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王女の家出

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明方のまだ皆が寝静まっている頃を見計らい、窓を開けて荷物を下へロープを使って落とす。



ルビィの部屋は2階だけど、ちょうど窓の近くに木がある。

まさか、お兄様も木を使って私が下へ降りるとは思ってないだろうな。



目立たないように、地味な服装にしローブも被った。

部屋を出ても、気を抜けない。

夜とはいえ、夜番の門番や衛兵など関門はたくさんだ。





私は木の影に隠れながら進み、ようやく使用人たちが使う門にたどり着いた。



ここにも門番はいるが、他の大きな門よりは手薄で、1人しかいない。



不審にならないように、堂々とお疲れ様です。と言って通りすぎると、門番もお疲れ様ですと返してくれた。



このまま東に行き、乗り合い馬車の乗合所まで行く。

明るくなる前に付かなければ、と気合いを入れて歩き出す。

それでも顔のニヤニヤは止まらない。

だって王城の外なんて初めてのようなものだもの。



学校だって、王城の中にあって、令嬢たちが通ってきていた。



30分程歩くと、乗合所が見えてきた。

ちょうど馬車が来ていたので、お金を払って乗り込んだ。

これで隣国の国境近くの森まで進めるはずだと、少しほっとする。



馬車に揺られて30分、終点に着いたので降りる。

ここから隣国まで、森を歩いて進む。



地図だと、ここから2時間くらいは森を歩く。

南西に行けば隣国、北西に抜けると隣国の隣国だ。

ちょうど明るくなってきたし、もう森に入っても問題ないだろう。





前にも誰か歩いたのだろうか。

草がなく、一本道になっている。

これなら、迷わずにすみそうだ。有難い。





もう1時間は歩いたのだろうか。

小屋が見えたので少し休憩しよう。



すいませーん



声をかけたが、返事はない。

住人がいるかもしれないので、下手に入ることは出来ないから、塀の近くの雑草の生えたところに、リュックを下ろし座る。





おーい!ハルトまてよ!

と言う声が聞こえた。



はっと気づき、顔をあげると黒髪の青年が走りながらこちらを見ると、止まった。



どのくらい経ったのだろうか。

気づくと横になって、眠っていたようだ。



と考えていると、ハルトと呼ばれた青年がこちらに来た。



「こちらで何をしている!!」

と大声で、しかも怖い顔で近づいてきたので身構えてしまう。

でも、堂々としていないと。怪しまれてしまうもの。





「初めまして。私はルビィです。ハールハイド王国を目指して旅をしています。」

と伝えると、ほほうと返事がきた。





ハルトと読んだであろう男女も追いつき、やり取りを見ている。





「なぜにハールハイド国を目指す」

と問われ、勉強のためですと答えると、ニカッと笑うと、ハルトは連れていこうという。



それを聞いて後から来た2人がえっと声を揃える。



それもそうだ。

どう見ても後からきた人は護衛だ。

だとすると、ハルトと呼ばれた人は王族?

会ったばかりで、簡単に人を信用していいわけがない。



しかも私は家出中。王族に関わるのはまずい気もするが、この人たちから逃げられる気もしない。

もし連れていくと言うのなら、素直に従うことにした。
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