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1章 幼少期編 I
37.地図でお勉強
しおりを挟む今日の授業は、大海を中央に配置した世界地図を見せてもらった。
【東大陸・西大陸・南大陸・北大陸・小さい島々】
「ティストーム王国は、西大陸のここです」
「長いですねぇ」
無花果のような形の西大陸───ミョーンと伸びているヘタの部分がティストームだ。長すぎるから茎かな? とにかく凄く長い半島国家なのだ。
続いて、ティストーム王国の地図。
「西大陸にくっついているように見える(ふたりして笑う)部分が北で、大海に伸びている先が南です。北から南まで早馬を休まず走らせると、3ヶ月ほどかかると計算されています。気候は南は暖かで、北は寒いと覚えておくと良いですよ。私たちの住む王都は、やや北寄りのここ。夏は過ごしやすい反面、冬は王都でも雪が降ることがあります」
「しゃこうのために、きぞくが王都にあつまるのは、なぜ冬なのですか?」
「社交期は夏にもありますよ。暑い時期と寒い時期は、自分の領地を視察する旅には出ません。馬車の旅が辛いからです。国王陛下の外国と領地への出発も春なのは、そういう理由があるのです。そのかわりに、夏と冬は王都に集まって情報交換……他の領地の様子を尋ねたり、仕事の話をしたりします」
「北のさむさは、きびしいのでしょうか?」
飢饉が気になる。
「こちらの北大陸の冬はとても厳しいと聞きますね。でも西大陸では一番北の国でも雪で何か月も閉ざされることはありません。ティストームの北側の国境……隣の国とくっついている領地は山脈があるので雪は多く降るのですが、冬の間のほんの1ヶ月半ほどです。山脈があるとなぜ雪が降るのかと言えば、山がとても高いので水分を含んだ重い雪雲が山を越えられないからです」
……ふむ。
「北では、どんなやさいが育ちますか?」
ワーナー先生が『おや』という顔をしてからクスリと笑った。
「北方を気にすると思ったら、ジャガが気になっていたのですね。こればかりは試してみないとわかりませんが、食料危機は心配しすぎですよ。北は狩猟の地です。王女殿下が食べているお肉も北で狩られたものです。売るほどあるのですから大丈夫」
そうか、お肉があるのか。ホッ。
お父さまの言う通り、重いシナリオが創作だといいな。
「南の話もしましょうか。冬の寒さはさほどではないかわりに、夏の陽に長時間さらされると肌が火ぶくれを起こすほど酷く暑いそうですよ。まぁ、そんな気候のおかげで王女殿下が気にされている香辛料などが採れるわけですが……」
香辛料がティストームで採れるの!?
前世の歴史イメージで香辛料は高価だと思い込んでいたけど、そういえば、あれはほとんどが輸送費だった。
そうか、自分の国で採れるのか。
「もしかして、ティストームのこうしんりょうは、西たいりくでは人気があるのですか?」
「北大陸にもです。よく気が付きましたね」
褒められちゃった。えへへ~。
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