猫屋敷美麗の非日常

北東 太古

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第1章 ありふれた日常

猫屋敷美麗の日常

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キンコーン
授業終了のチャイムが鳴る
皆にとっては退屈終了の合図かもしれないが私にとっては、学校と言う場所自体が退屈なので、これと言った喜びは無い。
退屈をどう潰そうかと考えていると私の机の前へと元気に迫ってくる彼女。
名前は副宮小春ふくみやこはるバレー部に所属していて、常に元気があり入学式隣に居て喋って以来仲良くしてくれている。
笑った時に見える八重歯がとてもチャーミングだ。
「ねぇねぇ美麗~!ノート写させて!お願い!」
「別にいいよ、また寝てたの?」
「うん!朝練疲れちゃって!先生がさー」
そう続ける彼女にノートを差し出す。
うんうんと軽い相槌をうちながらノートを写しながらも喋る彼女の話を聞く。
10分程彼女と軽い雑談をして休み時間は終わりを迎えた。
そうしていくつかの退屈な授業を流し聞き昼休みの時間になった。
小春ちゃんはチャイムと同時に購買に駆け込み菓子パンを買ってきたようだった
「今日はメロンパン買えたよ~!ラッキー!」
「そのメロンパンそんなに美味しいの?」
「え!美麗食べた事ないの!?絶品だよ~いっつもすぐ売り切れちゃうんだから!」
「へぇ~…」
「1口食べる?はい!」
差し出されたメロンパンを1口齧る。
表面がカリカリしていて、甘さとメロンの芳醇な香りが口に広がり確かにこれは美味しい。
「美味しいねこれ」
「でしょ~!私のお気に入りなんだ~!美麗はいっつもお弁当だよねお母さんが作ってくれるの?」
「いや、自分で作ってるよ」
「えー女子力高いね!美麗みたいなお嫁さんが欲しい!」
「何言ってんのよ」
あははと笑う彼女。屈託のない笑顔は私には少し眩しかった。
談笑しながら食事をしていると横から男子生徒が話しかけてきた、名前は高柳翔太たかやなぎしょうた私と同じくなんの部活にも所属してなく、あまり接点がないが、端正な顔立ちと、人当たりの良さから一定の女子から好意を向けられている。
「小春さんメロンパン買えたんだ、羨ましい。」
「え、あ、うん!いいでしょ…!」
かく言う彼女も彼に行為を向けてる女子の一人だ、女子から見たらわかりやすいが鈍感な男子は気づかないものなんだろうか。
「僕が行った時はコロッケパンしか無かったよ、走ればよかったかなぁ。」
そんなことを呟きながらコロッケパンを頬張り私の対角線に座る彼。
ただの気まぐれか、それとも小春ちゃんに好意があるのかは分からないが何故か3人で昼食を取る事になった。
「しょ、翔太くんもいっつも購買だよね!」
「あぁ、うん朝作る時間が無くてね。やっぱり限界まで寝たいし!料理もそんなに上手じゃないしね」
「そ、そうなんだ!じゃ、じゃあ今度私がお弁当作ってあげる!」
「本当に?それは楽しみにしてるよ!」
そう言って微笑みかける彼、自分への好意を感じながらやってるなこいつ。と思いながら小春ちゃんが幸せそうなので私は空気になって箸を動かす。
「美麗さんはいつもお弁当だよね、なんで?」
さっきと同じ質問が飛んできた。
特に彼と仲良くする予定もないので、何となくだよと返した。
下手に仲良くして小春ちゃんと仲悪くのも嫌だったから、女子の友情は男で壊れるのだ。
その後緊張して1口の大きさが小さくなった小春ちゃんと、ずっと微笑みかけている翔太くんと昼休みを過ごした。
2時間の退屈な授業を乗り越え帰りのホームルームをし、放課後になった。
「美麗また明日ね!行ってくる!」
「はいはーい、部活頑張ってね~」
彼女に軽く手を振り帰宅する生徒や、部活に行く生徒を横目に小説を読み始める。
理由は帰宅ラッシュの時間に1人で帰ってる自分が少し恥ずかしいからだ。
いつも30ページ程読み進めてから帰るようにしている。
静かになった教室内で本を読み進める。
