153 / 184
2章 幼少期編 II
35.建設現場見学ツアー9
しおりを挟む「万物に感謝を」
久しぶりに本気で感謝しますよ。お弁当、お弁当、嬉しいなぁ♪
まずは手を拭くところから始めます。
テーブルの一人ひとりの前に、おしぼりの受け皿が置かれていますからね。
おしぼりが初めてのルエ団長も、特に戸惑わずに流れで手を拭いていました。
おにぎりは竹皮に包んで食べてもいいですが、手づかみの方が何倍も美味しく感じられるので、習慣にしてくださいね。
「旨ぁーーーっ!」
このベール兄さまの魂の叫びを聞いたのは久しぶりです。
食べ慣れているものでも、外で食べると一味違いますよね(じゃこおにぎりを食べています)
「俺は…「私だ」私は、このチャーハンがたまらなく好きだ」
シブメン……ルエ団長が言う人称に、いちいちチェックを入れるのはなぜ?
「アルベール兄上、団長を離宮の昼食に招待して差し上げたらどうでしょう。炒めたてのチャーハンを団長にも食べていただきたいのです」
おぉ、ルエ団長の前だと、ベール兄さまの言葉使いが王子っぽい。
「チギラと相談して日を決めなさい。しかしルエ団長には招待の条件を出そう……と言っても、食後の腹ごなしにベールの剣の指導を行うというものだがな。普段教えている騎士剣ではない、小柄な体に合う独特の剣術があるのだろう?」
ベール兄さまが前から習いたいと言っていたアレだ。
「あれは対魔獣用だが、習いたいか?」
ルエ団長は、アルベール兄さまからベール兄さまに視線を移す。
一応お伺いを立てているが、食べる気満々の顔をしているので絶対に来ることになるだろう。
ベール兄さまは瞳を輝かせて『ぜひっ!』と姿勢を正した。
近頃は近衛騎士団長としての職務が忙しくて、稽古をつけてもらう日が減った……とブチブチ言っていたのを離宮メンバーはみんな知っている。
でも、New技の取得にはチャーハンの時だけの指導では足りませんよね。もっと頻繁に来てもらうには………
「ベール兄さま、チャーハンにはいろんな種類がありますので、チャーハンの日をつくりませんか? わたくし、急にレタスチャーハンとあんかけチャーハンが食べたくなりました」
『よく言った、シュシュ!』『おまかせあれ!』視線での会話が成立した。
この際だから、味付きご飯は全部チャーハンにしてしまおう。チキンライスもピラフもね……むむっ、パエリアも食べたくなったぞ。サフランを探してもらわねば。
「冷めたアゲルは初めて食べましたが、なかなか旨いものですな」
シブメンが食べたのは若鳥のから揚げだ。
「衣がしんなりしてるエビフライも旨いぞ」
うんうん。サクサクでなくとも、これはこれなのです。
「なるほど、シュシューアの言う『オベントウ』と携帯食の違いがわかった」
アルベール兄さまは、煮物の蓮根の噛み応えが気に入ったようだ。
「確かに……これじゃ遠征には持って行けないな」
はい、ルエ団長。お弁当の賞味期限は当日に限らせていただきます。
「私の前世で、甘い卵焼きは、有りか無しかの論争がありましたが、皆さんはいかがですか?」
「これは酢飯の上に乗っていたものだろう? ”有り”だ」
アルベール兄さまが即答した。
「白米のおかずにはなりませんが、これ単品なら”有り”ですな」
なるほど、参考になります。
「どっちも旨いぞ」
それは参考になりません。
「プリンと同じようなものだろ?」
ルエ団長はスイーツと判断したようです。
そしてその言葉に、男性陣は目から鱗な顔をしたのだった。
プリンとご飯の組み合わせに、私だけはグエッとなった。
「「「…うっす!」」」
なんか、大勢の声が聞こえた。
見るとこちらの天幕に向かって、現場監督他一同、横並びになって頭を下げていた。
アルベール兄さまは軽く手を上げてそれに答えた。
「……なんですか?」
「食事を用意したからな。彼らなりの”万物に感謝を”だろう」
あぁ『いただきます』と言ったのか。
現場の皆さん、ここにリボンくんがいなくて良かったですね。クスクス。
「王女殿下、賃金が支払われている先に慰労など必要ありません。間違えて覚えてはいけませんぞ」
シブメンが首を振りながら、最後の唐揚げにフォークを刺した。
「ゼルドラ、慰労は大事だぞっ。俺は大歓迎だっっ…っ」
ルエ団長が唐揚げを持つシブメンの手を掴んだ。当然シブメンは抵抗する。
「現場に差し入れは、父上が好きだからなぁ」
そう言いながら、ベール兄さまも唐揚げを狙っている。
「コメの知名度を上げるためだ。ただの差入れではないぞ」
アルベール兄さまは、ラス2のから揚げを確保済みである。
ちなみに現場に差し入れされたのは、”じゃこ”と”ツナマヨ”のおにぎりだ。
手間と高級食材は省かれたのね。
そうそう、品種改良されたお米ならぬ新種の麦は『コメ麦』というややこしい名前になっています。もち米は『モチ麦』ね。
麦、麦……う~、麦チョコも食べたくなってきたな。
けど、あれはポップコーンのような可愛らしい弾け方じゃないからなぁ。怖くて作れないなぁ。
「ベール兄さま、あ~ん」
私も唐揚げのラス3を確保してあったのだ。ちい兄に初あ~んです。ぱくっといかれた。さっきは嫌そうにしてたのにね。照れた顔が見たかったぞ。
………続く
75
お気に入りに追加
1,798
あなたにおすすめの小説
【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜
白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」
即位したばかりの国王が、宣言した。
真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。
だが、そこには大きな秘密があった。
王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。
この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。
そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。
第一部 貴族学園編
私の名前はレティシア。
政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。
だから、いとこの双子の姉ってことになってる。
この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。
私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。
第二部 魔法学校編
失ってしまったかけがえのない人。
復讐のために精霊王と契約する。
魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。
毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。
修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。
前半は、ほのぼのゆっくり進みます。
後半は、どろどろさくさくです。
小説家になろう様にも投稿してます。
【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜
白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。
舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。
王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。
「ヒナコのノートを汚したな!」
「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」
小説家になろう様でも投稿しています。
妹だけを可愛がるなら私はいらないでしょう。だから消えます……。何でもねだる妹と溺愛する両親に私は見切りをつける。
しげむろ ゆうき
ファンタジー
誕生日に買ってもらったドレスを欲しがる妹
そんな妹を溺愛する両親は、笑顔であげなさいと言ってくる
もう限界がきた私はあることを決心するのだった
投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。
七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」
リーリエは喜んだ。
「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」
もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!
Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜!
【第2章スタート】【第1章完結約30万字】
王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。
主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。
それは、54歳主婦の記憶だった。
その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。
異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。
領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。
1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します!
2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ
恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。
<<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる