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教授と僕。
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僕は彼を教授と呼ぶ、彼は僕を「君」と呼ぶ。
出会ったのはほんの一週間前のことだった。大学の夏休みに二週間だけ郷土文化を調べるためにここに来た。ある朝散策をしていたら廃屋にも見える窓辺から教授が話しかけてきたのが出会いであった。
教授と名乗る彼とそこで僕は様々な話をした。専門的なことや世間話、勿論この地の郷土文化について新たに気付かされ学ぶことが出来て有意義な時間だった。さて、僕は明後日帰らなくてはならない。明日は準備があるから教授のもとを訪れることはできない、実質今日が教授と会える最後の日だった。
「そうなのかい?寂しくなるねぇ。」
この老人の戯言に付き合わせて悪かったなぁ。と、うっすら目元に皺を浮かべて笑った。教授は多分三十代後半から四十代前半。老人と自称するにはまだ早すぎる。興味があることには目を輝かせ幼子のように身を乗り出して饒舌になり語った。
「それじゃあ、最後にこいの話をしようではないか。」
「こい?」
恋?鯉?僕が疑問符を頭にうかべていると教授は笑って続けた。
「あぁ....魚の鯉ではないよ。恋愛感情というものだね。」
「恋愛感情、ですか。」
僕には到底縁のない言葉だった。可愛い、美人と評判の女の子にも大して心を動かされることなく幼い頃から好奇心の赴くままに勉強に明け暮れていた。
「そう。人を好きになって会いたい、傍にいたい。相手の一挙一動で一喜一憂して些細なことで不安になり、些細なことで歓喜する。心をあわよくば肉体までも一体でありたい。」
恋愛に肉欲が必ず付随するものでは無いけどね。とも付け足した。
「残念ながら僕はその感情をあまり理解出来ていません。恥ずかしながら僕は、今まで恋というものをしたことがないので。」
少し顔を俯かせながら僕は少々の気恥しさを感じながら告白する。
「何らおかしなことではないよ。運命ではなかった、という事じゃないか?かくいう私もこの年になるまで恋というものをしてこなった身でね。」
くすくす笑う薄い唇が言葉を紡いだ。
そうだったのか、教授は未婚なのだろうか。いや、恋をせずとも婚姻関係を結ぶことは可能だ。
呼吸が苦しくなり心臓が嫌な音を立てて鳴り、頭が一瞬クラっとした。病気にでもなってしまったのだろうか。あとで血圧と心拍数を診なくては。
「.....運命という不確かな要素を出してくるとは教授らしくありませんね。」
「今日は雑談だからね。最後の日ぐらい緩やかな話をしようじゃないか。私は恋をしたとこもなければ誰かと親密な仲になったこともない、婚姻関係を結んだことも一度もない。」
教授が未婚であることに安心した。...安心した?何故?
「そうだね。つい最近のことなんだけど、話をするうちにその人にどうも惚れて恋をしてしまったようなんだ。その人の話す時の笑顔や話し方、変わる表情の一つ一つが愛おしくて仕方なくて。その人の全身丸ごと私の手で溶かしたいって思ってしまったんだよ。年甲斐もなくね。」
官能的な表情と言葉が出る度に心臓ではなく全身がギシギシと音を立てて痛み出した。これ以上立っていられない、残念だが教授と話すのはこれで切り上げてしまおう。
「教授、すみま」
すみません、という言葉に被り気味に教授は続ける。
そんな話もう聞きたくない!!
「その人とはつい一週間前に出会ったばかりなんだ。早朝に歩いている姿を見つけてね。話をしないかと誘ったんだ。そこらの院生よりも博識でなのに知らないことにとことん貪欲で、私の話を楽しそうに聞いてくれた。その人と話すのが毎日楽しみで私の生きる理由になった。」
「私はね、長年の夢が半ばで潰えて親の意向で渋々この教授職に就いたんだ。それでも最初は頑張ろうと思った。けど次第に活力が喪われて、生きる希望さえも見いだせなくなってしまってね。療養にここを訪れた時君に出会って生きることが出来た。」
「え。それは」
とくん。嫌な高鳴りが一変。蕩けるような高鳴り。
つまりはね、と教授は乾いた唇を舐め喉を鳴らした。
「君に恋愛感情を抱いている。」
真っ直ぐに見つめられてそう告げられる。
顔が徐々に暑くなる。全身が心臓になってしまったみたいだ!わなわな震える口を制御できない!
