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11話 犬じゃないです。
しおりを挟むご主人様にポスッと音を立てベットの縁に座らされる。相変わらずフカフカだ…
先程までご主人様が優しく背中をさすってくれたので、すっかり落ち着いてきた。帰ってきた時はあまりにも嬉しくて飛びついてしまったが、ご主人様は怪我してないだろうか…
「ノアール、昼ご飯は食べれそうか?何が食べたい」
すぐ隣にご主人様が座ってベットが少し音を立てる。
…ご飯食べてもいいのかな?
ご主人様は殴ってこないし、怒らないし、ご飯だってくれる。いい人…なのかな?
何を食べたいかと聞かれても、今まで残飯しか食べてなかったから良く分からない。
でも昨日のスープは美味しかったな…具がいっぱい入ってて、暖かかった。
「スープ…が食べたい、です?」
…疑問形になってしまった。だってよく分かんないんだもん、
「スープな。他には?」
…他?他にも食べていいの?
……ダメだ、全く思いつかない、そもそも料理自体あまり知らない。
今までの記憶を絞り出してると、1回だけ食べた事のあるアイスクリームを思い出した。
3歳の誕生日…まだ両親が俺を見捨ててなかった時に、ほんの少しだけ食べた事がある。とても甘くて冷たい氷菓子。
「…ア、アイスクリーム食べたいです」
ダメだろうか?
膝の上で手をにぎにぎする。
アイスクリームは一般家庭では食べれないような物だ。値段だって結構する。
「ごめんなさい、やっぱり…!」
高いし、奴隷ごときに食べさせれるような代物じゃない。やっぱり大丈夫です、と言いかけたがご主人様が声を被せてきた。
「ん、アイスクリームな。用意しとこう」
優しく微笑んで、頬を指で優しく撫でてくれる。
…いいの?俺、奴隷なのに…でもアイスクリームが食べれる、嬉しい!
嬉しくてパタパタとしっぽが揺れる。それを見たご主人様に「可愛いくて素直な犬だな」と言われ、笑われてしまった。
…犬じゃないもん、狼だもん
それからご主人様は一階にいるらしい部下の人に電話をしていた。
部下が居るってことはご主人様はやっぱり凄い人なのかもしれない、家だってこんなに大っきい。
ご主人様は部下の人に細く指示を出し、スープの具までも指定し始めた時はちょっとだけびっくりした。
…あと、電話の時は少しだけ声が低く凛としていて、怖いけどとてもカッコよかった。
電話が終わったらしく、ご主人様は電話を切っておもむろに立ち上がるとクローゼットの前へ行き、スーツを脱いでTシャツにズボンを履いたラフな格好に着替えた。
俺はと言うと昨日の風呂で着た、ご主人様のシャツとパンツだけ。ズボンが欲しい……
ご主人様の電話中や着替え中はする事も無く足の裏で絨毯をモフモフして感触を楽しんでいた。
すごくモフモフ…足の裏が溶けちゃいそう、大丈夫かな?足の裏溶けてない?
足を抱え込むようにして足の裏を確認する。
…溶けてない、良かった
「あと30分ほどで昼ご飯が届くから、それまで少し話さないか?」
急に話しかけられたのでびっくりした。慌てて「は、はい!」と返事をして立ち上がりクローゼットの前に居るご主人様の傍に駆け寄った。
オマケ
「なんでさっき足の裏見てたんだ?」
「絨毯がフカフカで…足の裏溶けてないかなって、思って……」
「そうか、溶けてなかったか?(可愛い)」
「溶けてませんでした!」
「良かったな(可愛い)」
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