虫けら転生録

或哉

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1話 虫けら参上

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目が覚める。

いつの間にか布団にでも潜って寝ていたのだろうか?
何だか柔らかいような、硬いような、不思議な感触がする。取り敢えず、俺をおおう謎なモノから這い出る。飛び起きようともしたが、なんだか体がやけに重たい。

まさか、大怪我でも負って、今は病院にいる?
だとすると、俺はどうして怪我を負った?
あれ...?そもそも俺は誰...
ばさり、邪魔な布のようなモノから這い出れば、目の前には豊かな自然をたたえる森林が。

...ここ......どこ?



立ち上がろうとして失敗する。なんだか、体の構造がおかしい気がする。こんな手足多くない。あと手足短くない。
おおおおおおおおおおちつkえくぁwせdrftgyふじこlp落ち着け!!!
こんなときは深呼吸...ひっひっふー。
違う!!これ妊婦さんがやるやつやんけ!!
そ、素数を数えてワン・ツー・スリー♪
いやこれベストハウスやないかい!!
もうええわ、どうも、ありがとうございました~
漫才ちゃうねん!!

...一旦本当に落ち着こう。
取り敢えず、近くに水溜りか何かないだろうか。それで今の自分の姿を確認しよう。
立ち上がれないので、這って移動。視線が低いため周りが見辛い。ぐぬぬ。

暫く這い回って、ようやく水場を見つけた。
というか、このフォルムとかさ、挙動から、ね。もう、ほぼ確定だよね。
水溜りを覗き込む。

そこには、まあなんとも立派な芋虫が。



ほぎゃああああああっっっっっ!!!!




はい。先程は取り乱して少々映像が乱れてしまって大変申し訳ございませんでした。
いやさ、気づいたら森の中やん。んで自分が虫やん?これで取り乱さない人いる?
はい。うん。もう落ち着きましたんで、あんな絶叫しません。

少し冷静さを取り戻してきて、ようやく思い至る。
これ、転生じゃね?


最近の転生モノのジャンルに、魔物転生というのがあるのは知ってる。俺も好きでよく読んでた。うん。でもなー。してみたいかって聞かれると、NOなんだよなー。どっちかって言うとチートハーレム主人公の方が人気なんだよなー。

そして。空を見上げる。
なんかさ。真昼なのに月が見える。それも、なんか8つくらいある。うーん地球じゃないね。異世界かな。うん。


...うん。
それとさ。さっきから聞こえるシューって音は何かな。振り向きたくない。振り向きたくない。...ちらっ

俺の二十倍はある背丈。
厳つい威容のある頭。
こちらを睨む金色の双眸。
...垂れてくるよだれ
蛇って、虫から見たらこんなに怖いのね。

「シャーーッ!!」
食べないでええええええ!!!
「カッ!?」
怯えて丸まっていると、蛇が動きを止めた。
見れば、蛇よりも更に巨大な怪鳥が蛇をついばんでいる。

いやああああ!!!
待って、鳥が蛇に夢中になっている?
逃げるチャンスだコノヤロー!!
背中の傷は武士の恥?うるせえ俺は高校生だバカヤロー!!
トンズラこかせてもらいますわ!

もぞもぞ。うぞうぞ。

おせえええええええええええええ!!
!!背中に視線!!ぎょっとして振り向く。
蛇を喰らい尽くした鳥がこちらをまっすぐに見てるね。

Q,鳥の好物はなんですか?
A,虫です。

うぎゃあああああああ!!!!食われるううううう!!!

ふわり。体が浮いた。
鳥の鉤爪かぎづめに捕まってますねー。逃げられませんねー。
転生初日。鳥に食われて死亡。

嫌だあああああああああ!!!!!!!
せっかく異世界なのにこんなところで終われるかあああああああああああああ!!!!!うがあああああああ!!!!!!!!!!!

...だめだ、びくともしねえ。ああ、俺死ぬのかな...痛いよな...せめて楽に死ねますように。そう、半ば諦めていたその時だった。
俺を鷲掴みにする鳥が焦ったように急降下を始める。その直後。

ここまでの危機はまるで子犬の威嚇いかくに等しく思える威圧感。
全てを蹂躙じゅうりんする者たる圧倒的な存在感。
そして、すべて均しくチリに変える暴力の権化ごんげ

それが、俺の直ぐ近くで猛威もういを振るった。
落ちていく中、ちらりとそれを見る。
黒い。まるで吸い込まれそうな程に。

それは、ドラゴンだった。

かなりの高度だったが、直前に鳥が急降下を始めていたこと、そして鳥をクッションにできたため、落ちても大した傷にはならなかった。

慌てて木のうろに潜れる。
ドラゴンはゆっくりと降りてきて、横たわる鳥を少し見た後に、周りをキョロキョロと見渡し始める。

木の洞の中、小さく丸まって、息を潜める。
どれだけの時間そうしていたかは分からない。
気づけば、威圧感がなくなっていた。
のそり、と洞から出る。そこにドラゴンはいなかった。
......助かった...のか?

安堵あんど
とにかく、疲れた。
気づけば俺は、木の洞に潜り込み、泥のように眠っていた。






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