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介護保険拒否編

在宅介護、介護保険拒否編 10話

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 生活保護も精神病院も、制度があってもすべてを解決できるわけではない。

「世間を知らない俺がバカだった」
 という結論に持っていけば「サービスを拒否する認知症患者」家族の悲鳴が軽く扱われる。それは絶対にダメだ。俺以外にもかかわる問題だから、引くことはできない。せめて拙著を読んでから議論に来てくれ。
 認知症で問題行動を起こしまくるのに、身体が動くから介護度低く、利用限度の上限でサービスが制限されてる若年性認知症の問題など、介護制度自体にも穴があるのだ。

 徘徊については現在の介護休業など制度が全く追いついていないと考えている。
 何時頃にお休みをとる。そんなことを職場で申請したとしても徘徊は予測などできない。

 もし本人が「徘徊願い届け」を役所に提出して「何時なんどきに徘徊します」と報告をし「徘徊許可証」を持ち「一定の時間特定の場所のみ徘徊」してくれるのならば楽なのだが、現実にそんなことはない。
 予測できないのだから休みも合わせられない。家族が少なく、介護サービスを拒否するパターンだとどうにもならない。
 最近は介護保険で徘徊対策のGPSを貸し出してたりするが、徘徊中に事故や事件を起こすリスクもあるのだ。

 現在の制度は、足腰が弱って少し日常生活をサポートして、認知症もなく、介護サービスも受けて、自立した生活を送れることを前提にしてるとしか思えない。

 母は紙パンツもなかなか履いてくれなかった。
 2010年ぐらいから「もうわかった、今度から絶対履く」次の瞬間には忘れて履かなくなる。3回目ぐらい、2013年後半からは履いてくれるようになった。

 徘徊、暴言、万引き、紙パンツ拒否。福祉大卒の俺でも苦労した。専門教育受けてない方の苦労はどれほどのものだろう? 最近は紙オムツの交換やパッドの交換も動画で学べる時代だ。いい時代になってくれた。男女でパッドの使い方も違うし、女性は性器の形状により尿道炎、膀胱炎になりやすい。膀胱から繋がってる腎臓、腎盂腎炎などにも注意が必要だ。
 清潔にしないと、高齢者はすぐに病気になる。免疫が衰えているのだ。

 知識がないと困難に立ち向かえない。大学時代恩師から「冷静な頭脳・あたたかい心」この二つを持ち続けなさいと言われている。福祉に大切なものは何か。温かい心は皆持っているかもしれない。しかし心だけでは絶対に救われない。知識が必要だ。現場で誰よりも冷静な判断ができる頭脳が必要だ 。

 ちなみに喉に食べ物が詰まって死にかけたこともある。ハイムリック法という後ろから抱きついて吐き出させる方法で2回ほど命を救っている。行っててよかった福祉大。

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