出来るだろうからね。
そうだ、これからあの龍が襲って来た時の為に強くならなきゃいけない。だから、このマグマエリア...なんかダンジョンっぽいし、ここでちょっと新たなスキルとかの探索がてらレベル上げといこうか。なんだかんだお宝探しみたいで実はちょっと楽しみでもある。もしかしたらまだ見ぬ美味しい魔物がいるかもしれない。今のところ一番美味かったのは結構前に喰った木の実かな。唯一食べ物の味がしたという点で。

まぁ、それで死んだら元も子も無いから気をつけないといけない。決してフリとかではなく。え?最初から気をつけていれば落ちることもなかったって?聞こえないなー。聞こえないったら聞こえない。そもそも気がついたらこんなところまで落ちてたのに気をつけてとか言うんじゃねぇ。
まぁとにかく、魔物達を刺激しないように、ゆっくりと羽を広げてマグマの上へと飛び立った。

さぁ、マグマエリアよ。掛かってこいや。



「...上がって来ねぇな」
無精髭を生やした男が3人、黒い魔物が落ちていった穴を覗き込む。底は見えないが、仄かに赤く光っているようにも見える。
「この下は火山になっておる、恐らくマグマに落ちて死んだのじゃろう。若しくはフレアワイバーンの餌食になったか...」
後ろに控えていた、白い髭を地面に付きそうな程まで伸ばした老人が目を細め、呑気に茶を飲む。見れば、この老人は片足に怪我を負っており、木の棒で義足が嵌められていた、
一見か弱そうなただの老人に見えなくもない。ただ、その手に持つのは、世界に8本のみという伝説の世界樹を用いた魔法杖。そして、
この老人も、その杖に見合った力を持った大魔道士であった。
「珍しかった故是非とも素材が欲しかったんじゃがのぉ...」
「今から追いかけた方がいいすかね?」
「阿呆。流石の儂もマグマの海に飛び込むほど命知らずではないわい。ほれ、行くぞ」
残念そうに腰掛けていた岩から腰を上げ、世界樹の杖を突きながらのそのそとその場を去ってゆく老人と、それに追随する3人。
まぁ、何はともあれ、その落とし穴に落ちていった魔物の危険は去ったのである。
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