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介護保険拒否編

在宅介護、介護保険拒否編 16話

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 買い物や病院には車でむかう。
 生活保護もらえというアドバイスをいただくことがあるが、その場合、車は処分しなければいけない。「甘えるな」とは言ってくれるな。田舎では生活必需品だ。
 そして当時の俺にとってはシェルターだった。

 介護保険のサービスを受けるには認定調査と主治医の意見書が必須だ。調査の段階で断るか、俺に断らせる。そもそも主治医がいない。多くの医者にみてもらっていたが、それは内科であったり大腸科であったり。必要なことは求めないのに、必要ないものを求める。

 複数の病院を掛け持ちして薬だけもらいに行く。外に出ているときだけ「クソだらけ」の家のことを忘れられるのだ。車の中が俺の精神を守ってくれるシェルターだった。ずっとつきっきりになったら、それこそ耐えられない。でも早く帰らないと、大惨事になってるかもしれない。外出は、一時避難でしかない。だが、離れられる時間がなければ、精神的に詰んでいた。

 ではなぜ介護保険のサービスをこれほど嫌がるのだろう。

 我慢ができなくなる。
 我慢するという状況に耐えられなくなる。
「やりたいこと」を思いついたら何よりも優先して「やりたい」という感情を優先するようになる。
 それを外からコントロールされること、ブレーキをかけられること、制限されること、に耐えられない。
「やりたいようにやりたい」
 これが心の中心にある。自分を制限するもの、医者であったり、家族であったり、制度であったり。そういうものに強く拒否反応を起こす。「我慢する」ことに耐えられない。

 俺はメンヘラにストーカーされたことがあるが、似ている。「今」求める「欲求」を何より誰より「優先」させないと途端に不機嫌になって周囲に攻撃する。攻撃することで周囲を思うがままにコントロールしようとする。強烈に湧き上がる「今」の衝動を全力で押し通そうとする。
 「過去」にした約束は消えていき「未来」を思って慎重になることはない。

「今」「今」「今」「今、しかない」

 ようするに駄々っ子だ。
 頭の中の理想(願望)で現実を塗りつぶそうとしてくる。
 理性のブレーキが壊れると、こうなるんだろう。

 徘徊や反社会的行動を、どうやってやめさせるか。
 認知症、精神疾患の方との接し方の原則は「否定しない」で共通している。
 適当に「そうやな」といって、その場しのぎでもいいから受け入れていくしかない。ただ、メンヘラ相手に「否定しない」は依存されてストーカー被害に繋がるかもしれない。このあたりの危険性も専門家には広めていただきたい。俺のような「お人好し」の被害者が出ないように。

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