転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ

文字の大きさ
上 下
157 / 186
2章 幼少期編 II

39.建設現場見学ツアー13

しおりを挟む
 
昼休みが終わって、作業員たちが持ち場に就き始めた。

ガーンガーンとかグワシャ~とか重機のモーター音がしないと、建設現場でも騒々しいと感じないものなのですね。一番響くのは掛け声なんだもの……クスクス、野太い声の方が多いのです。筋肉モリモリでちょっと暑苦しい感じもします。そうですね。もうすぐ夏ですからね。暑さ対策をしましょうか。

「熱中症対策」

暑気あたり? 脱水症状? しどろもどろ……言いたいことはわかってもらえた。よかった。
対策の塩飴はコストがかかりそうだけど、とりあえず一度作ってもらって、あとは時間を決めた水分補給ね。建設現場で眩暈なんて起こしたら死んじゃうもの。そのための安全フックなのだけど……はっ、労災は?

「仕事中に怪我をした場合の治療費はどうなりますか? 亡くなってしまったり、怪我の後遺症で働けなくなった場合の補償とか……」

「ある程度の保証は受けられる。それは各ギルドの管轄だな」

「そう、ですか。ギルドが……」

……まずい。
授業でワーナー先生が言っていたような気がする。全然覚えてない。気付かれたらどうしよう。私の授業内容はアルベール兄さまに報告書が上がっているのだ。ぶるる。

「兄上、駅に昇降機は設置するのか?」

ナイス!ちい兄。助け船ではないだろうけど助かったよ!

「当然だ、商品館のあれが最終形態ではないぞ。王都駅の上に複合施設を作るからな。王都側と西側に1基ずつ、そして将来的な構想だが搬入用の設計も始めている」

施設? 駅ビルにでもするのかな?

「複合施設もアルベール商会が作るのですか?」

「う~ん、それがまだ未定なのだ。空中街道が稼働したとしても最初は走行重視だからな。国営と民営の線引きをどこに入れるか、それとも国の管理下で施設は貸し出しのみにするか……」

だが牛耳りたい……と唸るアルベール兄さまの顔は、目をそらしたくなるような暗黒レベルになっている。頭の中では大きな数字が飛び交っているに違いない。

とはいえ、空中街道は戦略的な国家事業なので、商会としてはなかなかに手が出しにくいのだそうだ。
何よりも街道を通すことが大前提であり、緊急性が無い上物は企画の段階でとん挫する可能性もあるのだ。
……いやいやいや、その時はお父さまの執務室で盛大に泣きわめいて…は無理だから、大暴れして駄々をこねまくりますよ。

けどまぁ、駅の施設云々以前に街道のルートで未だに揉めているらしいから、複合施設どころではないのは仕方がないか。
出入口駅インターチェンジを我が領に!』…他領に遅れを取ってはならずと睨み合いが続いているのですって。
『新幹線の駅は是非うちの県に!』みたいなものですかね。

利用料金はまだ決まっていないけど、盗賊や野獣…時には魔獣に襲われる危険と天秤にかけた料金設定にすると、ちらっと耳にした。
障害物がなくて時間の短縮にもなるから、これは絶対に長距離移動の主流になるよね。
だから何としても自領を通ってもらいたい気持ちはわかる。でも兵士の遠征にも使われるから回り道は出来ないのです。

戦争を無事に回避出来たら、枝分かれする街道ジャンクションを作ってもらえるように頼んでみるからね……じゃなくて、先にそれを公表すれば揉めないよね。いや、さすがに偉い人達はもう計画しているか。いや、そうじゃなくて……却下されてるのかも。

「その通りだ。逸れ道を作ると管理が杜撰になる。そこから盗賊が入り込んだら目も当てられん」

……却下されてました。

「保安は……最初は管理員と兵士を駅に常駐させるのが精々だな。いずれ通過料を徴収する場に一旦停止させる仕掛けを作る予定だが、いかに混雑させずにさばくのかが課題になっている」

料金所ですね。

「街道を降りた後の安全は現地の領主に一任だ。恐らく、冒険者ギルドの支店を作ることになるだろう」

駅前支店ですね。

「アルベール兄さま。駅周辺に建物が建つ前に、周回路ロータリーの場所を確保しておいてください。馬車が滑らかに出入りできるようにすると便利ですよ」

「邸宅の馬車寄せのようなものだな。前世の駅前にもあったのか?」

「はい、乗合馬車バスの発着場を兼ねたものがありました。乗り換えがとても楽なのです」

これは高速道路より鉄道駅のイメージですが、いずれ必要になってくるはず。

「時計塔があったら発着の時間がわかって便利ですな」

「じゃぁ、俺は喫茶室でココアを飲んで待つ」

「わたくしはお土産屋さんを巡りながら待ちます」

「飯屋も必要だろう。駅でチャーハンを広めるといい」

「王都駅名物『コメ麦飯店』……アルベール兄さま、出店しましょう!」

馬車利用のうちは"ドライブイン"や"道の駅"みたいになるのかしら。わくわく。

「王都駅の複合施設は、各方面の事務所がほとんどだと思うのだが……」

アルベール兄さまが無粋な横やりを入れてくる。
自分でもわかっているのか、語尾が小さくなっていた。

「勿体ないですよ。そんなもの西側の余った土地に、共同会屋ビルでも建てておけばいいのです」

「ニッポンでもそうだったのか?」

「鉄道の駅はそうでした。車道としての駅は、元々は御者たちドライバー休憩所ドライブインだったのですが、休憩所そのものが行楽地になっていきました。凄い人気でしたよ。人気がありすぎて渋滞するという……あ~、そうでした、渋滞……」

