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1話 泣き虫でごめんなさい。
しおりを挟む俺は昔から、狩りが出来なかった。
「どうしてコレぐらい出来ないんだ!子兎1匹、狩れないなんて狼の獣人として恥ずかしくないのか?!」
日が傾き、空は真っ赤な夕焼けになっている。広い庭の真ん中にぐったりと座り込む俺の目の前に立っている父様は大声で怒鳴って俺を叱った。
「ごめんな、さい…」
目からは止めどなく涙が溢れていて、止まらない。
『兎1匹狩れないグズの為に今日は庭で訓練をするぞ』と、父様に言われたのが朝の9時。そこからずっと飲まず食わずで今の夕方まで動かされていて、声は掠れていた。
ほぼ休憩は無く、午前はひたすら庭を走らされた。足が止まれば魔法で首を強く締められる。午後は小刀を渡され庭に放った子兎を狩れと言われたが、狩ることなんて出来ない。そんな俺を父は魔法でいたぶっていた。
『訓練』と称した暴力に心も体もボロボロだ
「サージュはもう1人で鹿を狩れるんだぞ?!」
サージュ、俺の弟。俺よりも強くて、賢くて、狩りも上手くて、父様にも母様にも愛されてる弟。
俺もサージュみたいに生まれたかった、
「で、出来そこ、ないで…ごめ、んなさ...い」
もう許して、殴らないで、蹴らないで、首を絞めないで。
許しを乞うように、深く深く頭を地面に付け土下座をする。こうしないと、許してくれないんだ。
震えが、涙が止まらない。
尻尾を足の間に隠して、耳を伏せて、必死に父様に懇願した。
「恥ずかしくないのか?…恥さらしめ」
そんな俺を見て満足したのか、はたまた飽きたのか、父様は家の中へ入っていった。
...助かった、
俺の唯一の自慢である腰まで伸ばした銀の髪の毛は土下座のせいで土が付きすっかり汚れている。
「髪…洗わなきゃ…、」
それから家に帰って水道水をたらふく飲んだ。
父様母様サージュ達の残飯を少し食べて、外の庭で水浴びをして、屋根裏部屋の自室の藁の上に布を敷いた寝床に横になる。
サージュは家族で美味しいご飯を食べて、暖かいお風呂に入って、ふかふかベットで寝るんだろうな、
俺も暖かいご飯を家族と食べたい。温かいお風呂だって入りたい、庭の隅っこでやる水浴びは、暗くて怖いしとても寒いんだ。埃臭い屋根裏部屋じゃなくて、普通の部屋で暖かいベットに寝たい。
でも仕方ないんだ、狩りも出来ない俺が全部悪い、俺が狼なのにグズでノロマだから
どんどんネガティブになってきて、じわりと目が潤んでくる。
「明日は笑えますように、明日は殴られませんように。」
これ以上泣きたくない、殴られたくない
小さく呟いて目を閉じた。
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