教授の顔が曇っていく。早く何か言わなくちゃ。
「....あ、すまないね....こんなおじさんに薄気味悪いこと言われて君も困るよねあはは」
「僕も!!教授が好きです!!」
思考より先に口から出る言葉に僕が驚いた。
「ほ、本当か?無理しなくていいんだ。」
そうかこれは恋だ!恋だ!
初めて知った感情が歓喜に震え、とても心地よくて暖かい事を知る。
「無理なんかしてません!僕も教授が好きなんです。恋をしてるんです。あなたの行動に言動に一喜一憂してるんです。貴方に見つめられて微笑んでくれただけで心が浮き足立って仕方なくて蜜のように甘やかな気持ちになるんです。」
熱を帯びた言葉をひたすらひたすら僕は紡ぐ。気付けば目の前に教授が立っていた。普段座っているから分かりにくいが僕より遥かに背が高く175センチはある僕より10センチ以上高いのではないか。
「き、教授...?」
無表情で上から迫ってくる教授に目を瞑ると唇に柔らかい感触が。キスだ。両手で掴むように顔を支えられる。
「ん、んっ...。」
幾度となく口付けを交し熱を分け合う。ぬるりと舌が唇の間を侵食し中に入ってくる。教授の口の中に僕の舌が招き入れられ唾液と共に吸われると頭のてっぺんから腰に電流のような快感が走った。僕は教授の体に縋りながら必死に応えた。
どのくらい経っただろうか。五分?十分?それより短かったかもしれないが人生初の濃厚なキスをされた僕はもうヘロヘロになっていた。
「....それはつまり私とお付き合いしてくれるということで良いのか?」
「はい.....。」
腫れぼったい唇で了承すればまた上を向かされる。目を瞑るが一向にあの柔らかい感触来ない。うっすら目を開けるとうっとりした表情の教授が僕を見ていた。キスされると思いきや違ったらしくとても恥ずかし。
「私の恋愛感情は肉欲を伴う、つまり肉体まで一体になりたい。それでもいいのか?君の中に私が入るんだよ?耐えられるかい?」
教授が僕の中に。考えただけで下腹に熱がとぐろを巻く。
「とても、嬉しい。」
この男のものになりたい。滾るもの全てを僕の胎に。
「貴方のこれを僕のナカにいれて。」
するりと撫でると先程までの優しいキスが嘘のように貪られ、ソファが濡れるほど激しく求められた。
出会ったのはほんの一週間前のことだった。大学の夏休みに二週間だけ郷土文化を調べるためにここに来た。ある朝散策をしていたら廃屋にも見える窓辺から教授が話しかけてきたのが出会いであった。
教授と名乗る彼とそこで僕は様々な話をした。専門的なことや世間話、勿論この地の郷土文化について新たに気付かされ学ぶことが出来て有意義な時間だった。さて、僕は明後日帰らなくてはならない。明日は準備があるから教授のもとを訪れることはできない、実質今日が教授と会える最後の日だった。
「そうなのかい?寂しくなるねぇ。」
この老人の戯言に付き合わせて悪かったなぁ。と、うっすら目元に皺を浮かべて笑った。教授は多分三十代後半から四十代前半。老人と自称するにはまだ早すぎる。興味があることには目を輝かせ幼子のように身を乗り出して饒舌になり語った。
「それじゃあ、最後にこいの話をしようではないか。」
「こい?」
恋?鯉?僕が疑問符を頭にうかべていると教授は笑って続けた。
「あぁ....魚の鯉ではないよ。恋愛感情というものだね。」
「恋愛感情、ですか。」
僕には到底縁のない言葉だった。可愛い、美人と評判の女の子にも大して心を動かされることなく幼い頃から好奇心の赴くままに勉強に明け暮れていた。
「そう。人を好きになって会いたい、傍にいたい。相手の一挙一動で一喜一憂して些細なことで不安になり、些細なことで歓喜する。心をあわよくば肉体までも一体でありたい。」
恋愛に肉欲が必ず付随するものでは無いけどね。とも付け足した。
「残念ながら僕はその感情をあまり理解出来ていません。恥ずかしながら僕は、今まで恋というものをしたことがないので。」
少し顔を俯かせながら僕は少々の気恥しさを感じながら告白する。
「何らおかしなことではないよ。運命ではなかった、という事じゃないか?かくいう私もこの年になるまで恋というものをしてこなった身でね。」
くすくす笑う薄い唇が言葉を紡いだ。
そうだったのか、教授は未婚なのだろうか。いや、恋をせずとも婚姻関係を結ぶことは可能だ。
呼吸が苦しくなり心臓が嫌な音を立てて鳴り、頭が一瞬クラっとした。病気にでもなってしまったのだろうか。あとで血圧と心拍数を診なくては。
「.....運命という不確かな要素を出してくるとは教授らしくありませんね。」
「今日は雑談だからね。最後の日ぐらい緩やかな話をしようじゃないか。私は恋をしたとこもなければ誰かと親密な仲になったこともない、婚姻関係を結んだことも一度もない。」
教授が未婚であることに安心した。...安心した?何故?
