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元世界最強が行く地獄の世界大戦〜前編〜
アルベータの過去 その1
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それは、戦争が勃発していた最悪の時代。歩けば血の匂いや硝煙の匂い、鉄の匂いや生臭い匂い。ありとあらゆる最悪な臭いが舞っていた。その世界は、常に人が死んでいく時代。人の命はおもちゃのように死んでいっていた。
そんな世界になったのには、主に2つの問題がある。人口増加が想定外の爆発。人口に対して食糧、お金、住むところ、教育、全てが不足し始めた。すると世界は、貴族狩りを始めた。お金、食糧不足を補うかのように……。最初に狙われたのは地域の地方貴族。それで済めばよかったのだが、市民は国の中央貴族まで狙うようになり始めた。
すると貴族は、護衛を雇い始める。そのうちの一人が、アルベータだった。
その護衛を雇った貴族の名は、タート・ヴァン・ヴィクトリアだった。タートは、この世界の行く先を、恐れていた。
死者の数は、日に日に増えていく。しかも、数人程度ではなく、数百人程度単位で死んでいっていた。
「うーん。このままだと世界はどうなると思う」
「うん?タート様どうしましたか」
「いや、このまま戦争が続いたら、この世界はどうなるのかなって思ってな」
「そうですね。滅亡に一直線じゃないんですか」
「そうだよねえ」
アルベータは、タートの後姿を眺める形になる。そして、タートが手に持っていた紙をクシャッと握りつぶす。
「もう、後には引けないということか」
「そうですね。そうなるんじゃないんですか」
その時部屋にノックの音が鳴り響く。
「失礼します。あなた」
「おう。ルティアか」
「ルティア様、失礼しています」
「ええ、アルベータさん、主人を守り抜いてくださいね」
「かしこまりました。奥様」
ルティアと呼ばれた女性にアルベータは一礼をする。
ルティア・ヴァン・ヴィクトリア。タート・ヴァン・ヴィクトリアに嫁いだ女性だ。彼女は、アーティが捨てられている時に、ヴィクトリア家の人間として引き取ることを決意。ただ、タートはヴィクトリア家の人間なので、ルティアの旧姓であるエンシェントの名を持たしている。よってこの時の、アルベータの名は、アルベータ・ヴァン・エンシェントだった。
アルベータの女性としての姿、礼儀等は、ルティアの指導の賜物でもあった。
「さて、今日の予定は何だったかな。ルティア」
「はい。今日は、ラミール家の方がいらっしゃる予定です」
「そうか」
「アルベータさん」
「何でしょうか。ルティア様」
「ここは平和ですが、気を付けて……」
「かしこまりました。ルティア様」
この時の私は知らなかった。これから始まる英雄と呼ばれるまでの計画を……。
そしてこの時の私は、タート様のためなら死ねると考えていたのに、封印されるということに……。
「久しぶりですね。ヴィクトリア様」
「久しぶりだね。ラミール。それにその子も、大きくなったんだね」
「はい」
「ミーファ挨拶」
「はい。ミーファ・ラミールです。5歳です」
「おお。すごいねぇ」
この場に来たのは、ラミール家当主シャバ・ラミール。そしてその子供のミーファ・ラミールだった。
「相変わらず護衛を雇ったのかい」
「ああ。そうでもしないと貴族は、生きていけない世界になったからね」
「そうだな。ついこの間、私の護衛をしていたものが2名殉職したばかりだからね」
「殉職か……。大丈夫だったのか」
「まあ、あの時と違って、無事だったぞ。私たちはだが……」
そんな会話が聞こえる。そんな会話を聞きながらこちらに歩いてくる少女を見る。
「たぁあ」
「うーん。どうしたの」
「抱っこ」
その言葉で、アルベータはしゃがみミーファを抱っこする。
「うあー。高い高ーいだぁあl」
「あっ。ミーファ」
ミーファの楽しげな声と同時に、シャバの焦りの声が聞こえる。
「いえ、大丈夫ですよ。ラミール様」
「ええっと、じゃあ、少しいいかな」
「はい」
