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1章 幼少期編 I

32.作り置きバンバン

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これから作るのは「飯テロストック」です。

新料理が求められている今日この頃。
そのせいでチギラ料理人は毎日忙しく、私の野望がちっとも進まないので、ガンガン作っていこうと思います。

「その野望とやらは、そんなに時間がかかるものなのか?」

アルベール兄さまが離宮に来る時は、商会の書類をやっつける日に決めているようで、食堂のテーブルはいつも紙まみれだ。
私のお絵かき用の藁紙も散らばっているけれど。

「しっぱいしたら、じかんがかかります。とうにゅうマヨネーズは、しっぱいしませんでしたけど……あ、あじみはしましたか?」

「卵のマヨネーズの方が好みだが豆乳のも旨かったぞ。搾りかす盛りも食べ応えがあってなかなかよかった。しかし豆乳そのものは旨くないな……で? 野望の他に調味料も作るのではなかったか?」

繊細な王宮料理を食べ慣れている王子さまは、実はファストフードにご執心だ。

ふふふ、王子の期待にお答えしましょうぞ。

そう、私は料理好きではあったが簡単料理しか作れなかったのだ。
おまけにグルメ舌の持ち主でもなかった。

市販化されていた調味料とソースが大好きだった。
混ぜるだけのナントカの素を愛していた。

あの味の再現は私の望むところでもあるのだーっ! Hahaha~ !

ミエムトマトで作るケチャップという調味料がはやく食べたいです。マヨネーズとおなじで、なににつけても、おいしいのです。ほかにも、どんどんつくっていきますよ」

「それは楽しみだ」

図鑑でトマトを見つけたら、ナスもピーマンも唐辛子も見つけた。そして届いた。
野菜カムカム。果物カムカム。香辛料カムカム。棚にもいっぱいあるけど、もっとカモン。

私も楽しみにしています。



☆…☆…☆…☆…☆



まずは野望のひとつ、パンをふっくらさせるための『天然酵母』作りだ。

干しレベレーズンタイプ
柑橘タイプ
ジャガタイプ……と3種類作ります。

ガラス瓶や調理器具を煮沸消毒は基本中の基本。
発酵温度は先日シブメンに設定してもらっておいた25~28度。

それぞれぬるま湯に入れ、
揺すったり、蓋を開けたりして泡立つのを待ち、瓶の底に沈殿物が出来たら完成だ。

………………………………………………
天然酵母の作り方1
干しレベレーズンと水を瓶に入れ、保温具で保存する。
②毎日1~2回蓋を開けて揺する。
③3日目ぐらい:レーズンが浮き、泡が立ち始める。
④5日目ぐらい:泡の勢いが増してくる。レーズンが浮き上がったら、冷蔵庫に移して1日置きます。
⑤瓶の底に白い沈殿物ができたら完成です。
※果物の場合も同じ。
………………………………………………
………………………………………………
天然酵母の作り方2
①柑橘の皮をむき、2cm角に切る。
②蜂蜜とぬるま湯を入れて振る。
③あとは”作り方1”と同じだけど、柑橘はあまり発泡しません。
………………………………………………
………………………………………………
天然酵母の作り方3
①ジャガを茹でて潰す。
②冷ましたジャガ+全粒粉(小麦版玄米)+砂糖を混ぜる。
③そこに冷ましたジャガの茹で汁を入れて混ぜる。
④扱いは他と一緒。3日ほどで泡立ち、完成です。
………………………………………………

砂糖やバターが多いパンやお菓子に使う酵母は、最初の過程で砂糖を20%ほど加えます。
そうしないと膨らまないのです。

※臭くなったり我慢できないほど液が不味かったら明らかな失敗。潔く捨てましょう。

前世で挑戦したのはレーズンだけだ。失敗して二度と手を出さなかった嫌な思い出がある。

どれが成功するか、美味しくできるか、いろんな果物と穀物で試します! チギラ料理人が!



◇…◇…◇



取り出したるは大豆の搾りかす。次、行きますよ。


………………………………………………………
おからのパン粉もどきの作り方
平鍋フライパンで炒り、水気が飛んでポロポロになったら完成です。
………………………………………………………
……これはランド職人長にやってもらった。


チギラ料理人には軒下で大量の玉ねぎと格闘してもらっています。
箸を口にくわえると唾液が出やすくなって涙が出にくくなる(涙の分泌より唾液が優先される)ので、フォークを渡して勧めてみた。
私も前世では実践していたけど完璧なわけじゃない。
案の定『効果ありました』と言っているチギラ料理人の頬には、涙の跡が凄かった。ごめん、笑っちゃった。

玉ねぎの次は人参です。タタタタン。軽快な音がします。

玉ねぎと人参のみじん切りをたくさん炒めて冷ましておく。
以降これを〈具1〉とします。


…………………………………………………
ハンバーグ&ミートボールのタネの作り方
卵+パン粉+豆乳+ひき肉+塩胡椒+〈具1〉を混ぜて完成。
…………………………………………………
……お肉のミンチもチギラ料理人には頑張ってもらった。魔導部からミルが届くまで頑張りましょう。

「このタネをかためて、ひらなべでやくだけも、おいしいですが、しぼりかすをまぜてもおいしいです。このくらい、いれてください」


サクサク行きます。

…………………………………………………
ポテトコロッケのタネの作り方
茹でて潰した黄ジャガ+〈具1〉+塩少々を混ぜて完成。
…………………………………………………

「このきジャガをかためて、あぶらでりょうりするだけでも、おいしいですが、しぼりかすをまぜてもおいしいです。このくらい、いれてください」


次は今日食べるものです。

…………………………………………………
おからのツナマヨもどきの作り方
すりおろした人参+スライス玉ねぎ+おから+マヨネーズ+油+塩少々を混ぜて完成。
…………………………………………………


料理の頼もしい味方『片栗粉』を作ります。

…………………………………………………
ジャガイモから作る片栗粉の作り方
①ジャガイモをすりおろす。
②すりおろしたジャガイモを布で包み、鉢の水で10分ほど揉み濾す。
③水の下に沈殿した白い粉を残し、水を捨てる。
④そこに新たに水を入れて混ぜる。
⑤再び、水の下に沈殿した白い粉を残し、水を捨てる。
⑥もう一回繰り返し、残った白い粉を乾かしたら、片栗粉の完成。
…………………………………………………
……ランド職人長に作ってもらいました。すりおろし器もね。

残ったジャガイモの搾りかすの使い道は考えてなかったので、チギラ料理人にお任せだ。混ぜ込むしかないと思うけど。


次はファストフードの定番です。

…………………………………………………
冷凍用フライドポテトの仕込み方
①黄ジャガの皮を剥いて短冊切りにする。
②沸騰した湯にジャガを入れ、再沸騰させて火からおろす。
③5分放置したあと、網器で湯をしっかり切る。
④容器にばらして入れて冷凍する。
…………………………………………………
……こちらもランド職人長の手によるもの。

これでいつでもフライドポテトが食べられますね。


◇…◇…◇


休憩がてらの昼食です。

今日は大人数が来るとわかっていたので、アルベール兄さまは王宮の厨房に配達を頼んでいた。

配達人は料理人Aの部下だという13歳ぐらいの男の子で、背負い籠からはみ出るほどの凄い量を担いできていた。重そうだった。

面白くないのが、食事の内容は全員同じなのに食べる場所は別だということ。

私とアルベール兄さまは食堂で。
商会の皆は庭で、ピクニックみたいで楽しそうだ。仲間に入りたい。

「りきゅうでのおしゃべりは、いつからしてもいいですか? わたくしは、もう4さいになりましたよ?」

ふんっ、と鼻で笑われてしまった。

「そもそも、幼い王女が平民と話すこと自体が無いことだ。王族の流儀になじみなさい」

前世の習慣を持ち込まないようにと注意されちゃった。
王子さまは平民と話してもいいのか……と聞くのは、きっと「ああ言えばこう言う」のカテゴリーに入る。言わぬが吉だ。


あ~、でも、そうだった。
時々忘れてしまうのだけど、私はお姫さまなのでした。


お姫さまの自覚~、どうしたら身につく~、王女の威厳~♪


お腹いっぱいになったら眠くなってきた。

ウトウトしている私に気づいたアルベール兄さまは、私を抱き上げて二階の……すやぁ。

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