普段うるさく人が多い場所が静かなのは、非日常感があって私は好きだ。
いつも通り規定きていのページを読みようやく帰路につこうと廊下に出る。
階段の所で超有名人と目が合う。
彼女の名前は千束風花せんぞくふうか私より一学年上の生徒で非の打ち所が無い生徒会長、文武両道で見た目も人間性も良く、背中の中ほどまで伸びた綺麗な髪はまるで絹の様だった。
「こんにちは猫屋敷さん」
「え、あ、こんにちは。」
いきなり話しかけられたので驚いてしまった。平凡な私なんかのまして、1学年下の面識の無い生徒の名前など普通覚えてないはずだ。
「いきなりごめんね、驚かしちゃった?猫屋敷っていい苗字よね、特別感があって私は好き。」
そうやって綺麗に笑う彼女。
「でもなんで私なんかの名前を?」
「私なんかって…自分を卑下するのは良くないわ猫屋敷さん。私はこの学校の生徒会長よ?だから、全校生徒の名前と顔くらい覚えてるわ。」
「そうなんですね。」
彼女はやはり完璧だった。普通生徒会長だからと言って全校生徒の顔と名前等覚えない。
私みたいな平凡とは程遠い存在。
「それより猫屋敷さんは今帰り?」
「はい。そうです。」
「この後の予定は?」
「特には無いです。」
「本当!?じゃあ少し付き合ってよ風邪でも浴びに行こうと思ってたんだ!」
そう言って彼女はポケットから屋上の鍵を取りだした。
なんで彼女が鍵を持っているのかは分からないが、屋上で有名人と風を浴びると言う非日常な現象に少し心は踊っていた。
「はい、是非!」
そう言って階段を登り始める。
屋上の扉の前につき、慣れた手つきでドアを開ける。
「よく来るんですか?」
「放課後少し考えたい時とかにね、先生から許可は貰ってるよ!」
そう言って彼女はドアを開ける、夕暮れの空が赤く染ってるのが見えて、なにかセンチメンタルだ。
端まで移動し町を眺める。
すると彼女が前を向いたまま話しかけてくる。
「ねぇ、猫屋敷さん。」
「なんですか?」
「学校は好き?ちゃんと楽しんでる?」
「はい。まぁそこそこに。」
「そっか、それなら良かった。」
少しの沈黙。
少し気まずいので、思ってる事を思わず話してしまった。
「でも学校は少し退屈です。日常が淡々と続くっていう感じで。」
「あ、わかるかも、たまには非日常的な事を味わってみたいよね。」
「はい、本当にそう思います。」
完璧な人でもこう思うのか。
と少し思ってしまった、完璧だからこそ私よりも強くそう思うのかもしれない。
「ねぇ、猫屋敷さん?」
「なんですか?」
「もし、明日に非日常的な事が起きたとしたらどうする?」
「どうするって…」
突拍子もない質問に私は少し考え込む。
「私はその状況を心から楽しむと思います。不謹慎かもしれないですけど。」
「そっか!どんな事でも心から楽しめるのはいいことだね、猫屋敷さん!」
そう言って彼女は体ごとこちらに向け笑った。
先程とは違い無邪気な笑顔だった。
その後そろそろ帰ろっかと言われ、下まで降りお互い帰路に着いた。
別れ際に
「猫屋敷さん、付き合ってくれてありがとう!またお話しようね!」
そう言って彼女は手を振り帰って行った。
私もまた、よろしくお願いします。と言い家へと向かった。
私の家は、両親が海外勤めなので基本誰もいない。
でも別に寂しくは無い。
元より1人の方が好きだからだ。
その後風呂に入り下らないテレビを見て寝る前に少しの本と軽食を食べて寝た。
翌朝目覚まし時計の音で目を覚まし、制服を着て学校へと向かう。
朝の日差しはなく、曇天どんてんであった。
学校につき自分のクラスへと入る。
教室はいつもよりザワザワしていて、どこかみんな浮き足立っている。
8時30分になり担任の先生が入ってくる。
珍しく今日は一斉に皆が静かになった。
開口一番かいこういちばんに先生が
「えー、知ってる奴もいると思うが、昨日うちの生徒が一人亡くなった。」
ザワつく教室内。
「亡くなったのはだ、何か知ってる奴いるか?」
これが私の非日常の幕開けだった。

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