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2章 幼少期編 II
33.建設現場見学ツアー7
しおりを挟む巨石造りの諸々に納得した後『怖いので下におりたいです』…と、正直にビビりを打ち明けて階段に向かった。
来た時と同様に敷いてある板の上を歩いているけれど、板の位置がちょこっとずれちゃったみたいでベコベコするから、ゆっくりと、確実に、一歩一歩は必須だ。
ベール兄さまから『いてて』と聞こえたけれど、握りしめた手から力は抜きません。階段を下りきるまでは。絶対に。
よしっ、膝を少し曲げて足を広げて歩くと安定するね。ガニ股になっているのはこの際気にしないことにする。安全第一だ。
来るときは前を歩いていたアルベール兄さまが、後ろで吹いているけど気にしない。文句を言っている余裕は私にはないのだ。これから危険な階段に挑むのですから。
一歩、一歩……下りはちょっと、いや、かなり怖い、ですね。しっかりしろ、足!
地面に足をつけるまでは、地面に足をつけるまでは、地面に足をつけるまでは、地面に………
………あぁ、そうだった。
私、歩道橋の階段から落ちて死んだんだっけ……
屋根がない高所が怖いはずだ。
落ちた時は痛かったもんね。
なぁんだ、そういうことかぁ。
ぽすっ。愛しの地面に到着ぅ。人とは大地を踏みしめる者なり!──お、カッコいいフレーズだ。このタイトルで曲を作ってみようかな。
…………ズゥゥゥゥ~ン♪で始めて、太鼓のトン、トン、トン……トーン♪ ババァーーーン♪ ドゥ~ドドゥ~ドゥ~ドドゥ~ルルル~……♪ 雷音挿入バリバリバリーッ! 雨音ポツ、ポツポツ、ポツポツポツ……ザァァァーーーッ……しばらく無音で……笛っピロロ~、ピロピロロ~♪……
『ベール、覚えておいてやれ』『りょ~かい』なんか聞こえるけど、気にしな~い。トルゥ~トット~。
歌いながらベール兄さまとダンスを踊った。
踊ったことがない振り付けはベール兄さまのリードでクルクルタンタン! 周囲からの手拍子がいい感じでリズムが取りやすくなった。
ババン、バン、ババン♪
歌もダンスも終了! 拍手喝采!
ベール兄さまが周囲に向かって礼をする。
はっ、私も。ダンスの礼は会釈とは違うのだ。パートナーと手を取り合っていない方の手を横に広げて、腰を落としてお辞儀よ。
うふふふふふ~、お花畑に往くのとは違うふわふわ~。楽しかった~。
アルベール兄さまも目を丸くして拍手を送ってくれている。嬉しい。
「シュシューア、歌がうまくなったな」
わぁい、マガルタル楽士のおかげです。
「ベールも、意外な才能を見せてもらったぞ。足さばきが素晴らしい」
やった、ベール兄さまも褒められた。
「剣技に長けてくると、舞踊も光ってくるんだ。ベール王子は強くなるぞ」
ルエ団長が嬉しそうに太鼓判を押してくる。弟子自慢ですね。
チラッと見たベール兄さまは、ちょっと照れて肩をすくめていた。
憧れの人に褒められたらそうなっちゃいますよね。私も、リボンくんが会いに来てくれたら歌を聞いてもらおうかなぁ。
………続く
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