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6話 新しい家。
しおりを挟む「契約完了ですねぇ。本日はお買い上げありがとうございます、レイド・アスタム様!」
上機嫌な狐の声が部屋に響く。
どうらやご主人様の名前はレイドと言うらしい。
「金は部下に持ってこさせる。帰ってもいいかな?」
「えぇ!勿論でございます、お買い上げありがとうございます!!またのお越しをお待ちしております」
レイド様…ご主人様は立ち上がり隣に座っていた俺の方を向いてきた。疑問に思う暇もなく、そっと優しく脇の下に手を入れられて持ち上げ抱き抱える。
身長は165cmと小柄で、体重も軽い俺は軽々と持ち上げられてしまう。
「わ、…」
急な事だったので驚いて口から小さな声が出てしまった。
そんな俺を見てご主人様は
「驚かせてしまったな、すまない」
と少し申し訳なさそうに謝ってくれた。
すごく、綺麗……
抱き上げられて、上を向かないと見えなかったご主人様の顔がとても近くなり、良く見える。
ルビーのように綺麗な瞳に真っ白な髪と兎の耳、俺が生まれてから1番綺麗だと思った。
ご主人様は俺を軽々と片手で器用に抱いて、空いた片方の手には首輪や手錠に繋がっている鎖を持つ。
抱き上げられ、少し不安定で落ちそうなので、縋るようにご主人様の真っ黒で高そうなスーツの上着に縋り付いてしまう。
しまった、
そう思い慌てて手を離す。
「ん?いいよ、掴まってな」
いいんだ…怒られるかと思った…、でもこんな高そうな服掴まっていいのかな…?
少し葛藤したが落ちるのは嫌なのでシワが出来ないように、そっと服を掴む。
ご主人様は ふっ、と小さな笑みを零して「いい子だ」と言ってくれた
……嬉しくて尻尾が少し揺れちゃった…恥ずかしい、ていうか俺歩けるのになんで抱っこされてるんだろ…?
ご主人様はそのまま歩き出し、扉の前まで移動すると小さな声で何やら魔法呪文を唱え始めた。
俺も4歳までは魔法を学んでいたけど、全く上達せず父様と母様に無理矢理辞めさせられたっけな…唯一使える魔法は水魔法。バケツ一杯分なら何とか出せるぐらいだ。
10秒ほどたって呪文を唱え終わったらしく、ご主人様は扉のドアノブを掴み、開ける。
来た時に通った廊下が見えるはずの扉の向こうは、大きな屋敷の前に繋がっていた。扉を通りゆっくり閉める。
驚いてご主人様の腕の中からドアの方を振り返るも、もうそこには扉は無い。
今の、もしかして転移魔法……?
昔、何かの本で見た事のある高度な魔法であるはずの転移魔法…それを使える者は世界にそう多くない。
…ご主人様ってもしかして凄い人なのかな?
盗み見るようにご主人様の顔を見ると、ご主人様と目が合う
「さぁ、着いた。今からノアールの新しい家になる所だよ」
俺の前の家よりも、ずっと大きな屋敷…ここで俺は暮らすの…?
「……あの、屋根裏部屋ですか?…ち、地下ですか…?」
屋根裏部屋はいいんだ、でも地下だけは嫌だ。暗くて怖くて、檻を思い出してしまう。
ご主人様は一瞬キョトンとしたが、すぐに理解したようで
「屋根裏部屋でも地下でもないよ。ノアールは俺と同じ部屋だけど…嫌か?」
「ぁ……嫌じゃ、無いです」
嫌じゃない、これは本音だ。むしろ1人よりご主人様と一緒かいい…と何故か思ってしまった。
「なら良かった。家に入ったらまず風呂に入ろうか、次に食事だ。」
「はい、」
ご主人様は玄関へと足を進めた。
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