追うモノと追われるモノ

TORIMI

文字の大きさ
上 下
2 / 3
出会い

『ん〜?待った。キミは誰だい?』

しおりを挟む
その男が俺の顔を覗いた。髪が白髪でパーマが掛かり、丸メガネをしている男だった。
"こいつじゃない"
心の中で落胆しつつその言葉に安堵した。男が探しているのは俺じゃないと言うことは、このスタンガンは俺に向けられた物じゃない。すぐに俺は答えた
「えーっと、俺この辺に指名手配犯が出ると聞いて!!」
男はスタンガンとハンカチを下ろし、目の前に現れた。今はジメジメとした季節なのに何故かロングコートを着ている。
『あ~、あの通り魔連続殺人事件の?いやぁ、キミよくもまぁそんな若いのに!ずいぶんと根性がある子だなぁ!もしかしてお金目当て?それとも復習とか??』
ヘラヘラとバカにした言い方だ。何かちょっと腹が立ったがこの人はこんな喋り方なのか?
『キミそんなんで殺されたらどうするんだい?相手は何人も殺しているんだ、捕まえようとしたらキミのことも躊躇なく殺してくるはずだよ。』
その通りだ。ここに来るまでも死ぬ覚悟はあったし、スタンガンを突き付けられた時もすぐ人生を諦められた。自分に価値がないと思っているからだ。
『キミ、死んでもいいとか思ってるのかい?』
一方的によく喋る奴だなと思う反面、こいつは人の心でも読めるのか?と少し驚いた。

『いやぁ!ボク実は警察なんだ!よかったねぇ先にキミを見つけたのがボクで!警察って言っても見つかるかわからない指名手配犯を淡々と探すことしかしてないのさ、探偵みたいな仕事だよねぇ。』
そう言ってロングコートの内ポケットから警察手帳を取り出した。
「たなべ、、、まこと?」
『そう!田鍋 真!よく読めたね!まぁこれは偽名だけどね、この仕事をやってると結構命を狙われるのさ。』
相変わらずニヤニヤ言っている。偽名って言っていいのか?こいつふざけてる男だな、、、
「命を狙われるって、、田鍋さんは、死ぬのが怖くないんですか?」
『死ぬこと?そりゃ~怖いさ!痛いもん!』

それだけの理由なのか。
『まぁこんな遅くに立ち話もなんだ!ボクのうちにおいでよ、すぐ近くなんだ。』
静かに俺は頷いた。何だろう。田鍋さんはよく喋るし、これから長くなりそうな気がするな、、、
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

この欠け落ちた匣庭の中で 終章―Dream of miniature garden―

至堂文斗
ミステリー
ーーこれが、匣の中だったんだ。 二〇一八年の夏。廃墟となった満生台を訪れたのは二人の若者。 彼らもまた、かつてGHOSTの研究によって運命を弄ばれた者たちだった。 信号領域の研究が展開され、そして壊れたニュータウン。終焉を迎えた現実と、終焉を拒絶する仮想。 歪なる領域に足を踏み入れる二人は、果たして何か一つでも、その世界に救いを与えることが出来るだろうか。 幻想、幻影、エンケージ。 魂魄、領域、人類の進化。 802部隊、九命会、レッドアイ・オペレーション……。 さあ、あの光の先へと進んでいこう。たとえもう二度と時計の針が巻き戻らないとしても。 私たちの駆け抜けたあの日々は確かに満ち足りていたと、懐かしめるようになるはずだから。

どんでん返し

井浦
ミステリー
「1話完結」~最後の1行で衝撃が走る短編集~ ようやく子どもに恵まれた主人公は、家族でキャンプに来ていた。そこで偶然遭遇したのは、彼が閑職に追いやったかつての部下だった。なぜかファミリー用のテントに1人で宿泊する部下に違和感を覚えるが… (「薪」より)

嘘つきカウンセラーの饒舌推理

真木ハヌイ
ミステリー
身近な心の問題をテーマにした連作短編。六章構成。狡猾で奇妙なカウンセラーの男が、カウンセリングを通じて相談者たちの心の悩みの正体を解き明かしていく。ただ、それで必ずしも相談者が満足する結果になるとは限らないようで……?(カクヨムにも掲載しています)

◆胡蝶の夢◆

凍星
ミステリー
時は明治。子爵家の跡取りである千種有恒は、親友である桐原忍と、自邸の庭で邂逅する。千種は、彼が五体満足で自分の目の前に現れたことに動揺した。何故なら、彼は自分の指示で暴漢に襲われ、ここに居る筈がない人間だから―― 『君は僕の大切なものを奪った。だから、同じことをしてやろうと思ったんだ……』 画学生である二人の青年と、一人の少女。三人の感情の縺れる先に待つものは。 終わらない夢の世界へ―― *『オレは視えてるだけですが』の中の「胡蝶」というキャラクターの過去とリンクした作品となっています。

こちら中津興信所

クライングフリーマン
ミステリー
このエピソードは、既に他のサイトで公開した作品ですが、よろしければ、お読み下さい。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

処理中です...