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1章
6.想定外の強さ
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中野は、拳銃で眷属を討伐していく。
だが剣中には弾数があるので、途中で他紛れになる。
「くそ、弾切れか。まあ、これだけ倒せれば何とかなるか……」
眷属は、半数は減ったがまだ、40匹ほど残っている。それに加えてボスモンスターも、生きているという状況。戦況だけを見れば、最悪に近い状態だった。
それでも、中野は撤退しない。
「この数程度なら、まだ勝てる」
中野は、右手で短剣を構える。そして、襲い掛かってくる眷属たちを、一体一体殺していく。
「うおおおお」
叫んでいなければ、頭がおかしくなるほどの眷属の数。
中野は眷属を殺すために振るった隙を、ボスモンスターに狙われた。
ボスモンスターが、眷属を投げてきたのだ。
「なっ」
その攻撃は想定していなかった。だから反応が一瞬だけ遅れる。
だが中野は冷静に対処する。さっきまで使っていた拳銃をその眷属目掛けて投げつけたのだ。
その攻撃で眷属の体がずれる。それで、中野はサイドステップで避ける。
「くそ、まずいな……」
一か八かの作戦は成功で終わるが、まだ何も変わってはいない。この戦いの最中に、援軍が来るわけでもなかった。
「援軍として呼ばれたのに、援軍が欲しいんだけど」
中野は必死に、状況を打開する方法を模索する。武器として残っているのは、この短剣だけだった。
「この短剣で、どこまでいけるのかな……-ッ」
中野にとって、想定外なことが起きる。短剣にひびが入っていたのだ。
「まじ、ちょっと、これやばくない……」
科学魔法師にとって武器とは命に値するものだ。モンスターを通常武器で殺そうとしても、基本的には武器が折れたり切れたとしても、再生が早く討伐することができない。
科学武器は人間の持つ神経と連動することによって、想定以上の強度と、火や、水、電気などを発生させることができる。
現在、中野の持つ武器が、ひびが入っているということは、あと10体前後がいいところだ。
「はぁ。こうなるなら、新しいの買っておけばよかった」
それでも中野は、短剣を構える。
「あいつらがもし戻ってくるとしたら、あと10分ってところかな……」
中野が一瞬だけ目を閉じたと同時に、眷属が数体飛んで来る。
「この程度で、私を殺せると思うなあああ」
中野が壊れかけの短剣で、眷属を全て切り殺す。
パッキ
そんな音が、短剣から聞こえる。
「もう少しだけ、もってくれ」
中野は、眷属を放置してボスモンスターとの間合いを一気に詰める。
(チャンスは、この一撃しかない)
中野の作戦は、ボスモンスターの撃破と同時に、この場からの離脱。それに中野は全てを懸けた。
だが現実は、残酷なものになる。
「くそが、お前らに関わってられないんだけどー」
眷属たちが、ボスモンスターを守る形で盾になる。
こうなればその眷属を殺さなければ、ボスモンスターの前に立つことはできない。
「くそがあああ」
中野は作戦を切り替え、一体目の人型の眷属を殺しながら進む。
パッキ
また、嫌な音が鳴る。
中野の目の前には、二体目の犬型の眷属が立ちはだかる。その眷属の頭に短剣を刺した瞬間、予想していた最悪な状況に陥る。
ガシャン
ボスモンスターの目の前で、科学武器である短剣が折れた。
(くそ、あっ、これ……まずいやつだ)
中野は、武器を失っている。それに対して、ボスモンスターは拳を振り上げていた。
(回避……。できない……)
中野は咄嗟に頭を守ろうと、両腕で顔を隠す。その瞬間、腹に重い一発が飛んで来る。
「ガハッ」
中野は、その攻撃をもろで受けてしまった。
「ゲホッ」
その一撃は、とても重かった。自身の前に進む勢いと攻撃の勢いが、最大のタイミングで重なったからだ。
中野は吐血する。内臓が確実にやられた。
中野はかなり吹き飛ばされ、壁に激突していた。
「ガハッ。た…た…なきゃ……」
両足で立とうとしたら、足に力が入らず、前に倒れる。
「やばっ」
中野の意識が少しだけ、薄れていく。その視界に入るのは、犬型の眷属達。
中野は死を覚悟する。その時だった。
「彩乃さん。生きてるよね」
中野の前に、人が立っていた。
「れ…い……」
「良かった。少しだけ、待ってて……。こいつらは、僕が仕留めるから」
そう言ったのは、城ケ崎零だった。
「さあ、死のうか。モンスターども」
零は両手で、銃を構える。そして、眷属達を一掃していく。
「何後退りしているの。モンスターの癖に……」
ボスモンスターも、後退りする。零の瞳にはないか憎悪が宿っているようだった。
「彩花、リリ。少し力を使うね」
そう言った零の拳銃に、不思議な魔法陣が展開される。
