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2章 幼少期編 II

55.研究院 4

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「なんだこれは……」

頭の上にアルベール兄さまの顎が乗せられた。

「……さぁ」

自動書記もどきで書いた筆記具情報の中に、解明できない絵図があった。
完成図もあるというのに、私にもまったくわからない。
おかしいな、筆記具の情報のはずなんだけどな。

「王女殿下は、こちらを『イティマイバディ、デューブン』と仰っておりました」

書記の人のサポートが入った。

今回は書記の人と分担することが出来たのだ。
私は絵図だけ描いて、口で説明したことを彼が文字越ししたのである。質問されて何度か答えたりもした。

でも答えたのは私ではない。

お花畑が他と繋がっていて、そこは多分日本で、日本人で、生きている人がこちらを視ている。
そしてこれも多分だけど繋がる先はひとつではない。

「お前の行動が媒体先に筒抜けという事か……」

そうアルベール兄さまは唸ったけれど、そんなことはない。

便宜上『媒体の人』と呼んでいるその人たちが〈たまたまこちらを覗いた時〉に〈たまたま私がお花畑にいる〉と、私の状況が〈なんとなく〉わかるようなのです。
それで情報を流してくれるわけなのだけど、たまに何故わからないのかと怒っているのです。わからないものはわからないのです。カタカナの情報はやめてくれと伝えているのに、私の考えは届かないみたい。昨日の失礼な媒体の人も一方的だったしね。ほら、シブメンに乗り換えようとしたあの人。



さて、イティマイバディ……です。

なんでしょうね。



イティマイバディ……

イティマイバデ……

イティマイバ……

イチマイバ……いちまいば……一枚刃……



はうっ!



『一枚刃で充分』!!



日本語か!!



「これは『電動ヒゲ剃り機』です!」

無駄!! 
無駄じゃないけど、便利だろうけど、今はいらないよね。どうしてこんな情報が?……はっ、刀剣繋がり? いや、違う。なんかこう、気持ちがこもっているというか……

まぁいいか。それより、肝心の筆記具は……

書き散らかした藁紙を漁ってみる。

あったーーーっ!


フエルトペン!


「これ、これ、これの説明は何て言ってましたか?」

「インクの成分はこちら……顔料、樹脂、酒精、剥離剤。剥離剤の製法がニホンゴと西大陸語の混合で解読が必要です。このように記録しました」

記録紙をくるりと私に向けて見せてくれた。

私の知らない西大陸語まで口にしていたのね……「媒体の人」に西大陸人らしき存在も出てきました。日本だけじゃなかった。謎が謎を呼ぶ! お花畑の真実とは?!…………解き明かすつもりはありません。

「………」

剥離剤の後に日本語で言うところのカタカナがズラズラ~ッと……ペンに剥離剤を使う理由がわからないんだけど……シリコンが出てきた。ケイ素だよね。シブメンが言っていた屑水晶。アレに何かすると……作り方? ユセイ…油性シリコンポリマー……

「そして、こちらとセットだと仰っていました。金属に釉薬を塗って焼いたものです」

私の描いた絵図を指す。
ただの横型の長方形だ。棒が下に2本ついてるけど。なんだろこれ。

「……釉薬とは何ですか?」

顎乗せが気に入った様子のアルベール兄さまに聞いてみる。

「ガラスのことだ。食器の艶やかな表面がそうだ」

お皿のつるつるの部分。横長の長方形に2本の棒。そこにペンとくれば……



『ホワイトボード』か!!



筆記具と言えば筆記具だけども……あぁ、だからインクに剥離剤か。文字が消せるように。

他のペンもあるかな? ペン、ペン、あった。

「『ブゥルペン』『シャウペン』の構造説明は完璧に記録しました」

文字が一杯並んだファイルを立ててドヤ顔をされた。

ボールペンと、シャープペンね……あら、万年筆がないではないの。

「そのふたつは後回しだ。『イロエンピィツ色鉛筆』と『フエルトペン』を先行させる。水性と油性の両方だ。色はとりあえず黒と赤でいいだろう……フエルトのニードリング知識が役に立つな、シュシューア」

「はいっ! でも色鉛筆は12色お願いします」

後だ後……と、途中で止められてしまった。




どうでもいい設定………………
西大陸語には日本語の様に
”漢字”と”ひらがな(カタカナ)”のようなものがあります。
……………………………………
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