上 下
146 / 184
2章 幼少期編 II

28.建設現場見学ツアー2

しおりを挟む
 
「すげーー-っ!」

先に馬車を降りたベール兄さまは、興奮して両腕を振り上げた。

私も、私も、早く見たい!

アルベール兄さまにバタバタと手を伸ばして、早く降ろしてと催促する。

「おおぉーーっ!」

目の前には空中街道の『王都駅』…の造りかけがバーーーンと!

私の専用軽馬車アルシュより大きな石が積みあがっていて凄い迫力!
こんな巨石が使われた建築物は前世でも見たことがない。上階はまだ壁も屋根もないのがちょっと寂しいけど、円弧階段の迫力だけでもおつりがくる。見学しに来た甲斐があるというものだ。

どれどれ、よく見せてもらいますよ。馬車用のスロープはどこかしら。足場が邪魔ね。あら、足場って異世界でも同じ作りなのね。面白そう、もっと近くで……

「ベール、シュシューアと手を繋いでおけ。逃がすなよ」

「了解!」

何ですか、ワンコがどこかに行かないように、みたいな言い方は。

さっさと私をベール兄さまに引き渡し、現場監督の元に行ってしまった長兄の背を睨む。

「なるほど、これは壮観な眺めですな」

いつの間にか馬車を降りていたシブメンが満足そうに首を巡らせた。

「ヨーン領の魔素溜りの蓋を思い出すな。お前あの時、石工やってたろ? 手伝ってやったらどうだ」

ルエ団長も降りてきた。
シブメンとは幼馴染だそうで、あ、お父さまもね、とっても気安い仲なのだ。

「ゼルドラ魔導士長は、石の加工ができるのですか?」

若いころアルバイトでもしてたのかな?

「王女殿下、砂の連結をお忘れですかな?」

あぁ、砂をくっつけるやつ。ちょっとは出来るようになりましたよ。3秒ぐらい……ん? それって石同士をを連結させるってこと? モルタル要らずってこと? わぁ!

「ぜひぜひ、やるところを見せてくださいませ!」

「私ではなく、現場の魔導士の仕事を見学すればよろしい」

「ケチケチするなよ。王女のご所望だぞ、見せてやれ」

「ふん」

本当に仲が良いおじさんたちです。

「シュシュ、そんなことよりあっちだ。見ろよ!」

ベール兄さまが私の手を引いて、馬車の陰になっている先を指さす。

「うわぁ~」

アーチ型の柱が何本も、ずずずい~っと先が見えないほど北に延びていていた。
上物より横に伸ばす作業が先に進められているとは聞いていたけど、ここまで進んでいるとは!
私のご褒美がきちんと形になっていて嬉しいです。ありがとう、お父さま!

せっかくだから建築の凄さを讃えちゃおうかな。
ひと~つ、何トンもあるような巨大な石がみんな同じ大きさなのです。ふた~つ、互い違いに歪みなしに積まれているいるのです。み~っつ、地面の下の基礎なんか上の巨石の何倍もの大きさなのです。相当大きな荷馬車じゃないと運べませんよね。よ~っつ……あ、アーチの型枠発見! アーチが始まる部分の出っ張りに枠の一部が固定されています。あの出っ張りは単なる飾りではなかったのですね。考えたこともなかったよ。

「ら~ん♪ らら~ん♪」

郷土資料館に来ている気分だ。
コンクリートでも鉄製でもないもの……ローマの水道橋のように何千年も先の未来まで残る建造物……浪漫だ~♪ ローマのロマンがローマ風呂~♪

「シューシュッ」

ベール兄さまが繋いでる手を大きく振った。
うっ、睨んでる。ちょっと往きそうになってたのがバレた。えへへ~。


それにしても、どうやってあの巨石を上まで運んだのだろう。
クレーンに代わる重機は見当たらないし……どう見てもベルトコンベアーにしか見えない魔導具と、他は手押し車に、手押し車に、いろんな形の手押し車……あれ? マジでベルトコンベアーしかないの? え~……

「……あ、測量してる」

見に行こうとしたらグイッとなった。ベール兄さまと手を繋いでいるのを忘れてた。

「勝手にどこか行くな。今日は絶対手を離さないからな」

「え~、ずっと手を繋いでいたら昼食の時はどうするのですか? ア~ンしますか? そういえば、ベール兄さまとア~ンしたことありませんでしたね。ぷふふ」

「俺に食べさせて欲しいのか?」

ベール兄さまの目が胡乱としている。

「俺にア~ンしたいのか?」

……ん?

「俺にア~ンされたいのか?」

えっと、調子狂うな。ルベール兄さまみたいにメロってくれない。面白くない……ふんっ! 足を踏んでやる!