そしてその一撃は、大砲と同じもしくは、それ以上の力を持っていた。
「グオォォォ」
「テメーに、生きる資格なんてねぇーよ」
零は、ボスモンスターが吹き飛んだのを確認して、中野をお姫様抱っこする。
中野は目を閉じたまま動かない。確実にまずい状況だった。
零は急いで、皆が避難しているところに向かう。そこには救急車が待っていた。
「いってー」
「早く乗れ……」
その救急車に怪我人が乗ろうとした時、零が大声で止める。
「ちょっと待ってくれ、あや……いや、中野さんも連れて行ってくれ」
「えっ。城ケ崎さん」
「ってか、社長大丈夫ですか……」
慌てて駆け寄ってくる。零は急いで救急隊員に声をかける。
すると救急隊員は、慌てた様子で、救急車に中野を乗せる。
「よろしくお願いいたします」
「分かりました」
救急隊員は、そのまま病院に向かった。零は、その光景を眺めていて、救急車が見えなくなると同時に、今回の現場に向かおうとしていた。
そんな中声をかけてきたのは、大塚だった。
「城ケ崎さん。まだモンスターは、残っているのですか」
その問いに零は、首を振る。
「いいや、残ってはいないと思うが、ちょっと忘れ物をしたからね。それを取ってこようかと思って」
「なるほど。分かりました。今日はありがとうございます」
零は右手だけ挙げて、現場に向かった。
零はさっきまで、戦っていたところに来ていた。
「なるほど、科学武器が折れたのか……。手入れ不足ってところかな……」
零が来た理由は、なぜ中野が追い込まれたのかを確認するためだった。
だが、零には不可解なところがあった。短剣がこうも簡単に折れるのだろうか……。
中野の性格は、準備には怠らないイメージがあったからだ。
そして最近連発する、想定外の事件の数。
「……にしても、数が多いな」
零が次に注目したのは、石の数だった。眷属を殺すと、魔石と呼ばれる石が生み出される。これが科学武器に変わったり、クリーンエネルギーとして注目されている。
それが、想定よりも多いのだ。
「やっぱ裏で、引いている奴がいるのか……」
零が出した答えは、まだ情報不足だった。
「さて、明日にはN&I事務所に、顔を出しに行きますか」
零は体を伸ばしながらその場を、後にするのだった。
場所は大きく変わり、ルーア国外
「今回は珍しいな。5名も集まっておる」
「まあ、全員集まることはできなかったんですけどね」
「それでも、これだけ集まれば十分だろう」
男性が司会をしているこの会議は、七星教会の集まりだった。
だが剣中には弾数があるので、途中で他紛れになる。
「くそ、弾切れか。まあ、これだけ倒せれば何とかなるか……」
眷属は、半数は減ったがまだ、40匹ほど残っている。それに加えてボスモンスターも、生きているという状況。戦況だけを見れば、最悪に近い状態だった。
それでも、中野は撤退しない。
「この数程度なら、まだ勝てる」
中野は、右手で短剣を構える。そして、襲い掛かってくる眷属たちを、一体一体殺していく。
「うおおおお」
叫んでいなければ、頭がおかしくなるほどの眷属の数。
中野は眷属を殺すために振るった隙を、ボスモンスターに狙われた。
ボスモンスターが、眷属を投げてきたのだ。
「なっ」
その攻撃は想定していなかった。だから反応が一瞬だけ遅れる。
だが中野は冷静に対処する。さっきまで使っていた拳銃をその眷属目掛けて投げつけたのだ。
その攻撃で眷属の体がずれる。それで、中野はサイドステップで避ける。
「くそ、まずいな……」
一か八かの作戦は成功で終わるが、まだ何も変わってはいない。この戦いの最中に、援軍が来るわけでもなかった。
「援軍として呼ばれたのに、援軍が欲しいんだけど」
中野は必死に、状況を打開する方法を模索する。武器として残っているのは、この短剣だけだった。
「この短剣で、どこまでいけるのかな……-ッ」
中野にとって、想定外なことが起きる。短剣にひびが入っていたのだ。
「まじ、ちょっと、これやばくない……」
科学魔法師にとって武器とは命に値するものだ。モンスターを通常武器で殺そうとしても、基本的には武器が折れたり切れたとしても、再生が早く討伐することができない。
科学武器は人間の持つ神経と連動することによって、想定以上の強度と、火や、水、電気などを発生させることができる。
現在、中野の持つ武器が、ひびが入っているということは、あと10体前後がいいところだ。
「はぁ。こうなるなら、新しいの買っておけばよかった」
それでも中野は、短剣を構える。
「あいつらがもし戻ってくるとしたら、あと10分ってところかな……」
中野が一瞬だけ目を閉じたと同時に、眷属が数体飛んで来る。
「この程度で、私を殺せると思うなあああ」
中野が壊れかけの短剣で、眷属を全て切り殺す。
パッキ
そんな音が、短剣から聞こえる。
「もう少しだけ、もってくれ」
