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メンヘラストーカー編

9話

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 現実と願望の区別を付けなければいけない。思い込みは自分を苦しめるだけです。
 話せばわかる「はず」という願望から脱却しないといけない。

 駄目だと思ったら冷たくあしられるタイプの人にはわからない苦労だと思う。

 お人好しの人へ。
 あなたの人生は他人を喜ばせるためにあるものではない。
 あなたのためにある人生なんです。

 当時の会話を振り返って書き起こす。

「いやだから本当に迷惑なんだ。俺にも人生があるんだ。やりたいことがあるんだ。何度も何度も何度も言ってるけど、俺には俺の人生があるんだ」
「君にばかりかまってられないんだ」
 結局、何も進まない。同じような悩みで同じように、何度も何度も呼びつけられて、暇つぶしに使われて、同じところをぐるぐるぐるぐる。
 付き合わされるほうはたまったもんじゃない。

「今、たくさんやりたいことがあって、時間があるうちにやっておきたいことがたくさんあって、なのに君はオレに何度も何度も会いたい会いたいと連絡してきて、会うまで連絡は止まらない。あってもまた次の日に会いたい会いたい。どう考えても君がおかしいんだから病院で詳しく話してくれ」

 ごちゃごちゃと言い訳を並べて、病院に通おうとしない。薬を飲まない。問題行動は止まらない。
「俺の人生の足を引っ張り続けてるんだよ自覚してるのか」

 機会損失という概念をヘラ君は理解できない。本来できたことがヘラ君の都合で時間が削られてできなくなっていく。可能性が削られていく。
 俺は介護で人生のほとんどを消費していた。早く自分のために人生を歩みたいのだ。なのに邪魔をし続ける。罪悪感もなく。

 まだ足りない。まだ足りない、まだまだ甘え足りない。
 俺の時間はヘラ君のために使うべきだと何年たっても考えている、
「君は、俺を恩人のように言っているけど。でも実際はどうだ? 迷惑しかかけられてないんだよ」

「君が一人暮らししてた頃。何でもいいから物をくれと、しつこく連絡よこしてたの覚えているか? こっちは睡眠時間削って介護してんのに、まだですか、まだ持ってきてくれないんですかと」

「毛布とこたつ布団タオル10枚古い石鹸中古パソコン用マウス。余ってたぶんと言っても総額で2万円以上になるよ。俺は君にたくさん与えたけど、今まで君がくれたものはいくつあった? 俺は君のためにどれだけ消費した?」
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