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2話 売らないで。
しおりを挟むこの間の父様との『訓練』の傷跡もだいぶ治ってきた頃、今日もいつものように朝起きて押し付けられた雑用をする。
そして今は庭の整理をしていた。
薔薇や芝生に水やりをして、雑草を抜く。
…今日は寒いなぁ
まだ3月で指先が寒さでかじかむ。手と手を擦り、息を吹きかけ小さな暖を取りながら作業していた。
指先は真っ赤になっていて、痛い。
しゃがんで、髪は地面につかないよう肩にかけて雑草を抜いていると、俺の前に影が出来た。
影を見上げると上機嫌な父様と知らない狐の獣人がいた。
どうしたんだろう、また殴られるのかな…嫌な予感しかしない、
自然と尻尾が股の間に挟まる。恐る恐る立ち上がり、父様の方を見る。父様はとても大柄で、見上げなければ顔が見れない
「お、お父様…あの、何かお申し付けでも…?」
恐る恐る父様に声をかける。すると後ろの狐の獣人が笑みを浮かべ父様に話しかけた。
「いやぁ、こりゃ上玉ですね!銀色の長い髪の毛、整った顔に狼族でありながら細くしなやかで小さな体!鼻の傷が目立ちますがその手の者に高値で売れますよぉ!」
…え、売る?
頭が真っ白になって血の気が引いてくる。
嘘だ、そんな…売られる?俺が?
「お、お父様!こんな、…冗談ですよね?嘘ですよね、?」
縋るように父様を再び見上げると、口角を上げて笑う父様がいた。
その笑みはゾッとするほど恐ろしく、恐怖のあまり目が潤んでくる。嫌だ、信じたくない
「良かったなノアール、やっと私達の役に立てるぞ」
恐ろしい、血の繋がっているはずの父様が、怖い
「い、嫌!許して、許してください…!どうか、売らないで、頑張ります、頑張りますから!お父様…!」
必死に父様にすがりついて乞うが父様はそんな俺をゴミを見るような目で見て、殴り飛ばしてきた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
「汚らわしい…奴隷となる分際でで私に触れるな」
「お父、様……?」
殴られた頬が痛い。
あぁ、売られたんだ。俺は、家族に売られた、人身売買という罪を犯してでも父様達は俺を捨てたかったんだ
全てを理解してしまった。涙が溢れて止まらない。
足に力が走らなくなって服が汚れるのも気にとめず地面にへたり込んだ。
「ぁ………ぁ、あ……、ぅ……ぁ、」
口からは意味の無い言葉が溢れていた。
「買取金額ですが、25レルでいいですかね?」
「あぁ、充分ですよ」
「契約成立ですねぇ!ありがとうございます」
25レドル、きっとサージュの2ヶ月分のお小遣いほど。
その日俺は25レルで売られた。
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1レル→1万円
1ラド→千円
1リー→100円
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