中野は、眷属を放置してボスモンスターとの間合いを一気に詰める。
(チャンスは、この一撃しかない)
中野の作戦は、ボスモンスターの撃破と同時に、この場からの離脱。それに中野は全てを懸けた。
だが現実は、残酷なものになる。
「くそが、お前らに関わってられないんだけどー」
眷属たちが、ボスモンスターを守る形で盾になる。
こうなればその眷属を殺さなければ、ボスモンスターの前に立つことはできない。
「くそがあああ」
中野は作戦を切り替え、一体目の人型の眷属を殺しながら進む。
パッキ
また、嫌な音が鳴る。
中野の目の前には、二体目の犬型の眷属が立ちはだかる。その眷属の頭に短剣を刺した瞬間、予想していた最悪な状況に陥る。
ガシャン
ボスモンスターの目の前で、科学武器である短剣が折れた。
(くそ、あっ、これ……まずいやつだ)
中野は、武器を失っている。それに対して、ボスモンスターは拳を振り上げていた。
(回避……。できない……)
中野は咄嗟に頭を守ろうと、両腕で顔を隠す。その瞬間、腹に重い一発が飛んで来る。
「ガハッ」
中野は、その攻撃をもろで受けてしまった。
「ゲホッ」
その一撃は、とても重かった。自身の前に進む勢いと攻撃の勢いが、最大のタイミングで重なったからだ。
中野は吐血する。内臓が確実にやられた。
中野はかなり吹き飛ばされ、壁に激突していた。
「ガハッ。た…た…なきゃ……」
両足で立とうとしたら、足に力が入らず、前に倒れる。
「やばっ」
中野の意識が少しだけ、薄れていく。その視界に入るのは、犬型の眷属達。
中野は死を覚悟する。その時だった。
「彩乃さん。生きてるよね」
中野の前に、人が立っていた。
「れ…い……」
「良かった。少しだけ、待ってて……。こいつらは、僕が仕留めるから」
そう言ったのは、城ケ崎零だった。
「さあ、死のうか。モンスターども」
零は両手で、銃を構える。そして、眷属達を一掃していく。
「何後退りしているの。モンスターの癖に……」
ボスモンスターも、後退りする。零の瞳にはないか憎悪が宿っているようだった。
「彩花、リリ。少し力を使うね」
そう言った零の拳銃に、不思議な魔法陣が展開される。
そしてその一撃は、大砲と同じもしくは、それ以上の力を持っていた。
「グオォォォ」
「テメーに、生きる資格なんてねぇーよ」
零は、ボスモンスターが吹き飛んだのを確認して、中野をお姫様抱っこする。
中野は目を閉じたまま動かない。確実にまずい状況だった。
零は急いで、皆が避難しているところに向かう。そこには救急車が待っていた。
「いってー」
「早く乗れ……」
その救急車に怪我人が乗ろうとした時、零が大声で止める。
「ちょっと待ってくれ、あや……いや、中野さんも連れて行ってくれ」
「えっ。城ケ崎さん」
「ってか、社長大丈夫ですか……」
慌てて駆け寄ってくる。零は急いで救急隊員に声をかける。
すると救急隊員は、慌てた様子で、救急車に中野を乗せる。
「よろしくお願いいたします」
「分かりました」
救急隊員は、そのまま病院に向かった。零は、その光景を眺めていて、救急車が見えなくなると同時に、今回の現場に向かおうとしていた。
そんな中声をかけてきたのは、大塚だった。
「城ケ崎さん。まだモンスターは、残っているのですか」
その問いに零は、首を振る。
「いいや、残ってはいないと思うが、ちょっと忘れ物をしたからね。それを取ってこようかと思って」
「なるほど。分かりました。今日はありがとうございます」
零は右手だけ挙げて、現場に向かった。
零はさっきまで、戦っていたところに来ていた。
「なるほど、科学武器が折れたのか……。手入れ不足ってところかな……」
零が来た理由は、なぜ中野が追い込まれたのかを確認するためだった。
だが、零には不可解なところがあった。短剣がこうも簡単に折れるのだろうか……。
中野の性格は、準備には怠らないイメージがあったからだ。
そして最近連発する、想定外の事件の数。
「……にしても、数が多いな」
零が次に注目したのは、石の数だった。眷属を殺すと、魔石と呼ばれる石が生み出される。これが科学武器に変わったり、クリーンエネルギーとして注目されている。
それが、想定よりも多いのだ。
「やっぱ裏で、引いている奴がいるのか……」
零が出した答えは、まだ情報不足だった。
「さて、明日にはN&I事務所に、顔を出しに行きますか」
零は体を伸ばしながらその場を、後にするのだった。
場所は大きく変わり、ルーア国外
「今回は珍しいな。5名も集まっておる」
「まあ、全員集まることはできなかったんですけどね」
「それでも、これだけ集まれば十分だろう」
男性が司会をしているこの会議は、七星教会の集まりだった。
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