「いてっ」

「あだっ」

報復にほっぺを捻りあげられた。

このこのこの!
あいたたたた!

「やめなさい、シュシューア!」

アルベール兄さまの叱責が飛んできた。なぜ私だけ?

「ば~か」

ベール兄さまがムカつく嗤い方を! うぐぐぐ、ぐやじぃ~っ。

「ほら、行くぞ」

ぶぅぅぅぅ、手を引かれたので嫌々ついていく。アルベール兄さまがみんなに集合をかけたのです。ぶぅぅぅぅ。ぶぅぅぅぅ。ぶぅぅぅぅ。




………続く
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

前世持ち公爵令嬢のワクワク領地改革! 私、イイ事思いついちゃったぁ~!

Akila
ファンタジー
旧題:前世持ち貧乏公爵令嬢のワクワク領地改革!私、イイ事思いついちゃったぁ〜! 【第2章スタート】【第1章完結約30万字】 王都から馬車で約10日かかる、東北の超田舎街「ロンテーヌ公爵領」。 主人公の公爵令嬢ジェシカ(14歳)は両親の死をきっかけに『異なる世界の記憶』が頭に流れ込む。 それは、54歳主婦の記憶だった。 その前世?の記憶を頼りに、自分の生活をより便利にするため、みんなを巻き込んであーでもないこーでもないと思いつきを次々と形にしていく。はずが。。。 異なる世界の記憶=前世の知識はどこまで通じるのか?知識チート?なのか、はたまたただの雑学なのか。 領地改革とちょっとラブと、友情と、涙と。。。『脱☆貧乏』をスローガンに奮闘する貧乏公爵令嬢のお話です。             1章「ロンテーヌ兄妹」 妹のジェシカが前世あるある知識チートをして領地経営に奮闘します! 2章「魔法使いとストッカー」 ジェシカは貴族学校へ。癖のある?仲間と学校生活を満喫します。乞うご期待。←イマココ  恐らく長編作になるかと思いますが、最後までよろしくお願いします。  <<おいおい、何番煎じだよ!ってごもっとも。しかし、暖かく見守って下さると嬉しいです。>>

全能で楽しく公爵家!!

山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。 未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう! 転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。 スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。 ※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。 ※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。

【完結】白い結婚で生まれた私は王族にはなりません〜光の精霊王と予言の王女〜

白崎りか
ファンタジー
「悪女オリヴィア! 白い結婚を神官が証明した。婚姻は無効だ! 私は愛するフローラを王妃にする!」  即位したばかりの国王が、宣言した。  真実の愛で結ばれた王とその恋人は、永遠の愛を誓いあう。  だが、そこには大きな秘密があった。  王に命じられた神官は、白い結婚を偽証していた。  この時、悪女オリヴィアは娘を身ごもっていたのだ。  そして、光の精霊王の契約者となる予言の王女を産むことになる。 第一部 貴族学園編  私の名前はレティシア。 政略結婚した王と元王妃の間にできた娘なのだけど、私の存在は、生まれる前に消された。  だから、いとこの双子の姉ってことになってる。  この世界の貴族は、5歳になったら貴族学園に通わないといけない。私と弟は、そこで、契約獣を得るためのハードな訓練をしている。  私の異母弟にも会った。彼は私に、「目玉をよこせ」なんて言う、わがままな王子だった。 第二部 魔法学校編  失ってしまったかけがえのない人。  復讐のために精霊王と契約する。  魔法学校で再会した貴族学園時代の同級生。  毒薬を送った犯人を捜すために、パーティに出席する。  修行を続け、勇者の遺産を手にいれる。 前半は、ほのぼのゆっくり進みます。 後半は、どろどろさくさくです。 小説家になろう様にも投稿してます。

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

まさか転生? 

花菱
ファンタジー
気付いたら異世界?  しかも身体が? 一体どうなってるの… あれ?でも…… 滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。 初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……

令嬢に転生してよかった!〜婚約者を取られても強く生きます。〜

三月べに
ファンタジー
 令嬢に転生してよかった〜!!!  素朴な令嬢に婚約者である王子を取られたショックで学園を飛び出したが、前世の記憶を思い出す。  少女漫画や小説大好き人間だった前世。  転生先は、魔法溢れるファンタジーな世界だった。リディーは十分すぎるほど愛されて育ったことに喜ぶも、婚約破棄の事実を知った家族の反応と、貴族内の自分の立場の危うさを恐れる。  そして家出を決意。そのまま旅をしながら、冒険者になるリディーだったのだが? 【連載再開しました! 二章 冒険編。】

処理中です...