虫けら転生録

或哉

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6話 異世界人の鑑定は大抵規格外。★

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この世界には魔境というものがある。

森林や砂漠、遺跡に洞窟まで様々で、多くのレアアイテムが眠るという、この世界のトレジャーハンター兼義勇軍ぎゆうぐんの冒険者にとっては絶好の稼ぎ場である。

だが、その中には危険なアイテムもあって、どんな効果があるか分からない事が多々ある。一見回復薬なのが実は毒薬、とかね。魔境の鎧を装備して、凶暴化する効果など持っていれば溜まったもんじゃない。実際それで多数の死傷者を出した事もあるくらいだ。

そこで必須となるのが、鑑定眼というスキル。
それさえあれば、道具の効果が一目で分かる。
だが、この鑑定眼というスキル、かなりのレアスキルで、一つの街に2,3人くらいしか持っている人は居ない。
そのせいで、ダンジョン近くにある街などでは、鑑定眼持ちが常に不足している。
その上、鑑定眼では生物の鑑定は自分のものしか出来ない。
だから、例えば『ステータス』という概念は知りつつも、それがどのくらいなのかが分からないという事例が多々ある。厄介な。

そ・こ・で。僕の出番というわけですはい。
僕はラキル、商人の息子だ。そして、転生者でもある。元は普通の高校生だったのが、今は荒稼ぎ申している。
はっはっは、懐が潤ってニヤケが止まりませんなあ。
何かっていうと、僕のスキルは特別で、『神眼』といい、ななんと自分以外の生物のステータスも閲覧可能!!すごい!!
因みに、王宮にはステータスの閲覧をする魔導具があるらしいが、異常なほどのレアアイテムで、国宝級なんだって!!すごい!!

その力を商売としてやっているお陰で、今や金貨のお風呂にすら入れる。
因みに貨幣の価値は、銭貨から始まり、銅貨、銀貨、金貨、白金貨と十倍していき、銭貨は十円くらい。つまり、諭吉さん...そして渋沢さん一万円札のお風呂に入れるわけなんですヨ!!わっほい。
そして、俺は鑑定一回銅貨3枚で商売中。300円で命を守れるんだから、オトクすぎるやろ。割引キャンペーンもやってるゼ。

だがまあ、こういう所で商売やってると、難癖なんくせつけるチンピラ共が出てきたりする。
しかーし、鑑定して貰いに来るのは百戦錬磨ひゃくせんれんまの冒険者。しかも僕自体がCランク相当の強さを持っているから何も問題ない。え?なんかCって微妙?うっせ。まだ6歳だけど、下手な騎士より強いんだぞ。
普通の騎士が大体D~Cランクだから。騎士の中でも上位に当たる六歳児なら充分強いジャマイカ。ウンウン、なんか王子様は同い年のハズなのに勇者でAランクだけど、僕は強さとかどうでもいいもん。

さて...そんな僕だが、ここまで聞くと意味もなくただ鑑定屋している訳では無い。何も目標がまるで無いという訳ではないのである、そう決して。
何かというと、僕と同じ転生者を探す事。何と言っても、先程ちらっと話題に上げた王子様も転生者らしいし。出会って、何をしたいとか、具体的に決まっている訳じゃない。

ただ、会いたい。
寂しい。
今の父さん母さんも、僕を大事にしてくれている。だけど、時々思う。
誰か、同郷どうきょうの人と会いたい。
出来れば、かつてのクラスメイト...あいつらは今どこで何をしているだろうか。
クラスメイトが転生している可能性は、充分にある。
僕が転生前、最期にいた場所は教室だった。クラスメイトも先生も、みんな居た。そこで転生したのだから、クラスメイトの皆も、先生だって転生していてもおかしくはない。
しかも、王子様は同い年、というのがネックだ。つまり、同時に転生したということ。
...王子勇者様、クラスメイトかもしれない。

空を見上げた。もしかすると、今もこの星のどこかでかつてのクラスメイト達が同じ空を見上げているかもしれない。そう思うと、なんだか駆け出したくなってくる気分だ。

外からは、人々の喧騒けんそうが聞こえる。
おっと、もうすぐ開店時間だ。行かなくては。
まずは、位置のわかっている転生者である王子に謁見えっけんするのを目指そう。
...最初から難易度高そうだなぁ......

まぁいいさ。やってやる。
僕は、開店の印ののぼりを突き立てると、声の限り今日も叫ぶ。

「さぁ、鑑定屋、今日も開店だよッ!!」
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