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第4章
178.休暇の終わりと滑稽な彼女たち
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階段を登りきると、外の明るさに目を凝らした。
降っているときはどこまであるのだろうと思うほど時間が掛かっていたように記憶しているが、戻るときはそこまで時間が掛からなかった。
息も切れていない。
もしかして、階段にも仕掛けがあるのだろうか。
振り返るが、相変わらず暗闇だけしか見えずため息を吐いた。
まだ日は高いが、相当時間が経っているだろう。
少し話をしようと抜けてきただけなのに、これではさすがに少し騒ぎになっているかもしれない。
急いでその場を後にする。
少し距離が出来たところで振り返ってみたが、建物はそこにいつまでも存在していた。
もう、見えなくなることはないのかもしれない。
元来た場所、応接室に早足で戻りながら私は考えていた。
今の私の状況が良くないことはわかっている。
あの旅行でヴァリタスにバレてしまった事はやはり取り返しのつかないものだ。
それならば、早急に事を進めなければならない。
休み明けまでは後約二週間ほどしか残っていない。
それまでに、どうにかしてヴェリタスと縁を切る算段を用意しなければならないのだ。
時間がない。
もしかしたら、手段を選んでいる場合ではないのかもしれない。
それも覚悟しつつ、私はこの休暇が明けたときに実行すべき計画を準備した。
今度は必ず、私の計画通りに事を運び、彼との婚約を破棄させる。
もしできなかったら。
きっと私は幸せを選ぶこともしなくなるだろう。
そのとききっと私は、自分を――――。
応接室に戻る途中、せわしなく動いていた使用人に捕まった。
どうやら私を探していたらしい。
まぁ、当然だ。
いくら客人とはいえ、ここは宮殿。
勝手にいなくなられては、大変なことだろう。
もし、テロやなんかを起こされては大変だ。
とはいえ、私は公爵令嬢であり第2王子の婚約者である身の上。
怒られることはないのだが。
これでは私を案内してくれた使用人が責められてしまう。
そのため、その使用人と上司を呼び私が1人で宮殿を見て回りたいとわがままを言ってしまったと弁解した。
……とかなんとかしていたら、すっかり外は夕暮れになってしまった。
いけない。
これではお父様に怒られてしまう。
最悪、夏休み中はあの屋敷から出られなくなるだろう。
慌てて馬車にのり、帰路に急ぐも家に着くころには手遅れだと気が付いた。
すでに日が沈んでいたからだ。
はぁ、と深いため息が出る。
ああ、今夜は相当お父様に怒られるだろうな。
シルビアがいるから夕食の際に何かを言ってくることはないだろうけど。
お兄様はまた勉学に励むとかいって部屋に引き籠っているのだろうし。
せめてミリアと話が出来れば気が楽になるのだけれど。
帰ってきたあの日から、どことなく気まずくて私から声を掛けることがあまりなくなってしまった。
ミリアはあまり気にしていないようで、普通にしているのだが私はそうもいかなくて。
馬車を降り、屋敷を見上げる。
やっぱり、私にとってこの家は大きな檻のような場所だ。
***
夏休みがやっと空けた。
結局あの後お父様の怒りは激しく、2週間私は屋敷に閉じ込められた。
しかし、おかげで良い計画が練れたから、まぁ良しとしよう。
とはいえ、こうなんども問題が起きると本格的に夏が嫌いになりそうね。
原因が自分だから自業自得だけど。
久しぶりの外に、気分もよく馬車から降りると舞い上がりそうな気分になる。
やっぱり外は良いわね。
屋敷の敷地内であれば外に出るのは自由であったとはいえ、見慣れた場所は退屈だった。
その鬱憤からか、今日はいつもより2時間以上は早く起きてしまった。
そうなれば、支度もそれに応じて早く終わってしまうわけで。
折角だからと、登校まで早くしてしまったのはさすがにやり過ぎたかもしれない。
いつもだったらそこそこ人が歩いている正門前は、人っ子一人いない。
そしてさっきから、私をじっとりとした眼差しを向けている人物がいる。
後ろにいても、彼女の鋭い視線を感じ背中がチクチクする。
そんなに早く来るのが嫌なら、屋敷に残っても良かったのに。
と、口には出さずにいるともう靴箱に着いてしまった。
こちらも外と同じく、ガランとしていて人の気配を感じない。
この状況だったら、おそらく教室にも誰もいないかもね。
はぁ、ミリア怒るかしら。
ミリアと私は靴箱の場所も異なるため、屋内に入る前に分かれてしまう。
メイド専用の待機所がそもそも校舎から離れた場所にあるためだ。
どうやら生徒の自主性を育てるために、授業中は使用人とは会わないというルールがあるのだが。
自主性を育てたいのなら、そもそも使用人を連れてくること自体禁止させればいいのに。
なんだかよくわからないルールよね。
おそらく、身辺警護か何かの理由があってそうしているのだろうけど。
さてと、私の靴箱はっと。
教室ごとに分けられた靴箱へと向かう。
1年生だから、入口から離れた奥の方にあるのよね。
こういう、貴族階級に関係なく年功序列がちゃんとしているのは良いことかもしれない。
なんて呑気に思いながら靴箱へ向かうと。
「えっ」
そこには信じられない光景があった。
