上 下
48 / 91
認知症、ワンオペ、在宅介護編

認知症、ワンオペ、在宅介護編 11話

しおりを挟む
 摘便とは肛門から指を入れ、出口付近の固まってる便を少しずつ掻き出すことである。水分を失って蓋をしている便を取り除く作業だ。

 福祉大卒なので基本的な知識はある。
 だが医療行為というものは福祉系の人間がしてはいけない。家族だから、医師の指導があったから出来たことだ。真似はしないでほしい。
 排便のコントロールは健康面、衛生面で大事なのだ。手袋が破れたりすると大惨事になるので絶対に二重にする。

 トイレの明かりは常時つけっぱなしになる。
 施設での介護ならば応援が入るかもしれないが、一人だとワンテンポ遅れたりで困ったことになる。
 トイレにゴミ箱を設置した。使用済みオムツやパッドを入れるためのものだ。
 匂いが気になるので蓋を閉めていたのだがこれはまずかった。結露が蓋の裏に付くのだ。蓋を開けると臭気のこもった汚汁が床に流れ出す。

 捨てる紙パンツなどは新聞に包んで捨てた。
 この時点で新聞を読める人間は一人もいなかった。俺は疲れていたので新聞読んでいる暇もなかったのだ。毎日のように紙パンツを消費するわけだが一般家庭としては多めのゴミ袋の保管場所に困った。ゴミ収集までの間、裏玄関に積んでおくことにした。

 ベッドは使い捨て紙シーツと防水して守られている。
 それでも掛け布団にまで便がつく。掛け布団カバーを洗わなければいけない。替えは3枚以上あるが足りない日もある。
 つけ置き、手洗い、洗濯3回まで、我が家の洗濯パターンだ。ここに一つ加わったのがコインランドリーだ。ペット用品禁止のところもある。介護の汚れそのまま持って行くわけにはいかない。
 汚れは綺麗に落とし、あとは乾燥させるだけの状態に持っていく。乾燥付き洗浄機を利用する。
 洗う必要はもうない気もするが、もう一度ぐらい洗わないと他の利用者さんに申し訳ない。

 コインランドリーにも色々あって、清掃が行き届いてない所は洗浄槽に生きたゴキブリがいたところもあった。

 ここで味噌汁事件の話をしたい。午前4時、俺は食事の時間もないぐらいに追い詰められていた。一晩で二度、時間差で布団カバーやシーツが汚れたのだ。
 漬け置きと洗濯の済んだ洗濯物をコインランドリーに持って行った。往復二回。
 我が家は田舎で隣の家と離れている。夜中でも洗濯機を回すことができた。そこまでは良いのだが、前日から食事をしていない。
しおりを挟む
1 / 2

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

と或る男の憧憬

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

おかし・な・ラブソング

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

垂れ流しの正義

現代文学 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

最果ての地を知る人よ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

処理中です...