「そうだね。つい最近のことなんだけど、話をするうちにその人にどうも惚れて恋をしてしまったようなんだ。その人の話す時の笑顔や話し方、変わる表情の一つ一つが愛おしくて仕方なくて。その人の全身丸ごと私の手で溶かしたいって思ってしまったんだよ。年甲斐もなくね。」
官能的な表情と言葉が出る度に心臓ではなく全身がギシギシと音を立てて痛み出した。これ以上立っていられない、残念だが教授と話すのはこれで切り上げてしまおう。
「教授、すみま」
すみません、という言葉に被り気味に教授は続ける。
そんな話もう聞きたくない!!
「その人とはつい一週間前に出会ったばかりなんだ。早朝に歩いている姿を見つけてね。話をしないかと誘ったんだ。そこらの院生よりも博識でなのに知らないことにとことん貪欲で、私の話を楽しそうに聞いてくれた。その人と話すのが毎日楽しみで私の生きる理由になった。」
「私はね、長年の夢が半ばで潰えて親の意向で渋々この教授職に就いたんだ。それでも最初は頑張ろうと思った。けど次第に活力が喪われて、生きる希望さえも見いだせなくなってしまってね。療養にここを訪れた時君に出会って生きることが出来た。」
「え。それは」
とくん。嫌な高鳴りが一変。蕩けるような高鳴り。
つまりはね、と教授は乾いた唇を舐め喉を鳴らした。
「君に恋愛感情を抱いている。」
真っ直ぐに見つめられてそう告げられる。
顔が徐々に暑くなる。全身が心臓になってしまったみたいだ!わなわな震える口を制御できない!
教授の顔が曇っていく。早く何か言わなくちゃ。
「....あ、すまないね....こんなおじさんに薄気味悪いこと言われて君も困るよねあはは」
「僕も!!教授が好きです!!」
思考より先に口から出る言葉に僕が驚いた。
「ほ、本当か?無理しなくていいんだ。」
そうかこれは恋だ!恋だ!
初めて知った感情が歓喜に震え、とても心地よくて暖かい事を知る。
「無理なんかしてません!僕も教授が好きなんです。恋をしてるんです。あなたの行動に言動に一喜一憂してるんです。貴方に見つめられて微笑んでくれただけで心が浮き足立って仕方なくて蜜のように甘やかな気持ちになるんです。」
熱を帯びた言葉をひたすらひたすら僕は紡ぐ。気付けば目の前に教授が立っていた。普段座っているから分かりにくいが僕より遥かに背が高く175センチはある僕より10センチ以上高いのではないか。
「き、教授...?」
無表情で上から迫ってくる教授に目を瞑ると唇に柔らかい感触が。キスだ。両手で掴むように顔を支えられる。
「ん、んっ...。」
幾度となく口付けを交し熱を分け合う。ぬるりと舌が唇の間を侵食し中に入ってくる。教授の口の中に僕の舌が招き入れられ唾液と共に吸われると頭のてっぺんから腰に電流のような快感が走った。僕は教授の体に縋りながら必死に応えた。
どのくらい経っただろうか。五分?十分?それより短かったかもしれないが人生初の濃厚なキスをされた僕はもうヘロヘロになっていた。
「....それはつまり私とお付き合いしてくれるということで良いのか?」
「はい.....。」
腫れぼったい唇で了承すればまた上を向かされる。目を瞑るが一向にあの柔らかい感触来ない。うっすら目を開けるとうっとりした表情の教授が僕を見ていた。キスされると思いきや違ったらしくとても恥ずかし。
「私の恋愛感情は肉欲を伴う、つまり肉体まで一体になりたい。それでもいいのか?君の中に私が入るんだよ?耐えられるかい?」
教授が僕の中に。考えただけで下腹に熱がとぐろを巻く。
「とても、嬉しい。」
この男のものになりたい。滾るもの全てを僕の胎に。
「貴方のこれを僕のナカにいれて。」
するりと撫でると先程までの優しいキスが嘘のように貪られ、ソファが濡れるほど激しく求められた。
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