虫けら転生録

或哉

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36話 白鬼先生★

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ゆらゆらと鬼火が揺れて、暗闇を照らします。
私が刀を振るう毎に、青白い炎が闇を切り裂き、ソレとともに潜む魔物も両断しました。

「もう大丈夫ですよ、向かってきた魔物は全て倒しました」
刀を振るって血糊を落としながら、木陰に隠れていた商人さんを呼びます。
「ありがとうな、お前さんのお陰で夜道も安心じゃわい」
かっかっか、と恰幅のいいお腹を揺らして笑う商人さん。普通、夜中は魔物も強くなります。夜の森の方が危険なのはどの世界でも同じですね。まぁ、夜目が効けばそうでもない魔物が多いようですので、炎を出せる私にとってはあまり問題ないです。

私は元教員から転生して、ゴブリンになってました。
ですが、巨大な狼さんに集落を滅ぼされまして、その時、何故か進化して鬼人になりました。死んだ仲間の魂を背負い戦う鬼なんだそうです。まったく、私なんかが彼らの魂を背負う資格があるのでしょうか?
あれから、私は森の中を彷徨い歩きました。
まぁ、迷子ですね。元いた集落にも戻れず、また、人の姿になったので、狩った魔物の皮を服代わりにしながら、当てもなく魔物を狩っていた訳です。
そんな事をしている内に再び進化して、私は白鬼人になりました。
腰まで届く白髪が夜中も見やすいです。ですが、一応私は男なのに、女性の様な顔とほっそりした体つきになってしまったのは不満です。これが男の娘って奴ですか。
まぁ、その後人里にたどり着いて、纏うのは獣の皮だけだったので痴女扱いされました。解せぬってやつです。
その後服を貰って、冒険者ギルドなるものの存在を聞きつけて加入、今に至ります。
因みに名前は無いと言ったら、勝手に名付け大会が開かれて、ブランに決まりました。少々女の子みたいな名前ですが、実際候補にあがっていた変態露出魔にならなかっただけ良しとしましょう。この名前を候補として提案した奴は後でシメました。えぇ、勿論。

私は魔物を相当数倒していたお陰で、かなり高いレベルであるようで、ほぼ最速でBランク冒険者まで上り詰めました。そのおかげでといいますか、こうしてお得意様の護衛なんかもソロで任される様になった訳です。街のギルドでも結構強い方なんですよ?まぁ、こちらの世界での実年齢はまだ8歳とかその辺ですが。
身長は190近くあるので大人と勘違いされていて困ったものです。姐さんじゃないんですよ、私あなたの娘さんより年下ですから!!って状況になったりすることもしばしばあるくらいですからね...


「じゃー、行くぞぉ」
商人さんが馬をゆっくりと進ませます。
それじゃあ、私も少し休ませてもらうとしましょう。
「少し仮眠を取らせてもらいますね。魔物感知の魔道具が反応したら起こして下さい」
この先は安全地帯ですし、スキルを使って確認してもめぼしい反応は見当たりません。少しくらい、眠らせて貰っても大丈夫でしょう。


それはともかく、ここのところの目標は、『英雄の世代』に会うこと。丁度私と同じ年代ですね。というのも、この年齢の世代はどうにも優秀な力を持った子供が多く生まれた様で、まぁ私もその一人にはなるのですが。
というのも、もしかすると、生徒たちも転生しているかも知れないと思ってしまったのです。
その可能性を思い立ってしまったが最後、居ても立っても居られなくなり、一番手っ取り早く会える、鑑定屋をやっている少年に会いに行きました。

結果はビンゴ。転生者、しかも私が担任を持っていたクラスメイトでした。
彼曰く、同郷、特にクラスメイトに会うのは私で5人目で、勇者パーティ4人が全員同郷で、会ったことがあるそうです。
ここまで来れば、最早全員集まっているという説が濃厚になって来ました。こうなれば、担任として。全員と会って、もし辛い環境に置かれている人が居れば、保護する。
そう、私は密かに闘志を燃やしました。
居場所を特定する手がかりも、生きている保証もないですが、もし、元の世界に戻れたなら、胸を張って自慢話が出来るように、死んでいったゴブリンの仲間たちに顔向け出来るように。
私にやれることは全てやってやりましょう。
あわよくば、全員でまた集まれる事を祈って。


後に、既に一敗している事実を知って消え入りたくなってギルドの屋上から飛び降りたけど身体能力高いせいで普通に着地出来たのはまた別のお話。
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