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2章 幼少期編 II

28.建設現場見学ツアー2

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「すげーー-っ!」

先に馬車を降りたベール兄さまは、興奮して両腕を振り上げた。

私も、私も、早く見たい!

アルベール兄さまにバタバタと手を伸ばして、早く降ろしてと催促する。

「おおぉーーっ!」

目の前には空中街道の『王都駅』…の造りかけがバーーーンと!

私の専用軽馬車アルシュより大きな石が積みあがっていて凄い迫力!
こんな巨石が使われた建築物は前世でも見たことがない。上階はまだ壁も屋根もないのがちょっと寂しいけど、円弧階段の迫力だけでもおつりがくる。見学しに来た甲斐があるというものだ。

どれどれ、よく見せてもらいますよ。馬車用のスロープはどこかしら。足場が邪魔ね。あら、足場って異世界でも同じ作りなのね。面白そう、もっと近くで……

「ベール、シュシューアと手を繋いでおけ。逃がすなよ」

「了解!」

何ですか、ワンコがどこかに行かないように、みたいな言い方は。

さっさと私をベール兄さまに引き渡し、現場監督の元に行ってしまった長兄の背を睨む。

「なるほど、これは壮観な眺めですな」

いつの間にか馬車を降りていたシブメンが満足そうに首を巡らせた。

「ヨーン領の魔素溜りの蓋を思い出すな。お前あの時、石工やってたろ? 手伝ってやったらどうだ」

ルエ団長も降りてきた。
シブメンとは幼馴染だそうで、あ、お父さまもね、とっても気安い仲なのだ。

「ゼルドラ魔導士長は、石の加工ができるのですか?」

若いころアルバイトでもしてたのかな?

「王女殿下、砂の連結をお忘れですかな?」

あぁ、砂をくっつけるやつ。ちょっとは出来るようになりましたよ。3秒ぐらい……ん? それって石同士をを連結させるってこと? モルタル要らずってこと? わぁ!

「ぜひぜひ、やるところを見せてくださいませ!」

「私ではなく、現場の魔導士の仕事を見学すればよろしい」

「ケチケチするなよ。王女のご所望だぞ、見せてやれ」

「ふん」

本当に仲が良いおじさんたちです。

「シュシュ、そんなことよりあっちだ。見ろよ!」

ベール兄さまが私の手を引いて、馬車の陰になっている先を指さす。

「うわぁ~」

アーチ型の柱が何本も、ずずずい~っと先が見えないほど北に延びていていた。
上物より横に伸ばす作業が先に進められているとは聞いていたけど、ここまで進んでいるとは!
私のご褒美がきちんと形になっていて嬉しいです。ありがとう、お父さま!

せっかくだから建築の凄さを讃えちゃおうかな。
ひと~つ、何トンもあるような巨大な石がみんな同じ大きさなのです。ふた~つ、互い違いに歪みなしに積まれているいるのです。み~っつ、地面の下の基礎なんか上の巨石の何倍もの大きさなのです。相当大きな荷馬車じゃないと運べませんよね。よ~っつ……あ、アーチの型枠発見! アーチが始まる部分の出っ張りに枠の一部が固定されています。あの出っ張りは単なる飾りではなかったのですね。考えたこともなかったよ。

「ら~ん♪ らら~ん♪」

郷土資料館に来ている気分だ。
コンクリートでも鉄製でもないもの……ローマの水道橋のように何千年も先の未来まで残る建造物……浪漫だ~♪ ローマのロマンがローマ風呂~♪

「シューシュッ」

ベール兄さまが繋いでる手を大きく振った。
うっ、睨んでる。ちょっと往きそうになってたのがバレた。えへへ~。


それにしても、どうやってあの巨石を上まで運んだのだろう。
クレーンに代わる重機は見当たらないし……どう見てもベルトコンベアーにしか見えない魔導具と、他は手押し車に、手押し車に、いろんな形の手押し車……あれ? マジでベルトコンベアーしかないの? え~……

「……あ、測量してる」

見に行こうとしたらグイッとなった。ベール兄さまと手を繋いでいるのを忘れてた。

「勝手にどこか行くな。今日は絶対手を離さないからな」

「え~、ずっと手を繋いでいたら昼食の時はどうするのですか? ア~ンしますか? そういえば、ベール兄さまとア~ンしたことありませんでしたね。ぷふふ」

「俺に食べさせて欲しいのか?」

ベール兄さまの目が胡乱としている。

「俺にア~ンしたいのか?」

……ん?

「俺にア~ンされたいのか?」

えっと、調子狂うな。ルベール兄さまみたいにメロってくれない。面白くない……ふんっ! 足を踏んでやる!

「いてっ」

「あだっ」

報復にほっぺを捻りあげられた。

このこのこの!
あいたたたた!

「やめなさい、シュシューア!」

アルベール兄さまの叱責が飛んできた。なぜ私だけ?

「ば~か」

ベール兄さまがムカつく嗤い方を! うぐぐぐ、ぐやじぃ~っ。

「ほら、行くぞ」

ぶぅぅぅぅ、手を引かれたので嫌々ついていく。アルベール兄さまがみんなに集合をかけたのです。ぶぅぅぅぅ。ぶぅぅぅぅ。ぶぅぅぅぅ。




………続く
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