高速道路が渋滞したら高速道路の存在意義が、という兼ねてからの疑問点があったねぇ。
……道の駅はだめそうだ。がっかり。

「でもでもアルベール兄さま、せめて街道利用者のためだけの、休憩室と軽食の売店を」

「まだ未定だと言っている。だが問題点があるようだな、先に聞いておこう」

そう改めて言われると、う~ん……そもそも私は電車派だったから車道に詳しくないし。

事故が起こった時の非常駐車帯は……一応言っておくか。
違反行為も決めておいた方がいいかも。追い越し禁止、煽り運転禁止、速度規制…?

電車は、電車の駅は……"駅ナカ"と"駅チカ"で、現地商店との訴訟があったよね。
あ、駅がまだ出来てないから駅前商店街がないか。いやいや、その前に電車通勤ありきの思考やめいっ。毎日駅を利用する人なんていないからっ。利用する人作っちゃいけないからっ。満員電車反対!

あ~でも、そうなると駅のショッピングモールはどうなる……王都駅だけでも作れないかなぁ~。

「そうだな、現実的ではない問題だが、記録は残しておこう……で『えきべん』とは何だ?」

アルベール兄さまがニヤリと笑う。

「……そんなこと言いましたか?」

「言ってたぞ。旨そうな顔してた。"べん"ってことは『オトー』の仲間だな?」

鋭いですね、ベール兄さま。

「そうです。"えき"はドルンの事で、駅でしか売っていない携帯食を『駅弁』と言います。馬車内では食事をする習慣はないようですけど、揺れの少ない…少ないはずの鉄道の車内では、落ち着いて食事が出来るのです。竹皮に包んだ"おにぎり"と"調理パン"から販売してみたいですね」

プラットホームでの立ち売りがいいかしら。それとも車内販売? いずれは食堂車?……おっと、空中街道の建築はまだ始まったばかりでしたね。クールダウ~ン♪



建設現場の追加案はもう出てこなかったので、午後は回転台車で特別に遊ばせてもらった。
地面に平置きしてもらって、私とベール兄さまが運ばれるのだ。私は両手を取られた補助付きエスコートであります。

「あまりにも長い廊下には、人間用のこれがありました」

水平エスカレーターのことです。
アルベール兄さまに『必要ない』と速攻却下された。


水平台車の初代は手回しハンドル、次代は足踏み回し車、そして私が生まれる前から魔導具として定着したと、現場監督が教えてくれたところで撤収の合図が出された。

楽しかった~。また来たいで~す。ダメだって~。

採石場にも行きたいとねだったけど、遠いうえに罪人の労役場だから、それこそダメだと却下されちゃった。

まぁ、今そこに行っても大した案は出せないので、粘りませんがね……ふっ、ふふっ。


黒色火薬が出来上がったら驚かせて差し上げますわ。


岩壁に筒穴掘って、詰め込んでダーーーン!!

適度な大きさに破砕して運びやすくするのです。
昔は発破って言ったっけ? 今も?





………………………………
社会科見学は終了です。
お疲れさまでした(^▽^)
………………………………
しおりを挟む
感想 38

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

どうやら悪役令嬢のようですが、興味が無いので錬金術師を目指します(旧:公爵令嬢ですが錬金術師を兼業します)

水神瑠架
ファンタジー
――悪役令嬢だったようですが私は今、自由に楽しく生きています! ――  乙女ゲームに酷似した世界に転生? けど私、このゲームの本筋よりも寄り道のミニゲームにはまっていたんですけど? 基本的に攻略者達の顔もうろ覚えなんですけど?! けど転生してしまったら仕方無いですよね。攻略者を助けるなんて面倒い事するような性格でも無いし好きに生きてもいいですよね? 運が良いのか悪いのか好きな事出来そうな環境に産まれたようですしヒロイン役でも無いようですので。という事で私、顔もうろ覚えのキャラの救済よりも好きな事をして生きて行きます! ……極めろ【錬金術師】! 目指せ【錬金術マスター】! ★★  乙女ゲームの本筋の恋愛じゃない所にはまっていた女性の前世が蘇った公爵令嬢が自分がゲームの中での悪役令嬢だという事も知らず大好きな【錬金術】を極めるため邁進します。流石に途中で気づきますし、相手役も出てきますが、しばらく出てこないと思います。好きに生きた結果攻略者達の悲惨なフラグを折ったりするかも? 基本的に主人公は「攻略者の救済<自分が自由に生きる事」ですので薄情に見える事もあるかもしれません。そんな主人公が生きる世界をとくと御覧あれ! ★★  この話の中での【錬金術】は学問というよりも何かを「創作」する事の出来る手段の意味合いが大きいです。ですので本来の錬金術の学術的な論理は出てきません。この世界での独自の力が【錬金術】となります。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

処理中です...