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幼児期編 6話
しおりを挟む幼少期の思い出は、母の重い愛情で埋め尽くされている。母の実家はそこそこ大きい農家で田舎では母はお嬢様だった。
祖父は小さい自治体の議員にまでなっている。困ったら金、とにかく金で解決できないものはない。そういう価値観の人であった。
今のわが家は貧困世帯となっているが当時の母は金があった。
祖父は何千万単位の遺産を持っていた。母が受け継いたのは中古の扇風機のみ。ほぼすべて鬼のような叔父、叔母一家が「家の跡を継ぐ」形で相続した。
現状、我が家は実態としてはそんなにお金持ちじゃない。
それでも母はいつまでもお嬢様気分が抜けなかった。
ちょうど俺が7つぐらいの時だった。大きな祭りに連れて行ってくれた。
そこには有料の席があった。すでに座っていた大学生のお姉さんに対して、お金を握らせようとしていた。
「母さんやめて」
「これで互いに満足したんやからええんよ」
そんなことしてまで席には座りたくなかった。幼い俺に気遣ってのことか? 子供の前で頼りになる姿を見せたかったのか?
母が「正しい人」であったとは思えない。ただ歪んではいたが愛情はあった。愛がないよりはマシだった。
幼い頃、体が弱く何度も熱を出した俺に対して、両親は必死に動いてくれていた。「頼む神様仏さん連れて行かんといてくれ」祈る父。
病院に行くと、いつも「知らない」名前で呼ばれた。読み間違えた、という母。さすがにうすうすと気づいていた。
学校ではどんくさいから虐められ、家では理想の男の子でい続け、親戚と話するときも「外で余計なこと」言わないように緊張する生活。
息が詰まる、というか。そもそも「そんなもの」と最初からあきらめていた。
記憶がところどころ抜けているのも、ストレスがそこそこ強かったということなのかもしれない。
ランドセルをボール代わりに蹴られたり踏まれたり、ノートに落書きされたり、鉛筆で腕を刺されたり、靴がゴミ箱に捨てられていたり。股間を蹴り上げてくるアホもいた。
ほぼ接点のない後輩の女の子に後ろから、いきなり箒で殴られたこともある。ほぼ会話すらしてないのに? 理由はわからない。ただ「ナメられやすい」タイプだった。やり返さないんだもんな。
いじめられた思い出は多くある。
「他山が自転車で走ってるのを見かけたけどフラフラしていた」
などと笑いながら話している女の子。
ふらふらしながら自転車に乗れるのか? そんな器用な乗り方、俺にはできない。嘘をついてでも俺を貶めて笑いたかったんだろう。
アイロンみたいな顔をしていたのでアイロンと名付けよう。すぐ熱くなって真っ赤になるぞ!
その女は性別問わず誰かの陰口を常に言っていた。陰口を叩かれたら嫌なのでグループに入る女の子たち。アイロンちゃんはこれでも教師の家系だ。10数年後、教育実習でも因縁をつけられ無実の罪を着せられることになるのだが。
その後どうなったのだろう? やはり教育関係者になったのだろうか? 世も末だ。
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