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第5杯 ③

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 返事をしてから、あたしはカップを自分の方に引き取る。普通のコーヒーかと思って見ると、生クリームが乗ったコーヒー。見た目からウィンナーコーヒーだとわかり、 得意げにあたしは大家さんに声を掛ける。 

「これなら、飲んだことあります、ウィンナーコーヒーですよね」
「ああ、そうだね。オーストリア、ウイーン生まれのコーヒーでね――――」

 相槌をうってくれた大家さんは、続けて、詳しいお話をしてくれる。

「今はウインナーコーヒーとも呼ばれているけど、昔はアイン・シュペンナーという名称だったんだよ。
 その名前は【1頭だて馬車の御者】の意味をもっていてね、
 この言葉通り、客を待つ御者が親しんで飲んでいた飲み物と言われているんだよ」
「ちゃんとコーヒーの名前にも意味があるなんて、奥が深いんですね」
「ああ、そうなんだよ。待つって所は今の董子ちゃんと同じだね」

 クスっと笑う大家さん。

「――――ですね」
「本当にふたりとも来られないようだね」
「もしかしたら、藤井くんはバイト長引いているのかもしれません」
「そうかい、洋輔くんは何か用事でもあるのかい?」
「いえ、そんな事は言ってなかったから……洋輔は~寝坊かな」
「それじゃ、おこしにでも行こうかね」
「あっ携帯教えてもらったので、電話してみます」
「ふむ――――それでダメなら、おこしに行ってみようかね?」

 大家さんはどうもあたしに気を使ってくれてるみたい。
 なぜかと言うと、このハイツは階層によって男女の入居が分けられている為、女性が男性の入居している2階には入られないようになっているからだ。
 電話が通じなかったら、あたしの待ちぼうけがまだまだ続く事が決定だけど。それでもひとり暮らしのあたしにとって、安心できるシステム。
 時には不便だけど――――――――

「その時は、大家さんお願いします」
「それなら、早く電話をかけておあげなさい」
「はい。それじゃ、電話してみます」

 携帯片手にあたしはそう言ってから、Cafe出入口から出る。自動ドアが開くと少し曇った感じの空が、ハイツの出入口のガラスのドアから見えた。
 自動ドアが開かない場所に少し移動するあたし。
 誰の邪魔にもならない場所で、携帯のボタンを押しかけた時、ハイツのドアが開いた。
 そこから入ってきた男性と、あたしは目と目が合うのだった。

 息が荒い男性とあたしは、同時にお互いを指差して声を漏らす。

「あっ」





☆コーヒーレシピ
【1杯分】
コーヒー粉/深煎り12g
生クリーム/半立て30cc(大さじ2杯)
コーヒーシュガー20g(小さじ5杯)
【作り方】
(1)101サイズのドリッパーとサーバーを使用し、コーヒーを120cc抽出します。
(2)温めたコーヒーカップにコーヒーシュガーを たっぷりと入れます。
(3)(2)に(1)のコーヒーを注ぎます。
(4)(3)に半立ての生クリームを浮かべます。
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