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39話 危機★
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風が吹き、森林が騒めく。
木々の葉が擦れる音がいつもより嫌に騒々しい。
この感覚は知っている。嫌な感覚だ。
何か、嫌なことがある時に感じるものだ。
前世でも、そうだった。
私は、森の中にある小さな小屋に生まれた。両親はエルフで、その子の私も当然エルフだ。
森の生活は幸せだった。お父さんもお母さんも優しかったし、私は自然が好きだったから。
ある日、悪い盗賊さんに攫われて、奴隷にされた。お父さんからは、奴隷は違法だって聞いていたけれど、どの世界にも悪い人はいるんだ、って思った。
お父さんとお母さんは、その時...殺されちゃった。
その時も、ザワザワと森は騒いでいた。
奴隷だった私を、森の虫さんが助けてくれた。
初めて見る種類の子だったけれど、虫は好きだったし、襲ってくる様子も無かった。
優しい虫さんだったけれど、ある日、森がざわざわと騒いでいた頃から記憶が途切れて、どうして別れたのか全く覚えてない。
その後は拾ってくれたらしい衛兵さんの紹介の孤児院でちょっと過ごした後、私は森へ戻った。優しくしてくれた院長さんには申し訳ないと思った。でも、あの虫さんにお礼を言いたいと思った。
それからもう6年が経った。
未だにあの虫さんとは出会えない。私はもう11歳になり、更にこの森で生き抜くのに十分な力を手に入れた。もうその辺の魔物にはそう簡単には負けないし、寧ろ一捻りだ。
なんでそこまで執着するのかは、私自身にもよく分からない。
私は前世から少し感性がおかしいとは言われてきた。そのせいで、イジメを受けたりもした。多分、それってこういう所なんだと思う。
だとしたら私は別にいじめられても良いし、陰口も甘んじて受けるつもりだ。
...納得はしないけどね。
ニヤリと嗤う熊の魔物が私の背後から飛びかかって来るが、植物のある環境下では私の視界は360°、なんだよね。
木が蛇のようにぬらりと動き、熊を締め上げる。
私が生まれた時から持っていたこの能力...スキルだっけ?
植物を支配する力は、正直言って凄く便利だ。特に森林の中では無類の強さだ。
町中じゃ、大したことも出来ないだろうけど。
だから、木で弓も作って矢を撃つ練習もしてみている。近接武器は怖いし、何より力不足で使えない。弓矢なら、お父さんが魔法の応用の仕方を教えてくれたし、何より私は前世で弓道を少しやっていた。本当に、かじる程度だけれど。
とはいえ、こんなにも虫さんが見つからないと、もしかしたらもう死んでいるのかも知れないと不安になってくる。寧ろ、虫という種の寿命を考えたら、そっちの確率の方が高いだろう。流石に私も探し疲れた。
...人の街に行こう。
こんなに探して見当たらないのだから、つまりそういう事...なんだろう。
何故だか涙は出なかった。もう感情が薄れちゃったのかもしれない。もしくは...まだ、生きてると信じてるせいなのかも。
木の幹に乗って、周りを見渡す。虫さんといる時も、こんな事してたっけ。
いつの間にか手に入れていた遠視系のスキルを使って周りを見渡す。系の、という曖昧な表現になっているのは、鑑定系のスキルを持っていなくて、自分の持ってるスキルが分からないから仕方ない。
《スキルポイントを500支払って、スキル:鑑定眼を取得しますか?》
頭の中に、いきなり声が響いてきた。スキルポイント?そんなのがあるんだ。初めて知ったけれど、別に否やはない。自分を知り、敵を知れば100戦危うからず、だっけ?昔の偉い人の言葉にもあるもんね。
《確認しました。スキルポイントを500支払って、スキル:鑑定眼を取得しました。 残りスキルポイントは17500です》
ああ、18000もあったんだ。ならまぁ、いっか。取り敢えず、鑑定眼を使って見る。
→
個体名:アルファ
年齢:11歳
性別:女性
種族:耳長族
状態:通常
ランク:A
レベル:82
EXP:445/1280
ステータス
HP:2084+10
MP:5595
物理攻撃:3033+10
魔法攻撃:6021+70
物理抵抗:980+50
魔法抵抗:1022+50
速度:4251+50
スキル
自然支配 植物支配 鑑定眼 魔力の担い手 魔力操作9 上弓術1 疾風属性魔法2 聖属性魔法1 気配察知1 危険察知5 遠視3 隠密1 追跡1 連携1 再生力3 自己再生3 身体再生1 生命1 魔力7 強力1 守護5 迅速5 魔力耐性2 環境耐性1 疾風耐性1 毒耐性2 恐怖耐性3
スキルポイント:17500
称号
自然の王姫 追跡者 Aランクに至った者 転生者
「Aランク…」
強いのだろうか?強いんだろうな…
これなら、また今度のざわつきには私が何とか出来るかも知れない。多分、このざわつきはスキルの危険察知によるものだと思う。
なら、これから危険があるってこと。
今までは、流されるままだった。色んな人を失った。もうこれ以上失わない。そう決意して、拳を握りしめた。