「すまないな。アルベータ。少し子守をしてやれ」
「かしこまりました。タート様」
「では、話の続きと行こうか…」
そうしてこの話し合いが終わるまで、アルベータはミーファの遊び相手をしていた。
そんな世界になったのには、主に2つの問題がある。人口増加が想定外の爆発。人口に対して食糧、お金、住むところ、教育、全てが不足し始めた。すると世界は、貴族狩りを始めた。お金、食糧不足を補うかのように……。最初に狙われたのは地域の地方貴族。それで済めばよかったのだが、市民は国の中央貴族まで狙うようになり始めた。
すると貴族は、護衛を雇い始める。そのうちの一人が、アルベータだった。
その護衛を雇った貴族の名は、タート・ヴァン・ヴィクトリアだった。タートは、この世界の行く先を、恐れていた。
死者の数は、日に日に増えていく。しかも、数人程度ではなく、数百人程度単位で死んでいっていた。
「うーん。このままだと世界はどうなると思う」
「うん?タート様どうしましたか」
「いや、このまま戦争が続いたら、この世界はどうなるのかなって思ってな」
「そうですね。滅亡に一直線じゃないんですか」
「そうだよねえ」
アルベータは、タートの後姿を眺める形になる。そして、タートが手に持っていた紙をクシャッと握りつぶす。
「もう、後には引けないということか」
「そうですね。そうなるんじゃないんですか」
その時部屋にノックの音が鳴り響く。
「失礼します。あなた」
「おう。ルティアか」
「ルティア様、失礼しています」
「ええ、アルベータさん、主人を守り抜いてくださいね」
「かしこまりました。奥様」
ルティアと呼ばれた女性にアルベータは一礼をする。
ルティア・ヴァン・ヴィクトリア。タート・ヴァン・ヴィクトリアに嫁いだ女性だ。彼女は、アーティが捨てられている時に、ヴィクトリア家の人間として引き取ることを決意。ただ、タートはヴィクトリア家の人間なので、ルティアの旧姓であるエンシェントの名を持たしている。よってこの時の、アルベータの名は、アルベータ・ヴァン・エンシェントだった。
アルベータの女性としての姿、礼儀等は、ルティアの指導の賜物でもあった。
「さて、今日の予定は何だったかな。ルティア」
「はい。今日は、ラミール家の方がいらっしゃる予定です」
「そうか」
「アルベータさん」
「何でしょうか。ルティア様」
「ここは平和ですが、気を付けて……」
「かしこまりました。ルティア様」
この時の私は知らなかった。これから始まる英雄と呼ばれるまでの計画を……。
そしてこの時の私は、タート様のためなら死ねると考えていたのに、封印されるということに……。
「久しぶりですね。ヴィクトリア様」
「久しぶりだね。ラミール。それにその子も、大きくなったんだね」
「はい」
「ミーファ挨拶」
「はい。ミーファ・ラミールです。5歳です」
「おお。すごいねぇ」
この場に来たのは、ラミール家当主シャバ・ラミール。そしてその子供のミーファ・ラミールだった。
「相変わらず護衛を雇ったのかい」
「ああ。そうでもしないと貴族は、生きていけない世界になったからね」
「そうだな。ついこの間、私の護衛をしていたものが2名殉職したばかりだからね」
「殉職か……。大丈夫だったのか」
「まあ、あの時と違って、無事だったぞ。私たちはだが……」
そんな会話が聞こえる。そんな会話を聞きながらこちらに歩いてくる少女を見る。
「たぁあ」
「うーん。どうしたの」
「抱っこ」
その言葉で、アルベータはしゃがみミーファを抱っこする。
「うあー。高い高ーいだぁあl」
「あっ。ミーファ」
ミーファの楽しげな声と同時に、シャバの焦りの声が聞こえる。
「いえ、大丈夫ですよ。ラミール様」
「ええっと、じゃあ、少しいいかな」
「はい」
「すまないな。アルベータ。少し子守をしてやれ」
「かしこまりました。タート様」
「では、話の続きと行こうか…」
そうしてこの話し合いが終わるまで、アルベータはミーファの遊び相手をしていた。
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