とある靴箱に群がる3人の令嬢がいたのだ。
まるで幼児が悪戯をするかのように、とても滑稽な姿だった。
降っているときはどこまであるのだろうと思うほど時間が掛かっていたように記憶しているが、戻るときはそこまで時間が掛からなかった。
息も切れていない。
もしかして、階段にも仕掛けがあるのだろうか。
振り返るが、相変わらず暗闇だけしか見えずため息を吐いた。
まだ日は高いが、相当時間が経っているだろう。
少し話をしようと抜けてきただけなのに、これではさすがに少し騒ぎになっているかもしれない。
急いでその場を後にする。
少し距離が出来たところで振り返ってみたが、建物はそこにいつまでも存在していた。
もう、見えなくなることはないのかもしれない。
元来た場所、応接室に早足で戻りながら私は考えていた。
今の私の状況が良くないことはわかっている。
あの旅行でヴァリタスにバレてしまった事はやはり取り返しのつかないものだ。
それならば、早急に事を進めなければならない。
休み明けまでは後約二週間ほどしか残っていない。
それまでに、どうにかしてヴェリタスと縁を切る算段を用意しなければならないのだ。
時間がない。
もしかしたら、手段を選んでいる場合ではないのかもしれない。
それも覚悟しつつ、私はこの休暇が明けたときに実行すべき計画を準備した。
今度は必ず、私の計画通りに事を運び、彼との婚約を破棄させる。
もしできなかったら。
きっと私は幸せを選ぶこともしなくなるだろう。
そのとききっと私は、自分を――――。
応接室に戻る途中、せわしなく動いていた使用人に捕まった。
どうやら私を探していたらしい。
まぁ、当然だ。
いくら客人とはいえ、ここは宮殿。
勝手にいなくなられては、大変なことだろう。
もし、テロやなんかを起こされては大変だ。
とはいえ、私は公爵令嬢であり第2王子の婚約者である身の上。
怒られることはないのだが。
これでは私を案内してくれた使用人が責められてしまう。
そのため、その使用人と上司を呼び私が1人で宮殿を見て回りたいとわがままを言ってしまったと弁解した。
……とかなんとかしていたら、すっかり外は夕暮れになってしまった。
いけない。
これではお父様に怒られてしまう。
最悪、夏休み中はあの屋敷から出られなくなるだろう。
慌てて馬車にのり、帰路に急ぐも家に着くころには手遅れだと気が付いた。
すでに日が沈んでいたからだ。
はぁ、と深いため息が出る。
ああ、今夜は相当お父様に怒られるだろうな。
シルビアがいるから夕食の際に何かを言ってくることはないだろうけど。
お兄様はまた勉学に励むとかいって部屋に引き籠っているのだろうし。
せめてミリアと話が出来れば気が楽になるのだけれど。
帰ってきたあの日から、どことなく気まずくて私から声を掛けることがあまりなくなってしまった。
ミリアはあまり気にしていないようで、普通にしているのだが私はそうもいかなくて。
馬車を降り、屋敷を見上げる。
やっぱり、私にとってこの家は大きな檻のような場所だ。
***
夏休みがやっと空けた。
結局あの後お父様の怒りは激しく、2週間私は屋敷に閉じ込められた。
しかし、おかげで良い計画が練れたから、まぁ良しとしよう。
とはいえ、こうなんども問題が起きると本格的に夏が嫌いになりそうね。
原因が自分だから自業自得だけど。
久しぶりの外に、気分もよく馬車から降りると舞い上がりそうな気分になる。
やっぱり外は良いわね。
屋敷の敷地内であれば外に出るのは自由であったとはいえ、見慣れた場所は退屈だった。
その鬱憤からか、今日はいつもより2時間以上は早く起きてしまった。
そうなれば、支度もそれに応じて早く終わってしまうわけで。
折角だからと、登校まで早くしてしまったのはさすがにやり過ぎたかもしれない。
いつもだったらそこそこ人が歩いている正門前は、人っ子一人いない。
そしてさっきから、私をじっとりとした眼差しを向けている人物がいる。
後ろにいても、彼女の鋭い視線を感じ背中がチクチクする。
そんなに早く来るのが嫌なら、屋敷に残っても良かったのに。
と、口には出さずにいるともう靴箱に着いてしまった。
こちらも外と同じく、ガランとしていて人の気配を感じない。
この状況だったら、おそらく教室にも誰もいないかもね。
はぁ、ミリア怒るかしら。
ミリアと私は靴箱の場所も異なるため、屋内に入る前に分かれてしまう。
メイド専用の待機所がそもそも校舎から離れた場所にあるためだ。
どうやら生徒の自主性を育てるために、授業中は使用人とは会わないというルールがあるのだが。
自主性を育てたいのなら、そもそも使用人を連れてくること自体禁止させればいいのに。
なんだかよくわからないルールよね。
おそらく、身辺警護か何かの理由があってそうしているのだろうけど。
さてと、私の靴箱はっと。
教室ごとに分けられた靴箱へと向かう。
1年生だから、入口から離れた奥の方にあるのよね。
こういう、貴族階級に関係なく年功序列がちゃんとしているのは良いことかもしれない。
なんて呑気に思いながら靴箱へ向かうと。
「えっ」
そこには信じられない光景があった。
とある靴箱に群がる3人の令嬢がいたのだ。
まるで幼児が悪戯をするかのように、とても滑稽な姿だった。
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