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4話 ご主人様。
しおりを挟む折檻から何日かたったら日、その日のご飯は冷たいけど、シチューと柔らかいパン2切れもあってとても豪華だった。
シチュー…それにパンもある、幸せだ…!
とても美味しくて、つい頬に沢山詰め込んで食べてしまう
シチューとパンはあっと言う間に無くなってしまい残念だが、数日ぶりのちゃんとした食事を取れて、少し元気になって来た。
でも、他の人は普通のご飯だったし…なんで俺だけなんだろ…?
その答えは案外早くに知ることになった。
「坊や、美味しそうなご飯だったねぇ」
食事を終えていつものように檻の隅で丸くなっていると隣の檻の老婆が話しかけて来た。
ここに来て他の捕まった人に話し掛けられるのは初めてだったからとても驚いた。
驚いている俺を無視して老婆は続ける
「知ってるかい?美味し~ぃご飯を食べたら次の日オークションに賭けられちまうんだよぉ?知ってるかい?知ってるかい?ヒヒヒ…」
愉快そうにニヤニヤと話す老婆の顔はしわくちゃで、恐ろしい。
老婆の言葉を聞き、話を理解して顔が青ざめた
『豪華なご飯の者は次の日にオークションに賭けられる』
嘘だと思いたいほど残酷な事を知ってしまった。
「嘘…ぁ……あぁ、」
恐ろしくなり震えと涙が止まらない。
どうか、どうか嘘でありますように、オークションなんて出なくない…怖い、怖いよ…
その日はずっと泣いて、寝れなかった。
時とは無情な物で、きっと朝が来たんだろう。狐の獣人が俺の檻の前にやって来た。
「良かったなぁ、ここから出られるぞぉ?ほら、出ておいで?」
ニヤニヤ笑いながら狐の獣人は檻の扉を開ける
嘘だ、嫌だ、本当にオークションに賭けられるんだ…怖いよ、
「ごめんな、さい…許して…、オークションやだ、やだよぉ…」
檻の隅へ逃げるように行き、震えて丸くなるが狐の獣人はそんな俺の腕をつかみ檻から引きずり出す。
腕を強く握られてとても痛い
「いい子にしてよぉねぇ?ん?それとも魔法で痛い痛いしたいかなぁ?」
あの恐ろしい電流を思い出す。
フルフルと必死に頭を横に振り、小さく「ごめんなさい…」と呟いた。
満足したのか狐の獣人はそれ以上何も言わなかった。
首輪に鎖を繋がれ、連れてこられたのは俺が立っても頭が天井にぶつからず、大分ゆとりのある大きな檻だった。
下にレールが着いていて動かせるようになっている。
中に立たされ檻の鍵を締められる。
ついに、オークションに賭けられるんだ、
恐ろしくて足が震える。立っているのがやっとだ…
そんな俺を狐の獣人と、初めて見る人間達が檻ごと動かして移動させた。
檻ごと着いた場所は小さな舞台の上。下の観客席のような所には100人ほどの人が集まっていて、暗いのでどんな人なのかは全然分からない。
「う……あぁ、…」
俺の頭には恐怖しか無かった。
足は震えるし涙は止まらない。とても情けない姿
「では本日の目玉商品といきましょう!」
マイクを持った狐の獣人が大きな声を出し俺を売り出してきた。
「こちら、狼の獣人でありながら小さく靱やかな体をもったノアールでございます!銀の瞳は勿論、腰まで伸びた銀髪はとても美しく愛玩用にはピッタリですよ!」
観客席からヒソヒソと話し声が聞こえてくる。
「とても従順なので性奴隷にも持ってこい!さぁ、初めは200レルからです!」
待ってましたと言わんばかりに観客席からは「230!」「250レル!」と競り合う声が聞こえてくる。
怖い、売られたあとは?どうなるんだろう
父様にされたみたいに沢山殴られる?性奴隷って言ってたから、犯されるのか?
そんなの嫌だ、怖い、恐ろしい、なんで俺なの
なんで俺が、
馬鹿みたいに体が震えて、足に力が抜けてしまい力なくその場にへたり込んでしまう。
足枷や手錠の鎖が音を立てた。
自分の体を腕で抱え込み、守るようにして震える。
それが今の俺に出来ること。
オークションの競りも終盤に差し掛かってきた。
「603!!」
「出ました603!これ以上だす方は?!」
狐の獣人は気分が上がって興奮いているのか、頬が赤くなっている。
「いませんね!では落札…」
売れたんだ、俺
もうやだ。辛いよ、
「1000」
綺麗な声が観客席から聞こえた。
「ぁ…」
思わず小さく声が出てしまった。それぐらい、綺麗でカッコイイ声。
「1000レル出そう。」
「おぉ!1000レル出ました!!さぁこれ以上は?!!」
「………1000レルで落札です!!」
その後檻から出されて首輪に繋がった鎖を狐の獣人に引っ張られながらどこかへ連れていかれている。
恐怖で竦む足を無理やり動かして狐について行くと、ある部屋の扉の前に連れていかれた。
「この部屋の中にノアールちゃんのご主人様が居るから態度に気をつけてなぁ?」
と言われ必死に頭をコクコクと頷いた。
狐の獣人が部屋をコンコンコンと、3回ノックし扉を開け中に入る。部屋はとても豪華な装飾で、ソファとテーブルが置かれてあった。
大柄の男がそのソファにゆったりと座っている
あの人がご主人様…?
優しそうな目元に、美しい白い髪の毛、頭の上には兎の耳があるから…兎の獣人だろう。
「待ちわびたよ…おいで」
こちらに目線を向かたかと思うと優しく、目を細めて手招きをして来た。
誰に向けておいでと言ってるのかよく分からず立ち尽くしていると「お客様を待たせるな、早く行け!」と狐の獣人が声を掛けてきて、俺の事かとやっと分かった。
いくら綺麗でカッコイイ人でも、恐怖は感じるものだ。
…行きたくない、でも行かなきゃ折檻される、怖い…
少し葛藤したが折檻は嫌だ…ゆっくり足を進めて兎の獣人……ご主人様の目の前に行く。
恐怖でまた目が潤んできた。足だって震えてる
「うん。よく出来たね…名前をお前の口から聞かせてくれないか?」
叩かない…?
優しい口調でゆっくり聞いてくる。
この人は、信用してもいいのかな
「ノ、ノアール…です、」
小さく声を振り絞るとご主人様は目を細め優しく笑った。
「よく言えたな、いい子だ。」
スっと手を俺の顎の下に持ってくる。驚かせないよう、ゆっくり下からすくい上げるように俺の頭を撫でてくれた
優しく、暖かい大きな掌。
撫でられるのなんて10何年ぶりだろ…?
嬉しい、撫でられた、褒められた…気持ちがいい…
「クゥン…」
つい、甘えるような声が出てしまう。
恥ずかしくてすぐ口を噤んだが、ご主人様は嬉しそうに更に俺の頭を撫でた。
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