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2章 幼少期編 II

35.建設現場見学ツアー9

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「万物に感謝を」

久しぶりに本気で感謝しますよ。お弁当、お弁当、嬉しいなぁ♪

まずは手を拭くところから始めます。
テーブルの一人ひとりの前に、おしぼりの受け皿が置かれていますからね。
おしぼりが初めてのルエ団長も、特に戸惑わずに流れで手を拭いていました。
おにぎりは竹皮に包んで食べてもいいですが、手づかみの方が何倍も美味しく感じられるので、習慣にしてくださいね。

「旨ぁーーーっ!」

このベール兄さまの魂の叫びを聞いたのは久しぶりです。
食べ慣れているものでも、外で食べると一味違いますよね(じゃこおにぎりを食べています)

「俺は…「私だ」私は、このチャーハンがたまらなく好きだ」

シブメン……ルエ団長が言う人称に、いちいちチェックを入れるのはなぜ?

「アルベール兄上、団長を離宮の昼食に招待して差し上げたらどうでしょう。炒めたてのチャーハンを団長にも食べていただきたいのです」

おぉ、ルエ団長の前だと、ベール兄さまの言葉使いが王子っぽい。

「チギラと相談して日を決めなさい。しかしルエ団長には招待の条件を出そう……と言っても、食後の腹ごなしにベールの剣の指導を行うというものだがな。普段教えている騎士剣ではない、小柄な体に合う独特の剣術があるのだろう?」

ベール兄さまが前から習いたいと言っていたアレだ。

「あれは対魔獣用だが、習いたいか?」

ルエ団長は、アルベール兄さまからベール兄さまに視線を移す。
一応お伺いを立てているが、食べる気満々の顔をしているので絶対に来ることになるだろう。

ベール兄さまは瞳を輝かせて『ぜひっ!』と姿勢を正した。
近頃は近衛騎士団長としての職務が忙しくて、稽古をつけてもらう日が減った……とブチブチ言っていたのを離宮メンバーはみんな知っている。

でも、New技の取得にはチャーハンの時だけの指導では足りませんよね。もっと頻繁に来てもらうには………

「ベール兄さま、チャーハンにはいろんな種類がありますので、チャーハンの日をつくりませんか? わたくし、急にレタスチャーハンとあんかけチャーハンが食べたくなりました」

『よく言った、シュシュ!』『おまかせあれ!』視線での会話が成立した。

この際だから、味付きご飯は全部チャーハンにしてしまおう。チキンライスもピラフもね……むむっ、パエリアも食べたくなったぞ。サフランを探してもらわねば。



「冷めたアゲルは初めて食べましたが、なかなか旨いものですな」

シブメンが食べたのは若鳥のから揚げだ。

「衣がしんなりしてるエビフライも旨いぞ」

うんうん。サクサクでなくとも、これはこれなのです。

「なるほど、シュシューアの言う『オベントウ』と携帯食の違いがわかった」

アルベール兄さまは、煮物の蓮根の噛み応えが気に入ったようだ。

「確かに……これじゃ遠征には持って行けないな」

はい、ルエ団長。お弁当の賞味期限は当日に限らせていただきます。



「私の前世で、甘い卵焼きは、有りか無しかの論争がありましたが、皆さんはいかがですか?」

「これは酢飯の上に乗っていたものだろう? ”有り”だ」

アルベール兄さまが即答した。

「白米のおかずにはなりませんが、これ単品なら”有り”ですな」

なるほど、参考になります。

「どっちも旨いぞ」

それは参考になりません。

「プリンと同じようなものだろ?」

ルエ団長はスイーツと判断したようです。
そしてその言葉に、男性陣は目から鱗な顔をしたのだった。


プリンとご飯の組み合わせに、私だけはグエッとなった。






「「「…うっす!」」」

なんか、大勢の声が聞こえた。
見るとこちらの天幕に向かって、現場監督他一同、横並びになって頭を下げていた。

アルベール兄さまは軽く手を上げてそれに答えた。

「……なんですか?」

「食事を用意したからな。彼らなりの”万物に感謝を”だろう」

あぁ『いただきます』と言ったのか。
現場の皆さん、ここにリボンくんがいなくて良かったですね。クスクス。

「王女殿下、賃金が支払われている先に慰労など必要ありません。間違えて覚えてはいけませんぞ」

シブメンが首を振りながら、最後の唐揚げにフォークを刺した。

「ゼルドラ、慰労は大事だぞっ。俺は大歓迎だっっ…っ」

ルエ団長が唐揚げを持つシブメンの手を掴んだ。当然シブメンは抵抗する。

「現場に差し入れは、父上が好きだからなぁ」

そう言いながら、ベール兄さまも唐揚げを狙っている。

「コメの知名度を上げるためだ。ただの差入れではないぞ」

アルベール兄さまは、ラス2のから揚げを確保済みである。

ちなみに現場に差し入れされたのは、”じゃこ”と”ツナマヨ”のおにぎりだ。
手間チャーハン高級食材味噌&たらこは省かれたのね。

そうそう、品種改良されたお米ならぬは『コメ麦』というややこしい名前になっています。もち米は『モチ麦』ね。

麦、麦……う~、麦チョコも食べたくなってきたな。
けど、あれはポップコーンのような可愛らしい弾け方じゃないからなぁ。怖くて作れないなぁ。

「ベール兄さま、あ~ん」

私も唐揚げのラス3を確保してあったのだ。ちい兄に初あ~んです。ぱくっといかれた。さっきは嫌そうにしてたのにね。照れた顔が見たかったぞ。



………続く
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