発展科学の異端者

ユウ

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4章

64.魔物との戦争 真相編その2

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 クリスは車で災害現場に急行する。クリスは外の様子を見ながら、何が起きているのかを考えていた。

「クリス様。この先に居る魔物については、想定を上回る予想がされています」
「予想って何のことかな?」
「これまでの、被害と比べてです」
「ふーん」

 クリスは舐めていた。この戦いもいつも通りのレベルだろうと。だから、後悔をする。

「引き返せ」

 クリスが叫ぶと同時に、後方のドアを蹴破る。空いた扉から飛び出し、魔物の所に飛んでいく。

「死になさい。ここは人類の最後の防衛ラインよ」

 クリスは腰からレイピアを抜刀して、魔物の命を的確に打ち込む。

「あそこは、かなりやばい。想像以上にやばい敵ばかりだな」

 クリスの額から汗が流れる。肌で感じるほどの強い敵。

「援軍は……。来ているな。なら、最短で行く」

 クリスは、最短距離でボスモンスターのもとへ向かう。

 それが、この戦いの悲劇を招くことになる。

「邪魔するなあああ」

 クリスはレイピアで、モンスターの核を破壊し続ける。そして、ボスモンスターのもとにたどり着く。

「貴様が、この元凶か」
「おや。人間が来るとは、驚きですね」

 そこには、斧を構えるモンスターが存在した。それは、普通ではない存在。

「貴様は何者だ」
「私か?私は、神だ」
「神だと?」

 クリスの頬を汗が流れる。神と名乗るモンスターは、初めて対峙するからだ。

「ふざけているのか」
「ふざける?いったい何を言っている」
「神が居るのであれば、こんな世界にはなっていないはずだ」
「……。それこそ何を言っている。神は世界を正すものだ。私こそが、正義なのだ」

 神と名乗るものは、両手を大きく広げ、天を仰ぐ。そして、クリスに向き直した瞬間クリスとの間合いを詰めていた。

「邪魔をする人間は、死ぬんだ」
「くそが」

 クリスは紙一重で、斧の斬撃を避けてみせる。だが、二撃目を防ぐことはできなかった。

「初撃は、誰でも避けることはできよう。だが、二撃目からは、容易ではない」
「みたいだな」

 クリスは大きくバックステップで避けるが、お腹を切り裂かれる。それでも、致命傷にはならなかった。だから、反撃に出る。

「レイピアか。なかなか良い武器だな」
「くそ、全部読まれるな」

 クリスのレイピアの10連撃。それを全て防ぎ切られたのだ。

「良いスピードだが、神に並ぶことはない。死ね」
「やべっ」

 クリスがレイピアで突いたタイミングを、読まれてしまう。それが、致命傷につながる。

 神の振るった斧が、クリスの体を捉える。

「ガハッ」
「ほう。体をずらしたな。余計な抵抗をしなければ死ねたものを……」
「やべっ……」

 クリスが、後ろに大きく転がる。クリスの体から、血が流れる。口からは吐血をする。全てが、最悪な方に進む。

 もう、クリスは立ち上がることはできなかった。

「うむ。面白い人間だったな。だが、ここで殺しておくか」

 クリスの意識が切れるその時、想定していない事態がさらに起こった。

「おい、ラブリュス。いつまで、道草を食っている」
「オーディン。貴様には関係ない話だろう」
「関係ないとはねぇ。とりあえず、町は崩壊させておいた。目的のものはなかったな」
「なら、探せよ」
「悪いな。一旦帰らせてもらうぞ」
「ふざけているのか。オーディン」

 オーディンと呼ばれた神の手には、槍が握られていた。槍を握っていない手でふざけていないと手を振る。

「クラウ・ソラスから、呼ばれたからね」
「クラウだと」

 ラブリュスの顔が歪む。舌打ちをしながら納得して、ラブリュスは、違う町へ歩んでいくのだった。

 どれくらい意識を失っていたのだろうか。

 もしくは、天国に来たのだろうか。そう思えるほど、長い時を得て、クリスは立ち上がった。

「かなりの出血だな。生きているのが奇跡みたいだ」

 クリスは、人外なほどの回復力で、立ち上がった。

「ゼロ……」

 クリスは、重い足を動かし、町に戻る。

 町に戻って、クリスは絶望する。町が、破壊されていた。

 無残な死体が転がり、血の匂いや腐敗した匂いが、クリスの鼻を襲い気分が悪くなる。

 それでも、ゼロを探して、探した。

 そして、ゼロを見つけてクリスは崩れる。

「ああああああああ」

 そこに居たゼロは、四肢が吹き飛び胸を貫かれた姿で転がっていたからだ。

 それから、クリスは決意した。力がないものは、全てが奪われる。力があれば、力があれば、守るべきものを守れる。

 だから、クリスは神を全て殺そうと決意をした。
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