木々はいつまでも騒めいていた。
木々の葉が擦れる音がいつもより嫌に騒々しい。
この感覚は知っている。嫌な感覚だ。
何か、嫌なことがある時に感じるものだ。
前世でも、そうだった。
私は、森の中にある小さな小屋に生まれた。両親はエルフで、その子の私も当然エルフだ。
森の生活は幸せだった。お父さんもお母さんも優しかったし、私は自然が好きだったから。
ある日、悪い盗賊さんに攫われて、奴隷にされた。お父さんからは、奴隷は違法だって聞いていたけれど、どの世界にも悪い人はいるんだ、って思った。
お父さんとお母さんは、その時...殺されちゃった。
その時も、ザワザワと森は騒いでいた。
奴隷だった私を、森の虫さんが助けてくれた。
初めて見る種類の子だったけれど、虫は好きだったし、襲ってくる様子も無かった。
優しい虫さんだったけれど、ある日、森がざわざわと騒いでいた頃から記憶が途切れて、どうして別れたのか全く覚えてない。
その後は拾ってくれたらしい衛兵さんの紹介の孤児院でちょっと過ごした後、私は森へ戻った。優しくしてくれた院長さんには申し訳ないと思った。でも、あの虫さんにお礼を言いたいと思った。
それからもう6年が経った。
未だにあの虫さんとは出会えない。私はもう11歳になり、更にこの森で生き抜くのに十分な力を手に入れた。もうその辺の魔物にはそう簡単には負けないし、寧ろ一捻りだ。
なんでそこまで執着するのかは、私自身にもよく分からない。
私は前世から少し感性がおかしいとは言われてきた。そのせいで、イジメを受けたりもした。多分、それってこういう所なんだと思う。
だとしたら私は別にいじめられても良いし、陰口も甘んじて受けるつもりだ。
...納得はしないけどね。
ニヤリと嗤う熊の魔物が私の背後から飛びかかって来るが、植物のある環境下では私の視界は360°、なんだよね。
木が蛇のようにぬらりと動き、熊を締め上げる。
私が生まれた時から持っていたこの能力...スキルだっけ?
植物を支配する力は、正直言って凄く便利だ。特に森林の中では無類の強さだ。
町中じゃ、大したことも出来ないだろうけど。
だから、木で弓も作って矢を撃つ練習もしてみている。近接武器は怖いし、何より力不足で使えない。弓矢なら、お父さんが魔法の応用の仕方を教えてくれたし、何より私は前世で弓道を少しやっていた。本当に、かじる程度だけれど。
とはいえ、こんなにも虫さんが見つからないと、もしかしたらもう死んでいるのかも知れないと不安になってくる。寧ろ、虫という種の寿命を考えたら、そっちの確率の方が高いだろう。流石に私も探し疲れた。
...人の街に行こう。
こんなに探して見当たらないのだから、つまりそういう事...なんだろう。
何故だか涙は出なかった。もう感情が薄れちゃったのかもしれない。もしくは...まだ、生きてると信じてるせいなのかも。
木の幹に乗って、周りを見渡す。虫さんといる時も、こんな事してたっけ。
いつの間にか手に入れていた遠視系のスキルを使って周りを見渡す。系の、という曖昧な表現になっているのは、鑑定系のスキルを持っていなくて、自分の持ってるスキルが分からないから仕方ない。
《スキルポイントを500支払って、スキル:鑑定眼を取得しますか?》
頭の中に、いきなり声が響いてきた。スキルポイント?そんなのがあるんだ。初めて知ったけれど、別に否やはない。自分を知り、敵を知れば100戦危うからず、だっけ?昔の偉い人の言葉にもあるもんね。
《確認しました。スキルポイントを500支払って、スキル:鑑定眼を取得しました。 残りスキルポイントは17500です》
ああ、18000もあったんだ。ならまぁ、いっか。取り敢えず、鑑定眼を使って見る。
→
個体名:アルファ
年齢:11歳
性別:女性
種族:耳長族
状態:通常
ランク:A
レベル:82
EXP:445/1280
ステータス
HP:2084+10
MP:5595
物理攻撃:3033+10
魔法攻撃:6021+70
物理抵抗:980+50
魔法抵抗:1022+50
速度:4251+50
スキル
自然支配 植物支配 鑑定眼 魔力の担い手 魔力操作9 上弓術1 疾風属性魔法2 聖属性魔法1 気配察知1 危険察知5 遠視3 隠密1 追跡1 連携1 再生力3 自己再生3 身体再生1 生命1 魔力7 強力1 守護5 迅速5 魔力耐性2 環境耐性1 疾風耐性1 毒耐性2 恐怖耐性3
スキルポイント:17500
称号
自然の王姫 追跡者 Aランクに至った者 転生者
「Aランク…」
強いのだろうか?強いんだろうな…
これなら、また今度のざわつきには私が何とか出来るかも知れない。多分、このざわつきはスキルの危険察知によるものだと思う。
なら、これから危険があるってこと。
今までは、流されるままだった。色んな人を失った。もうこれ以上失わない。そう決意して、拳を握りしめた。
木々はいつまでも騒めいていた。
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