184 / 184
2章 幼少期編 II
65.岬公園 1
しおりを挟む観光の目玉になっている岬公園の〈岬展望台〉
とんがって突き出ている場所に立つと、障害物がいっさいない海を一望できる名スポットだと聞いている。
海風が凄いので「《危険》手すりにつかまっていないと吹き飛ばされます─自己責任─」という注意喚起は、刺激を欲しがる人々の好奇心を大いにくすぐり、宣伝などせずとも大変な人気を博しているそうだ。
……思うに、沈没する豪華客船タイタニッ…なんとかの映画「私、飛んでるわ」状態になるのではないかと思われる。
「飛んでいった奴っているのか?」
岬公園に近くなると砂利舗装された道になったので、ようやく雑談が出来るようになった。
「ああ、年に数件子供が飛ばされたと報告が上がっている。体が軽いからな」
「シュシュは間違いなく飛ぶな……行くなよ」
向かいに座るベール兄さまにキッと睨まれた。
「行きませんよ。そんなビュービュー風が吹く端っこなんて。空中街道の上より怖いではないですか。それよりベール兄さまはどうなのです? 好きですよね。高いところ」
「……そうだったな」
私の突っ込みに同意したアルベール兄さまは、やんちゃな弟をじろりと見た。
しかし悪戯が成功したかのような笑顔をニヒャッと返されてしまう。
「これを持ってきた」
チャキッと両手を顔の横に掲げる。
そして手にしたそれをカチカチと鳴らす。
なんと、ワンタッチフックであった。
「モジャ眼鏡たちに作ってもらった。見ろ、鎖付きだ」
フィカス・ベンジャミンは〈モジャ眼鏡〉の称号を第三王子から賜った。
「馬鹿者。そのフックは安全帯とセットになっている。服のベルトに付けてもズボンが脱げたらそれまでだ」
アルベール兄さまの言葉に、ベール兄さまの口は「あ」の形になった。
「不名誉な死にざまだなぁ、ベール」
遺体発見。パンツ一丁。
「プーーーーーッ」
「シュシュ! 想像するな!」
手すりに旗めく主なきズボン。
「ふっ……くっ!」
「兄上も!」
「う……うはっ」
赤くなって怒っていたが、ベール兄さまも一拍おいて笑いだした。
「うははははっ!」
どんな場面を想像したのか……
「ふふっ、くくっ、かははっ」
馬車を下りても小火はくすぶり続け……
「シュシューア、来なさい」
しばらくベールは使い物にならないと、アルベール兄さまは私を抱っこ装着した。
「くくくく」
相当ツボっているようだ。
どんな想像したのか知りたい。後で聞いてみよう。
100
お気に入りに追加
1,786
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(37件)
あなたにおすすめの小説
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
とある婚約破棄に首を突っ込んだ姉弟の顛末
ひづき
ファンタジー
親族枠で卒業パーティに出席していたリアーナの前で、殿下が公爵令嬢に婚約破棄を突きつけた。
え、なにこの茶番…
呆れつつ、最前列に進んだリアーナの前で、公爵令嬢が腕を捻り上げられる。
リアーナはこれ以上黙っていられなかった。
※暴力的な表現を含みますのでご注意願います。
婚約破棄され、聖女を騙った罪で国外追放されました。家族も同罪だから家も取り潰すと言われたので、領民と一緒に国から出ていきます。
SHEILA
ファンタジー
ベイリンガル侯爵家唯一の姫として生まれたエレノア・ベイリンガルは、前世の記憶を持つ転生者で、侯爵領はエレノアの転生知識チートで、とんでもないことになっていた。
そんなエレノアには、本人も家族も嫌々ながら、国から強制的に婚約を結ばされた婚約者がいた。
国内で領地を持つすべての貴族が王城に集まる「豊穣の宴」の席で、エレノアは婚約者である第一王子のゲイルに、異世界から転移してきた聖女との真実の愛を見つけたからと、婚約破棄を言い渡される。
ゲイルはエレノアを聖女を騙る詐欺師だと糾弾し、エレノアには国外追放を、ベイリンガル侯爵家にはお家取り潰しを言い渡した。
お読みいただき、ありがとうございます。
王家も我が家を馬鹿にしてますわよね
章槻雅希
ファンタジー
よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。
『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
乙女ゲームで唯一悲惨な過去を持つモブ令嬢に転生しました
雨夜 零
恋愛
ある日...スファルニア公爵家で大事件が起きた
スファルニア公爵家長女のシエル・スファルニア(0歳)が何者かに誘拐されたのだ
この事は、王都でも話題となり公爵家が賞金を賭け大捜索が行われたが一向に見つからなかった...
その12年後彼女は......転生した記憶を取り戻しゆったりスローライフをしていた!?
たまたまその光景を見た兄に連れていかれ学園に入ったことで気づく
ここが...
乙女ゲームの世界だと
これは、乙女ゲームに転生したモブ令嬢と彼女に恋した攻略対象の話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
魔法陣グルグル、めっちゃ嬉しい
(*´艸`*)……コミックもアニメ(ファースト)も大好きなのです。
シュシュのイラスト可愛すぎます…!
この可愛い子がハチャメチャな動きをするだなんて…ギャップ萌…🤭
兄ーズ始めた登場人物のお顔のイメージが定着したので、あのクールなアルベールお兄様の顎乗せを想像してニヤニ…ほっこりしてます笑
シュシュが使う筆記具は羽根ペンからつけペンに進化したけど、未だにインクをぶちまけるのではないのかとソワソワしていますので、早急に鉛筆やボールペンの開発を…!
あと、シュシュは忘れてるかもしれませんが、1章の29話豆乳だよでクレヨンをランド職人長に作ってもらってましたよ…!(コッソリ
うわぁ、本当だ。クレヨン使ってましたね('◇')ゞ
長編だからいつかはやらかすかもと思っておりましたが、そうか、うん、やらかしてしまったかw
修正、修正っと……報告ありがとうございます。
イラストブログの方は、小説が切りのいいところまでいったら、また増やしていきますので、たまにチェックしてくれると嬉しいです(*^▽^*)
……では、またアレなところがありましたらコッソリ教えてくださいませm(__)m
更新をありがとうございます。
相変わらずとってもキュートなシュシューアちゃんにお会い出来て、とても嬉しいです。
イラストもどれも凄く雰囲気があって綺麗ですね。特に王妃様とレイラ様は溜め息が出るくらい美人で何度も見てしまいました✨
そしてベール兄様は、想像していたとおりな感じで可愛くて、シュシューアちゃんと手を繋いでいるイラストがお気に入りです。( *´艸`)
更に想像を超えて物凄くイケメンかつ苦労人だから喧嘩も強い設定のチギラ料理人を応援せずにはいられません(笑)
ファンタジー大賞、微力ながら心より応援しております。
とても素敵な作品ですから、より多くの方に読んでいただけたら、幸せな気持ちになれる方が増えていくのではと思っております。
作者様のペースで、無理のない範囲でシュシューアちゃんの物語を読ませていただけたら嬉しいです。
設定ブログを見ていただけて嬉しいです。今、AIイラストにハマりまくっていますので、これからもガンガンつけ足していきますね(裏設定や番外編風イラストなど)
小説の方も新しい展開を予定しています。今後もよろしくおねがいします。
ファンタジー大賞の5万文字クリアもがんばります。