虫けら転生録

或哉

文字の大きさ
上 下
42 / 74

41話 獅子は羽虫が飛ぶのを気にしない

しおりを挟む
獅子の双頭から次々と必殺の威力を秘めた炎弾が放たれる。

炎熱耐性持ってるし行けるべって一発受けた。めっちゃ吹き飛ばされた。HP半分以上削れた。死ぬかと思った。まぁ、虫だし炎には弱いよね、うん。

...耐性貫通でも持ってるのかな?キツ。
空中機動の二段ジャンプで二連続の炎弾を躱し、反撃とばかりに毒刃ポイズンエッジを叩き込んで...
ブルン、と首が振るわれ、毒の刃が掻き消える。

うそーん!!なんで!?アイエエエナンデ!?ニンジャナンデ!?
兎にも角にも我が遠隔メインウェポンたる毒魔法が通らんと厳しい。いや、待て。あれから毒魔法の熟練度も上がった。また有用な魔法があるハズ。実際、前ちろっと見た時には死毒がどうとか中々に良さそうな魔法があった。
だが、そうなると難点はこのMPってやつである。
実は俺まだその魔法を試してない。つまりMPをどれだけ消費するか分かってないのである。今の俺のステでは毒刃ポイズンエッジだと10~20発は打てるからまだ大丈夫だろうが、新魔法でいきなり増えると倒しきれない恐れがある。そもそも効くのか?中々当たらず、当てても効くかは分からないって何そのクソゲー。

もうやだ逃げたい。よし、戦闘回避!という訳にもいかんのだよなぁ...
周辺に肉壁くんこと動く鎧も見当たらんし、押し付けられるような相手がおらん。何より、あの獅子さんは間違いなく俺に狙いを定めて居る。
まぁ、正直絶対勝てない相手ではないと思う。あの龍はマジで無理の底が知れないバケモンだが、コイツはまだやれる相手だ。いずれはあのバケモンも倒さなきゃならないかも知れないんだ。

...戦るしかないか。覚悟を決めて、再び獅子に向き直る。
獅子も示し合わせたように連射を止め、暫しの静寂が訪れた。
一際強い風が吹き、木の葉が舞い散る。
カサリ。舞い上がった最後の木の葉が小さな音を立てるのを合図に、この戦い一番の激戦が始まった。


炎弾が連続で放たれる。
ただ、ソレはもう何度も見ているから躱すのは容易。ギリギリを狙って躱し、右の鎌を獅子の背に突き立て...る直前に獅子が身を翻して躱し、獅子が牙に蒼い炎を纏い喰らいついて来る。
が、ソレを空中機動で地面に鎌が突き刺さる前に躱し、糸を放って相手の動きを止めようと試みる。が、それは案の定炎を纏う牙に食いちぎられた。

一見互角。だが、俺の攻撃は当たってもあまりダメージを与えられないだろうが、獅子の攻撃は当たれば致命傷なのだ。だから向こうはリスク無用で突っ込んで来るし、こっちはミスを恐れて中々踏み出せない。この差は微々たる物っちゃそうだが、こういうギリギリの戦いに於いて、非常に大きく影響してくる。
頭の横を獅子の爪が掠め、触角の片方が千切れ飛ぶ。身体再生で直ぐに再生は出来るが、再生するまでの間感知力が僅かに低下する。触角は虫の優秀な感知器官であるが、千切れやすいのが難点だ。頭を躱したつもりでいても当たってしまい、と言うこともある。

そして、ギリギリの戦いでは、こういうほんの僅かな差が趨勢を決する。


0.1秒、はたまたソレより短い刹那の時間。触角が片方失われた分の反応が遅れた。
その刹那は、蒼い炎弾が着弾するのに十分過ぎる時間であった。


爆発が起き、俺の身体が吹き飛ばされる。



大木により掛かる様になって、俺の身体は動かない、ソレを確認し、それでも獅子は油断せずに止めを刺すべく炎を纏った牙で俺の身体を食いちぎる。



その身体からは...大量の糸が吹き出した。
ハッハ!引っかかったな!スキル『脱皮』により自分の皮を剥いで、その中に糸を詰めて作った即席のデコイ。騙されてくれて助かった。本物の俺は空中機動により空に飛び上がっている。
形勢逆転だ。
獅子が戸惑う一瞬の隙を突いて、糸術で獅子を拘束する。既に燃えてるのもあって一瞬だけしか動きは止められないが、その隙は俺の鎌が獅子の首に届くまでに十分過ぎる時間であった。

全力を込めて、たてがみの生える獅子の首を狙い、両の腕の鎌を振り抜いた。




パキン。




嘘の様に軽い音を立てて、俺の両腕の鎌が折れた。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら

七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中! ※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります! 気付いたら異世界に転生していた主人公。 赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。 「ポーションが不味すぎる」 必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」 と考え、試行錯誤をしていく…

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。

ファンタジー
〈あらすじ〉 信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。 目が覚めると、そこは異世界!? あぁ、よくあるやつか。 食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに…… 面倒ごとは御免なんだが。 魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。 誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。 やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...