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大学編 1話

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 いわゆる苦学生というやつだった。
 金を惜しむために、このころから20年ほど散髪は自身ですませている。適当に切りそろえるだけなのだが案外ばれない。

 田舎で移動手段というものがバスぐらいしかない。そのバスもそこまで多くない。大学は山の上。
 同じ学年で1/3はバス通学、もう1/3は車で、後の1/3はバイク通学だった。
 それ以外に自転車通学は3人ほど確認している。
 兄弟が多くて同じく苦学生だった友人。自転車部の自転車大好きマン。そして俺だ。

 1年少々自転車通学を続けたが、山の上まで坂を上り続ける。2キロぐらい緩やかな坂が続く。毎日はキツイ。
 ついに我慢できずに俺と友人は原付を買うことになった。田舎だったので遊ぶ場所などはほとんどなく、山に行くか、川に行くか、海に行くしかなかった。
 勉強に集中することはできたがバーベキューなどのアウトドア趣味も充実した。
 原付を買ってからはさらに充実した。アルバイトは肉体労働系、朝5時に集合して8時頃まで働いて9時までの講義には間に合った。
 なかなか充実した日々であったがそこでもやはりタイムリミットが近づいていることを感じた。

 ある日の講義中、俺宛に電報が届いた。2000年代前半に電報である。
「チチキトクハヤクカエレ 」
 慌てて荷物をまとめて帰る準備をした。駅まで到着した頃、電話があった。当時携帯電話が普及していたのだ。
「おう、俺やけどもういけるからな」
 父からだった。

 不安は相変わらず続いたが友人達とも楽しく過ごせた。
 だがトラブルというものは俺の人生にはついてまわる。
 なぜか年間2回から3回自転車のチェーンが外れたおじいちゃんやおばあちゃんを助太刀することもあった。若い人も何人か。そんな回数確率はある? 「あの時の」と言われても、とっさに思い出せない。何度もありましたから。

 トラブルといえばカルト宗教の勧誘もあった。
 悪魔がどうたら言い出すので「どの悪魔さんです? ソロモン72柱、全部暗唱してもらえますか? できない? アモンの序列は?」俺自身わからない。
 そんなことを繰り返していると地方幹部、支部長とやらが現れた。
「よろしければ幹部待遇で入りませんか」
「それオ〇ムさんもやってた勧誘ですよね?」
 お帰りいただくことにした。

 ここまでなら、あるある、かな?
 スーパーに行った時、いきなり男性に手首を掴まれ耳元で「今夜どう?」とささやかれる。食パンに手を伸ばしていたが即「スンマセンスンマセン」とその場を離れた。そのスーパーは半年ほどいけなかった。異性でも怖いでしょ、それ?
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